61 狙われる獣人だぜ!
路地裏で檻に入れられていた女の子を助け出したオレたちは、彼女の獣毛や耳、尻尾などを隠すための服を買って着させてから近くの飯屋に入った。
チャウンシーはメタモルフォルムにならなければ背の高い普通の女性って感じだし、ベニーは顔を隠しているからツギハギ肌が目立たない。
オレはエコモードに切り換えてアナベルの胸ポケットにいるので、今のところは怪しまれてない……と、思う。
「助けてくれてありがとみゃ~。みゃ~はサヴァル族のレフティみゃ~」
「サヴァル族……やはり、獣人」
「そうなの~? てっきりボクやチャウンシーみたいなのかと思ったよ~」
「……ウチも」
アナベルの話によると、どうやらこの世界には『獣人』という種類の人がいるらしい。
サヴァル族のレフティと名乗った彼女は、普通にオレたちと同じ言葉を話しているし、たしかに魔物とは違うんだろうな……
まあ、なんかみゃ~みゃ~言ってはいるけどよ。
「サヴァル族の集落は、人間の暮らす土地の近くには無かったはず。レフティは、どうしてデイルタッカーシティに?」
「悪いニンゲンに捕まったみゃ~……」
「それは悪いね! ボクもさっき捕まりそうになったし!」
「……なんで、つかまった?」
「地下オークションで売るためって話してたみゃ~」
「トットットット……(地下オークション……?)」
そういえば、さっきぶち殺した捕獲隊の男たちも言ってたな。
名前的にめちゃめちゃアンダーグラウンドなやつっぽいけど……
「近々、デイルタッカーシティの闇市場で地下オークションが開催されるらしいみゃ。そこで世界中の珍しいモノが出品されて、みゃ~もそこで売られる予定だったっぽいみゃ……」
「……それは、ひどい」
「なんでそんなのが見逃されてんのさ~!?」
「わ、分かんないみゃ。みゃ~を捕まえた男たちが話してたんだけど、途中で『沼地の魔物を捕まえに行く』とか言っていなくなっちゃって、みゃ~は檻の中に放置されたみゃ~」
「それって……」
「プォン、トットットット(もしかして、さっきの男たちのことじゃねえか?)」
なるほど、珍しい生き物を捕まえてオークションで売って稼ぐのが目的の連中だったんだな……でも獣人は魔物じゃなくて人だろ?
さすがにそれは悪党すぎるぜ。
「まあでも安心してよ。レフっちを捕まえたヤツらは死んじゃったからさ~」
「そ、そうなのみゃ? ならひと安心みゃ~」
「でも、地下オークションが無くならない限り、また捕まるかもしれない」
「それは勘弁みゃ~……!」
生きている限り、ハンターに狙われる運命と知って頭を抱えるレフティ。
なんというか、さすがに可哀想だぜ……
「なんじゃあんたら、地下オークションの話なんぞしおって」
「うわ、聞かれてた~……!」
後ろの席に座っていた老人にオレたちの会話が聞こえていたようで、窘めるように話しかけてくる。
どうやら彼は地下オークションの存在を知っていて、なおかつ嫌っているようだ。
「アレが取り締まられんのは、最近新しく就任したデイルタッカーシティのシティリーダーが黙認しているからじゃ。前のシティリーダーは闇市場の視察を定期的にして、犯罪が起きないようにしっかり取り締まっていたんじゃが……」
「どうして変わっちゃったの~?」
「噂によると、今のシティリーダーの一味に暗殺されたという話じゃ」
「キュインキュイイン……(マジかよ、さすがに色々と腐敗しすぎだぜ……)」
ということは、今のデイルタッカーシティのシティリーダーは闇市場を取り仕切るお偉いさんと繋がってるのかもしれねえな。
そんなのが街の長になっちまったら、批判するのも暗殺が怖くてできないぜ。
「地下オークションにはシティリーダーを含むスネに傷を持ったお偉いさん方が参加しているらしい。いっそ、誰かがそこにいる汚いヤツらごと地下オークションをぶっ壊してくれると街が平和になるんじゃがのう……」
「……オークション、こわして、いい?」
「ワシらみたいな善良な市民には関係ないからのう」
「そうなんだ~」
「そういうことなら……」
「キュルルルルルン!(オレたちがぶっ壊してやるぜ!)」




