38 切っても死なない魔物だぜ!
「よし、ここも通れるようになった」
「ブロロロン!(伐採完了だぜ!)」
ハワラタシティの西部森林に出没するジャマートレントの討伐クエストを開始してしばらく経った。
とりあえず森の中の大きな道を歩きながら奥へと進んでいくと、道を塞ぐように立っているジャマートレントが現れるので、それを切り倒して更に先に進んで行く。
討伐した証拠として切ったジャマートレントの根っこを持ち帰ることになっているので、アナベルが背負っている布袋の中には収穫した山菜みたいな感じでジャマートレントの根っこが詰まっている。
「ひい、ふう、みい……これだけあれば、わたしの録音機能に対応している高性能の再生魔道具が買えるくらいの報酬が出ると思う」
「ギュインギュイン!(とりあえずの目標金額は達成だな!)」
オレたちがクエストをやっているのはもちろん金稼ぎの為だけど、その中でも1番の理由はアナベルが録音した音声データを再生する魔道具を購入するのが目的だ。
アナベルがメイドとして仕えていたビギニー伯爵の屋敷を山賊に襲わせたハワラタシティの街議会メンバー、農業ギルド長のスコッツと警備ギルド長のマッシュ。
彼らが残した犯罪の証拠音声を拡散して、ビギニー伯爵の仇を討つ……そのための下準備というわけだ。
「この辺りはもう、ジャマートレントはいないみたい。そろそろジャマーブラスターを撒いて街に戻る?」
「__サンセイ」
ある程度大きな道にいたジャマートレントの討伐は完了したので、最後に『ジャマーブラスター』と呼ばれるジャマートレント用の忌避剤を道に撒きながら来た道を引き返す。
これでしばらくはジャマートレントが道に出てくることは無い……まあ、中には気にせず出てくる猛者もいるらしいけどな。
「ちょっと暗くなってきた。日が落ちる前に森を出よう」
「ドッドッドッド……(エネルギーも結構消耗してるから早く出たいぜ~……)」
森の中は太陽の光がほとんど入ってこないので、オレの唯一の回復方法であるソーラーチャージが使えない。
軽量化のスキルを習得したおかげか、前よりは体力の消耗速度が遅くなったけど、ソーラーチャージが使える日中の内に森を抜けて回復したいぜ。
カコッ、カクッ……
「(……ん? なんだこの音?)」
薄暗い森の中を進んでいると、横の茂みの奥からカクカクッという謎の音が聞こえてくる。
ジャマートレントの足音とかじゃなさそうだし、新手の魔物か……?
「……ぎゅいぎゅい、まだ戦える?」
「ギュインギュイン!(まだまだいけるぜ!)」
謎の音が聞こえる茂みを警戒しつつ、アナベルがオレを構える。
そして遂に、音の正体が姿を現わした……
カクッ、カコッ……
「カカカカカッ……」
「ギュイインッ!? ギュィイイイインッ!?(うわああああっ!? ガイコツだあああああっ!?)」
茂みから姿を現わしたのは、キノコや苔を体中から生やしたガイコツだった。
こいつも魔物の一種なのか……?
オレ、ホラーとかちょっと苦手なんだよな~……!
「こいつは、おそらくアンデッド系の魔物『スケルトン』の一種」
「(まあそうだよなあ、スケルトンって感じの見た目してるぜ~……!)」
スケルトンは特に武器のようなものは持っておらず、ただウロウロと徘徊しているだけだった。
「(よっしゃ、ここは先手必勝でぶっ殺すぜ! もう死んでるけど!)」
「あ、ぎゅいぎゅい……」
薄暗い森の中でアンデッド系の魔物と長い時間対峙してたくないし、仲間が来たら嫌だから速攻でカタをつけてやる!
「ギュイン! ブロロロロロロロオオオオオオオンッ!!(必殺! ドロップスラアアアアアアッシュ!!)」
オレはアナベルの手から離れ、目の前のガイコツ目がけてドロップキックを繰り出した。
最近習得した必殺技、ドロップスラッシュである。
「カカカカッ……」
ブロロロロオオオオオオオンッ!! バッコオオオオオンッ!!
「ギュイイン! ブロロロロン!(よっしゃー! 骨がバラバラだぜ!)」
オレのドロップスラッシュを真正面からくらってバラバラに崩れるスケルトン。
しかし……
「(あれ? 討伐完了のポップアップが表示されねえな)」
「ぎゅいぎゅい、アンデッド系の魔物はね……」
カコッ……カコカコッ……
「カッカカカ……」
「聖水とか使わないと倒せないよ」
「ブォオオオ~ン!(そんなの聞いてないぜ~!)」




