32 黒幕が登場だぜ!
「……よし、綺麗になった」
「ブロロロロロン!(伐採ポイントもまあまあ稼げたぜ!)」
ビギニー伯爵の屋敷の焼け跡にやってきたオレとアナベルは、周囲に生えていた草木を刈ってから、焼け跡の裏に小さなお墓を作った。
「ペンダントは、ここに埋めておく」
「ドッドッドッド……(遺骨の代わりってやつか……)」
アナベルが屋敷の焼け跡から見つけた、大魔女ラガティーとビギニー伯爵の写真がはめ込まれたロケットペンダント。
てっきり大切な人の形見ってことで持ち帰るのかと思ったが、アナベルはこの場に埋めていくことに決めたらしい。
「よいしょっと……これで、大丈夫」
焼け跡の中で燃えずに残っていた石材などを集め、箱の形にして墓の手前に埋め込んでいく。
その中に布で包んだペンダントを入れておけば、汚れたり無くしたりする心配もないだろう。
「それじゃあぎゅいぎゅい、ルヴィたちの家に戻ろう」
「ブォン、ブロロロロン(そうだな……でも、また墓参りには来ようなアナベル)」
とりあえずの目的地であったビギニー伯爵の屋敷跡までやってきたアナベル。
これからどうするのかはまだ決めていないが、しばらくはハワラタシティに滞在する予定だ。
墓参りなんて何回来たって良いんだし、まだまだ草木がボーボーな場所は多いからな。
また今度、アナベルと一緒にここに来て除草でもしよう。
ザッ、ザッ……
「(ん、誰か来たな)」
「ルヴィたちが、迎えに来たのかな?」
オレたちが帰ろうとしたところ、屋敷の入り口方面から足跡が聞こえてくる。
もしかしてルヴィとリアンが呼びに来たのだろうか?
「ひょっひょっひょ。ここはいつ来ても気分が晴れますなあ」
「あの伯爵ババアが屋敷ごと灰になった場所じゃからのう」
「(っ!!)」
「…………」
ルヴィたちではない、ゲスいジジイどもの笑い声が聞こえてくる。
アナベルはオレを抱え、焼け跡の陰に身を潜めた。
「まったく、大魔女と友人というだけで街議会の我々よりも人望が厚いなど、まさに迷惑千万」
「何もできない隠居貴族のババアに、街のヤツらはなんでヘコヘコしておったんだか……」
「(コイツら、多分ビギニー伯爵の悪口を言ってやがるぜ……!)」
「…………」
オレを抱えているアナベルの腕に力がこもっているのが分かる。
きっと、アイツらを今すぐにでもぶっ殺してやりたいと思っているに違いない。
「そういえば、この燃えカス屋敷はいつまでこのままにしておくんだね? 女を囲うための館でも建てたいところなんじゃがのう」
「賊をけしかけて燃やしたまではいいが、シティリーダーが『土地の所有はまだビギニー伯爵にある』と……最低でも3年は放置らしい」
「ふん、どうせヤツの関係者など現れんじゃろ」
……コイツら、もしかしてわざと山賊をけしかけて屋敷を襲わせたのか!?
しかも、ビギニー伯爵の土地を勝手に使おうとまでしてやがる!
「(マジで今すぐぶっ殺したいくらいの悪党だぜ……!)」
「…………」
その後も、ジジイどもはビギニー伯爵の悪口や、この場所をどうやって奪うかなどの話をして、しばらくしたら帰って行った。
アナベルはずっと無言で、オレを強く抱きしめていた。
「ブォン、ドッドッドッド……!(なんなんだよ、マジでアイツら……!)」
「…………」
「ブロロン、ブロロロン……(アナベル、大丈夫か……?)」
「……録音モード、解除。これで証拠は押さえた」
「(……へっ? ろ、録音?)」
なんとアナベルは、自律式駆動人形としての機能を駆使してあのジジイどもの会話を途中から録音していたらしい。
たしかに、この場で感情のままにぶち殺したらオレたちがお尋ね者になっちまうもんな……
さすがアナベル、策士だぜ!
「あんな連中に、この場所は渡さない。報復もきちんと受けてもらう」
「ギュインギュイン、ギュオオオン!(勿論オレも協力するぜ、アナベル!)」
こうして、オレとアナベルの次の目標は『ビギニー伯爵を屋敷ごと燃やした黒幕のジジイどもに復讐すること』に決まった。




