54 ベニーのお仲間だぜ!
「……はい、これで大丈夫だよ~。お馬さんごめんね~」
「ヒヒィ~ンッ!」
パカラッパカラッと元気よく走り去っていく馬。
沼地の魔物に襲われていたところを助け出し、ベニーが簡単な治療をしてから逃がしてあげたのだ。
「チャウっち、馬車のお馬さんは襲っちゃダメじゃん。野生動物だけにしときな~」
「ヴォォオオ……」
ベニーに怒られて若干しょんぼりしている沼地の魔物。
なんでこんな状況になっているのかというと、どうやらこの魔物……チャウっちことチャウンシーはベニーの知り合いらしい。
「いや~それにしても驚いちゃったよ。まさかチャウっちが生きてるなんてね~」
「べニー、状況の説明が欲しい」
「ブォオオオン!(訳が分からないぜ!)」
デイルタッカーシティに行く途中の沼地に危険な魔物がいるというから倒そうと思ったのに、そいつがまさかベニーの知り合いだなんて……
しかもベニーの言葉が分かってるみたいだし、一体コイツはなんなんだぜ?
「チャウっちは、ボクと同じ『人魔人間』なんだ~」
「人魔人間って……」
「ギュインギュイイイン!(この巨大ゾンビ、人間なのかよ!!)」
人魔人間っつーのは、マッドサイエンティストのレザーフェイス博士とかいうのが開発してた人造の人間のことだ。
死んだ人間とアンデッド系の魔物を組み合わせた、人の意志を保ったまま半永久的に生きられる不死の生物……それが人魔人間だ。
「前にも言ったかもだけど、人魔人間の成功例はボクを入れてたった2人だけ。でもそのもう1人はレザーフェイス博士を殺した後に爆発しちゃって、残ってるのはボク1人……だと思ってたんだけど」
「もしかして、そのレザーフェイス博士を殺して爆死したのがこの子……?」
「そういうこと~。チャウっちは『ヴォルフグール』っていう魔物と人間を組み合わせた人魔人間なんだ~」
「ヴォォオオオ……」
ヴォルフグールねえ……狼男のグール版って感じか?
あんまし人間要素は残ってなさそうだが……
ってか、よく見ると頭の形とかミッドウルフみてえだな。
「あ、ちなみにボクは『グリムラビット』と人間を組み合わせた人魔人間だよ~」
「ベニーは、ウサギ人間?」
「ブロロロロン(ウサギ要素が見当たらないぜ)」
なるほどな、人魔人間のベースとなったアンデッド系の魔物も被検体によって種類が違うってわけか。
で、実験が上手くいってちゃんと生きてるのがベニーとチャウンシーだけだったと。
「てかチャウっちさ~、その姿だと理性効かないっしょ? 変身解いたほうがよくない?」
「変身?」
「そうそう。チャウっちのこの姿はね~『メタモルフォルム』っていう変身した姿なの。人魔人間の特殊能力なんだよ~」
「ヴォォアアア……」
「ブォン! ギュィイイイイイン!(マジかよ! オレのフォルムチェンジと一緒じゃん!)」
どうやら、今の巨大なゾンビ狼男みたいな見た目はフォルムチェンジをした姿らしい。
変身を解いたらベニーみたいな人の見た目になんのかな?
「ベニーも、変身できるの?」
「出来るよ~。でも本能が強くなっちゃって抑えるの大変だし、変身中は体力もすっごい使うからあんまやりたくないけどね~」
「ヴァアア……」
つまり、今のチャウンシーはバーサーカーモードみたいなものなのか。
それで腹が減って、見境なく旅人や馬車を襲ってたんだな。
「ほらほらチャウっち、変身解除しなって~」
「ヴォ、ア……ト、ケナイ……」
「えっ? なになに~?」
「メタモル、フォルム……解ケナイ……」
「もしかして、変身が解除できなくなっちゃったの?」
「ヴォァ……」
それって、腹も減って暴走しかけた状態のまま元の姿に戻れないってこと?
めちゃめちゃピンチじゃん!
「早くしないと、さっきの人たちが討伐隊を組んでやってくる」
「ヤバいヤバい! チャウっちの変身をなんとか解除しないと!」
こうしてオレたちは、沼地の魔物を討伐するという今までの目標を変更し、魔物の姿に変身している人魔人間のチャウンシーを元の姿に戻す方法を考えることにした。
人生、柔軟なスケジュール変更が大切だぜ!




