30 家族集合だぜ!
「ルヴィ、リアン。今帰ったぜ~……って、ぎゅいぎゅいどうしたその恰好」
「ギュイギュイン……(オレにも分かんないぜ……)」
仕事を片付けて家に帰ってきたジョーが、オレの姿を見て驚いている。
まあ、今のオレの姿を見たらそんな反応にもなるか。
「あ、お父さんお帰りなさ~い」
「パパみて! アナベルちゃんとぎゅいぎゅい、可愛くなったでしょ!」
「その服、リアンが昔着てたヤツか……アナベルは良いとして、なんでぎゅいぎゅいにまで着せてんだよ」
血で汚れたボディを拭いてもらった後、服を洗濯中のアナベルと一緒に替えの服に着替えさせられたオレ。
いやまあアナベルは分かるけどよ、オレはチェーンソーだから服とか要らないだろ。
しかも女モンだし。
「っていうか、どうなってんだそれ? ぎゅいぎゅいにスカート巻いてんのか?」
「ちゃんと下にパンツも穿いてるよ~!」
「ドッドッドッド……(妙にフィットして変な感じだぜ~……)」
お人形遊びが好きなリアンが、まずアナベルに自分が幼い頃に着ていたフリフリのワンピースを着せて大はしゃぎ。
その後何故か『ぎゅいぎゅいもオシャレしないとね~!』とか言ってボディ部分に下着とスカートを装着しやがった。
結果、今のオレはフリフリのスカートからゴツイ鎖刃が飛び出ているという、だいぶ不気味な見た目になってしまっていた。
「ただいま~……あら? お客さんかしら?」
「あ、お母さんお帰りなさ~い」
「ママお帰り~!」
「お邪魔してます」
「ブロロロン!(邪魔してるぜ!)」
そんなことをしていると、どうやら買い出しに出かけていたルヴィたちの母ちゃんも帰ってきたようだ。
うう、正直こんな姿で挨拶したくなかったぜ……
「ミーア、ただいま帰ったぜ」
「なんとか無事に帰って来れた~」
「おかえりジョー、ルヴィ。それで、このお人形さんみたいに可愛らしい子は誰かしら?」
「実は……」
ジョーが奥さんのミーアにここまでの話を説明する。
道中で賊に襲われたと聞いたミーアはとても驚いていて、怪我が無くて良かったとルヴィを抱きしめた。
「そう……あなたたちは魔道具なのね。アナベルちゃんなんか、普通の女の子にしか見えないけど」
「わたしは大魔女ラガティーが作った自律式駆動人形。高度な技術を用いて作られた人形は、人と見分けがつかない」
「でもアナベルちゃんは本当にオートマタなんだよ! 魔石燃料を入れる機関も付いてるし!」
魔石燃料は魔力が蓄積されて出来た結晶のことだ。
この世界では、魔力っつーもんが基本的なエネルギーらしい。
魔力は大気中にも漂っていて、アナベルはそれを吸収して体力を回復することが出来る。
今のオレにはそういうことは出来ねえけど、ソーラーチャージのスキルで太陽光を魔力エネルギーに変換することが出来るっつーわけだ。
そんでもって、魔力で動く道具のことを『魔道具』っていうらしい。
要するに異世界版の家電みたいなもんだな……いや、違うか?
「アナベルは元々、この街で暮らしていたらしい。ほら、あのビギニー伯爵の……」
「もしかして、街外れにあったお屋敷? あらまあ、それは……」
「…………」
アナベルが暮らしていたビギニー伯爵の屋敷が火事で燃えたことを知っているジョーたちは、アナベルに同情した。
アナベルが人間ではなく高性能な魔道具だとしても、仕えていた主と暮らしていた棲家をいっぺんに失うというのは辛いものがあるだろう。
「ルヴィ、リアン。アナベルたちを屋敷の跡まで案内してやってくれないか?」
「「は~い」」
「お屋敷、ようやく見に行ける……弔い用のお花も、持って行く」
「(アナベル……)」
山賊に襲われて燃えてしまった屋敷の跡を確認しに行くことは、アナベルにとってビギニー伯爵の墓参りなのかもしれない。
「(オレの墓参りも、向こうの世界で誰かやってくれてんのかなあ……)」
オレが死んだ山の中にチェーンソーでもぶっ刺しといてくれたらそれで満足だけどな。
「ぎゅいぎゅい、わたしが住んでたお屋敷まで、一緒に来てくれる?」
「ブォン! ギュインギュイン!(おう! 勿論一緒に行くぜ!)」
こうしてオレたちは、ハワラタシティの外れにあるビギニー伯爵の屋敷跡へと出発したのだった。




