プロローグ
急に城内が騒がしくなった。
王太子フランシスは、執務の手を止めた。
「フランシス殿下!現れました!」
「何がだ?」
「聖女様です!数十年ぶりに、聖女様が現れました!」
「聖女?」
この瞬間、大きく事態は動き出した。
聖女が現れたということは、王家の婚姻が定まることを意味する。
この時フランシスはまだ知らなかった。
これが、自身の人生を決定する出来事であるということを。
フランシスは国王に呼び出された。
そこには、国内の重鎮らがそろっている。
「フランシスよ、時が来た。聖女を迎えよ」
フランシスは、一瞬固まった。
「迎える?」
聞き返した先の国王の目は鋭い。
「聖女が現れたという知らせは聞いたな?」
「はい」
「王を継ぐ者が聖女を迎えねばならぬ。意味はわかるな?」
「王を継ぐ者が聖女を……。つまり、私が聖女を?」
「そうだ。伝承の通り、儀式を進めていく。王位継承者が聖女を妻に迎えれば国は安泰だ」
「伝承?」
王家の伝承。
──王を継ぐ者と聖女が結ばれることで加護は発現する。
このことは、代々国王が引き継ぎ守ってきた。
「ま、待ってください。では、ハリエットは?メルヴィル侯爵令嬢は私の婚約者ですよ?」
「それはそうだが、聖女が現れたならば話は別だ。これは王家の責務である。王家が王家である由縁なのでな」
「そ、そんな……」
「お前は王太子だ、フランシス。私には子はお前だけ。つまり、お前しかおらんのだ」
数日後。
王命により、フランシス・エアルドレッド王太子とハリエット・メルヴィル侯爵令嬢の婚約は解消された。
「そんな……。では、フランシス様とは……」
涙をこぼすハリエットを前に、フランシスは何も言えなかった。
幼き頃から婚約していた二人は、こうして別れることになった。
そしてフランシスは、王太子として聖女を迎えることとなる。
一方で神殿では、一人の令嬢の運命が動き出していた。
神官が静かに扉を開けた。
部屋に残されていた一人の令嬢に、深く頭を垂れる。
「アルマ・ヘイリー伯爵令嬢。本日をもって、あなたは聖女と認定されました」
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聖女が現れました。
ここからが、物語の始まりです。




