60 女の子を助けるぜ!
「……こっちから、きこえる」
「アナっちぎゅいっち~! こっちだよ~! 多分!」
「わたしには、何も聞こえない」
「ブロロロロン(オレにも聞こえないぜ)」
デイルタッカーシティにやってきて早々、オレたちは街の細い路地を爆走していた。
チャウンシーが誰かの助ける声を聞いたらしい。
ただ、今のところオレを含めた3人にはなんも聞こえてないから、チャウンシーは相当耳が良いんだろうな。
「……けてっ……たす……けてっ……!」
「(聞こえた! 女の子の声だ!)」
「この先に、誰かいる」
チャウンシーを先頭にしばらく路地裏の細道を進んで行くと、微かながら女の子が助けを呼ぶ声が聞こえてくる。
アナベルたちにも聞こえたようで、そのまま声が聞こえる方に向かって急いで移動する。
「だれか……っ たすけて……! たすけてみゃ~っ!」
「……たすけに、きた」
「はっけ~ん! もう大丈夫だよ~!」
路地を進むたびに声が大きくなっていき、遂に助けを求める声の主を発見した。
その子は路地の突き当りで、大人が屈んでギリギリ入れるくらいの金属製の檻の中に閉じ込められていた。
「って、この子……もしかしてただの人間じゃなくなくなくな~い!?」
「……もふもふ」
「ブロロロロン!(大きな耳と尻尾も生えてるぜ!)」
檻の中に閉じ込められている女の子は、全身が獣のような毛に覆われていて、クルッとした癖毛の中から大きな耳が飛び出ている。
背中側からは服の裾から長い尻尾がぴょこんと顔を出していて、両手にはネコ科動物のような大きな肉球と鋭いツメが付いていた。
「あなた、もしかして獣人?」
「そ、そうだみゃ……はっ! ち、違うみゃ~! みゃ~はフツーのインゲンみゃ~!」
「ブォオン(インゲンは豆だぜ)」
どう見ても普通の人間には見えねえけど……それに、アナベルが言ってた獣人ってのは……?
「獣人だってバレたら、捕まっちゃうみゃ~! だからみゃ~はニンゲン……はっ! い、今のは嘘の独り言みゃ~!」
「……ぜんぶ、きこえた」
「し、しまったみゃ~!」
うーん、この子もしかして……頭がちょっと抜けてるかもしれないぜ。
「だいじょ~ぶ! ボクたちは君を助けにきた味方だよ!」
「それに、わたしたちも人間じゃない」
「ギュイギュイ!(オレなんか無機物だぜ!)」
「みゃ、みゃ~……それなら、よかったみゃ~……」
とりあえず、この金属製の檻をぶっ壊さないとな。
とはいえ、さすがに最強チェーンソーのオレでもこれをぶった切るのは厳しそうだぜ……
「……いま、あける」
「みゃっ?」
ガシッ。ギギ、ギギギ……
「みゃみゃ~っ!? 檻が曲がってるみゃ~!」
「ブォン、ブロロロロン!(チャウンシー、すごい腕力だぜ!)」
どうやって檻を壊そうかと考えていると、チャウンシーがおもむろに金属製の棒を掴んで横に広げだした。
そのままギチギチと檻が歪んでいき、中にいた女の子が出れるくらいの隙間が空いた。
「す、すごいみゃあ……ってか、よく見たらめっちゃでかいみゃ~!」
「……ウチ、チャウンシー」
「ボクはベニーだよ~!」
「こっちの人は顔がツギハギみゃ~!」
「人魔人間だからね~」
女の子を救出することに成功したオレたちは、彼女を捕まえたヤツらが戻ってくる前に路地を離れることにした。
とりあえずアナベルが持っていた服や布で女の子の体を隠し、耳や尻尾が見えないようにする。
「これで、大丈夫」
「あ、ありがとみゃ……あなたは、人間みゃ?」
「わたしは自律式駆動人形・アナベル」
コンコンッ!
「わわっ! 金属ボディみゃ~!」
路地裏から離脱しつつ、女の子に自己紹介をして警戒を緩めてもらう。
よっしゃ! 次はオレの番だな!
「ブロロロロロロン! ギュインギュイン!(オレはチェーンソーのヤイバだぜ! みんなからはギュイギュイって呼ばれてるぜ!)」
「あなたはもしかして……清掃用の魔道具みゃ?」
違うぜ!




