31 お屋敷跡を綺麗にするぜ!
「この先がビギニー伯爵のお屋敷跡だよ」
なだらかな丘の上に広がるハワラタシティの最北部。
草木に囲まれてちょっとした森林公園のようになっている場所に、アナベルが暮らしていたビギニー伯爵の屋敷が存在した。
存在したというか、存在していた……かな。
「数か月前に火事があって、ほとんど燃えちゃったの。街の外れにあるから、周りに燃え広がったりはしなかったみたい」
「鎮火した後は焼け跡がそのまま放置されて、管理する人もいないから草はボーボー、木もニョキニョキだよ」
「リアン、木はそんなすぐにニョキニョキしないよ」
「ドッドッドッド……(めちゃめちゃ自然に飲み込まれてるぜ……)」
ルヴィとリアンの話を聞いたアナベルが、黒ずんだ木材が残る屋敷の跡へと近づいていく。
「……草ボーボーだけど、ここは確かに、わたしが暮らしてたお屋敷」
「(やっぱ、こんなになってもアナベルには分かるんだな)」
オレを胸に抱えたまま、焼け焦げた屋敷の残骸を静かに眺めるアナベル。
自律式駆動人形のアナベルはあまり感情を表に出さないけど、オレを抱きしめる腕に力がこもっているのが分かった。
「それじゃあたしたち、先に帰ってるね」
「美味しいごはん作って待ってるからね~」
焼け落ちた屋敷の前で佇むアナベルに気を遣ったのか、案内を済ませたルヴィとリアンが一足先に家に戻っていく。
結局、オレとアナベルはこの街で行く所も無いということで、彼女たちの家にしばらくお世話になることになったのだ。
いやあ、マジで人情があったかいぜ。
「ちょっとリアン。アナベルちゃんとぎゅいぎゅいは魔道具なんだから、普通のごはんは食べられないよ?」
「あ、そっか~。じゃあ、えっと~……美味しい魔力作って待ってるからね~」
「ブォオオオン?(美味い魔力ってなんだ?)」
リアンのよく分からない去り際のセリフに心の中でツッコミを入れつつ、オレはしばしの間、アナベルと一緒にビギニー伯爵の屋敷跡でしんみりと佇んだ。
「……ぎゅいぎゅい。お屋敷の周り、綺麗にしてあげたい。手伝ってくれる?」
「__モチロン」
「ぎゅいぎゅい……ありがとう」
アナベルがオレを装備して、屋敷跡周辺の草木を刈っていく。
ギュイイイイイイイイイイン!!
【セイタカハーブ除草! BP+1】
【パタンパソウ除草! BP+2】
ギュリギュリギュリギュリ!! バサバサバサッ!!
【コスギブランチ伐採! BP+1】
【コスギブランチ伐採! BP+1】
【シュルッツバイン伐採! BP+2】
「ギュイイイイイイン! ブロロロロロロロ!(これ意外と良いな! 少ないけど伐採ポイントが入るぞ!)」
アナベルと一緒に屋敷周りの除草作業をしていると、少しずつではあるが伐採ポイントが貯まっていく。
基本的には樹木だったら1本、草やツタはある程度まとめて除草したらポイントが入手出来る感じ。
魔物や賊と戦うより安全だし、こういうので地道に伐採ポイントを稼いでいくのが良いのかもしれないな。
「ギュインギュイイイイン!(この調子でどんどん除草するぜ~!)」
「ぎゅいぎゅい、ちょっとストップ」
「プシュ~(ストップだぜ)」
「何か、落ちてる」
オレを装備して草木を刈っていたアナベルが、屋敷の焼け跡の近くで何か拾う。
見た感じ、金属製のロケットペンダントみたいな感じだ。
「……っ! これ、ラガティー様とご主人様……!」
「ブォンブォオン!(奇跡のツーショット写真だぜ!)」
アナベルが煤で汚れたロケットペンダントの蓋を上げると、中には妙齢の女性のツーショット写真がはめ込まれていた。
どうやらこの二人がアナベルを作った大魔女ラガティーと、ラガティーの友人にしてこの館の主のビギニー伯爵らしい。
っていうか、ビギニー伯爵って女性だったんだな……てっきり男の人かと思ってたぜ。
「……お屋敷は燃えちゃったけど、写真が残ってた。来て、よかった」
「ブォン、ギュィイン!(良かったな、アナベル!)」




