49 服を買ったぜ!
「よ~し、これに決めた~」
「これなら機能性も十分、ベニーにも似合ってる」
「店員さん、これ買いま~す」
「まいどあり!」
行商用の大型馬車の前に並べられた商品を吟味していたベニーとアナベル。
しばらくして良い服が見つかったのか、購入してそのまま馬車の中で着替えをしている。
「じゃじゃ~ん。どうかなぎゅいっち? 可愛いでしょ~」
「__カワイイ」
「やった~ぎゅいっちに褒められた」
ボロボロの服に大きな布を巻いていただけの姿から、丈が短いワンピースと大きめのローブを羽織った可愛らしいコーデに着替えたベニー。
ちょっとゾンビっぽいベニーが魔法使いっぽい服を着ているので、なんだかハロウィンの仮装みたいだぜ。
「うわあっ!? 喋ったぞコイツ!」
「音声機能まで付いてんのかよ!」
「な、なあアナベルちゃん! この魔道具譲ってくれよ~!」
「もう1着……いや、ここにある服全部タダでいいから!」
「だめ」
「(コイツら、まだオレを買い取ろうとしてたのかよ……)」
まあ、たしかにチェーンソーみたいな工具なんてこの世界にないだろうしな。
しかも自走できて、ちょっとだけ喋れて、魔物も討伐できる。最近時刻も分かるようになった。
いや~、実はオレってめっちゃ便利じゃね?
「ぎゅいぎゅいは、わたしたちの仲間」
「仲間はプライスレスだよ~」
「そこまで言われたら仕方ねえ……オイラの仲間と交換でどうだ?」
「おい!」
「だめ」
「いらな~い」
「おいぃ!?」
―― ――
「そういや嬢ちゃんたち、ハワラタシティ方面から来たってことは、これから南に向かうのか?」
「その予定」
「デイルタッカーシティって街に行くんだ~」
「そうか、デイルタッカーシティに……」
行商人が滞在している街道脇で買い物を済ませて旅を再開しようとしたところ、商人のおっさんたちが少し険しい表情を浮かべる。
「なになに? デイルタッカーシティでなにかトラブル?」
「いや、デイルタッカーシティ自体がどうとかじゃないんだがな……」
「ここから街道を南に行った先……要するにデイルタッカーシティに向かう途中にこの辺じゃ見かけない魔物がいるらしてな」
「ちょっと前に知り合いの馬車が襲われて、馬がその魔物に食われちまったって事があったんだよ」
「それはこわいね~」
おっさんの話によると、ここからデイルタッカーシティ方面に直進していったところに沼地があり、その沼地近くの街道を通った旅人や馬車が謎の魔物に襲われているらしい。
魔物は人間よりも一回り大きく、二足歩行で徘徊し、見た目はゾンビのような姿をしていたんだとか。
「なるほどね~。その話を聞いてたから、ボクにびっくりしてたんだ」
「そういうこった。いやあ、驚いて悪かったよ」
「二足歩行、ゾンビ……もしかしたら、グール系の魔物かも」
「(グールかあ……)」
グールと言えば、人食いの鬼みたいなモンスターだよな。
そんなのが沼地に潜んでるのか……ちょっと怖いぜ。
「オイラたちもデイルタッカーシティに向かおうと思ってたんだが、その話を聞いて一旦ここでストップしてるんだ」
「一応、ここからもう少し南に行くと分かれ道があって、直進じゃなくて南東方面から迂回して行くことも出来るんだが……」
「かなり大回りになっちまうから、それなりに準備をしてからじゃないとって感じだな」
「そっか~。情報ありがとね、商人のおじさん」
「わたしたちも、気を付ける」
行商人たちからありがたい注意喚起を受けたオレたちは、今度こそ旅を再開した。
目的地はデイルタッカーシティのまま変わらねえけど、危険な魔物がいるってなったら、ルートを考え直さないといけないかもな。
「アナっち、どうする~?」
「謎の魔物……倒したら、あの行商人たちも安心かも」
「一理あるね~」
「キュォオオン、キュインキュイン!(アナベルがそう言うなら、やることはひとつだぜ!)」
よっしゃ! 南の街道を直進だぜ!




