18 森を抜けたぜ!
「ぎゅいぎゅい、もうちょっとで森を抜けるよ」
「ブォン……ブォオン……」
「もう少しだから。頑張って、ぎゅいぎゅい」
アナベルに抱えられたまま、薄暗い森の中を進んで行く。
1度はチャージ満タンで全回復したオレだけど、新機能が追加されてはしゃいで走り回ったり、伐採したり、魔物と戦ったり、ボイス機能を試したりしている内にエネルギー切れギリギリになってしまった。
「(とりあえず今は、アナベルの世話になるぜ……)」
この世界にチェーンソーとして転生してきてまだ2日目だが、オレが生きていくために大切なことが少し分かってきた。
とにかくエネルギーの確保が最優先だ。
人間と同じで、オレもエネルギーを補給しないと動かなくなってしまう。
とはいえ人間とは違って自力で動いたり喋ったりがまだうまく出来ないから、エネルギーをチャージするのも大変だ。
「(まあ、1回エネルギー切れになってもいずれまたチャージされれば復活できるってのは良い事だけどな)」
人間だったら、マジでエネルギー切れになったらそのままお陀仏だもんな。
そういえばお陀仏で思い出したけど、僧侶の修行って飲まず食わずで死ぬまで念仏唱え続けるんだっけか?
で、死ぬと仏さんになれるみたいな。
「(オレだったらぜってー耐えらんねえな~……やっぱお腹が空いたらスニッ〇ーズだぜ!)」
……と思ったけど、チェーンソーになってから『何か食いたい』みたいな気持ちがあんまし湧かねえんだよな。
やっぱ機械だからかな?
「(アナベルは、メシ食いて~とか思うのかな)」
アナベルは見た目は普通の女の子って感じだけど、実は自律式駆動人形とかいう……なんだろう、オートマタってやつ?
まあとにかく、アナベルも人間じゃないからメシは食わないんだけど、見た目は人間そっくりに作られてて自分で色々考えたりも出来るから、もしかしたら食欲とかもあったりすんのかも。
オレのボイス機能が強化されてもうちょい色々喋れるようになったら聞いてみようかな。
「……ぎゅいぎゅい、見て」
「ブォン……?」
テクテクと歩いていた震動が無くなり、アナベルが足を止めたことが分かる。
エネルギー低下で視界機能をオフにして目を閉じたような状態になっていたところに、なんだか暖かくて眩しいような光を感じる。
「……森を、抜けたよ」
「(そうか、遂に……)」
視界機能をオンにして、アナベルの腕の中から外の景色を視認する。
そこは、今までいた薄暗い森の中ではなく、草原と岩場、そして緩やかな丘に太陽の光が降り注ぐ広大なフィールドだった。
「ブォン……ブォォオオオン……!(うぉお……うぉおおおお……!)」
すっげー……マジで大自然じゃん……!
いやまあ、今までも森の中にいたんだけどさ。
なんというか、こういう自然の景色って今まで暮らしてた街の周りには無かったからさ。
海外っつーか、RPGゲームのマップみたいな感じでテンション上がっちまうぜ……!
「……あっちに、道がある」
「ギュォオン!(行ってみようぜ!)」
森を抜けた平地の間に、土と草が踏み固められたような田舎の道っぽいものを発見する。
細いタイヤの2本線の跡が地面に付いているから、車とかがあの道を使ってんのかな。
「道があるなら、人も通るはず」
「(もしかしたら、ヒッチハイクとかして乗せてもらえるかもしれないぜ)」
オレとアナベルの現在の目的は、アナベルが山賊に攫われる前に働いていた屋敷のある街に行くこと。
今いる場所からどっち方面に向かえばいいのかも分からないけど、とりあえず道があるなら何とかなるよな!
「ブォン! ギュイイイイイイイイン!(よっしゃあ! ここからオレとアナベルの冒険が始まるぜえええ!)」
【エネルギー残量低下。チャージを推奨します】
……冒険の前に、まずはエネルギー回復だぜ。




