198話 今後の方針
どれだけの時間が経過しただろうか。
全員が全部の書物を読んだわけではないが、今回の事件に関係する書物は読まれていたため、一旦全員で司書長官室の応接室に戻ることになった。
そして、今回の事件が起こった原因と理由についてまとめていった。
補佐「大司祭がなぜ今回の事件を引き起こしたのか、よくわかりました」
僧侶「大司祭様がやったことが正しいかどうかは、ここの書物を読めばわかると言っていましたが、確かに悪と言い切れるものではないと感じました・・・」
スカウト「悪でなくとも、昼に慣れた我々には迷惑ではあるがな」
一言スカウトが挟んだ。地上世界の今後を考えれば当然言いたくなる発言でもある。
防衛長官「彼の苦悩と行動理由はよく理解できたし、一人で背負うには辛かったのだろう。
だが、やらかしてしまったことは、事実だな。そしてそれを戻すこともできなくなった」
多くの人が頷いていた。
天球長官「我々が今後どうするか、これが次の議題になります」
補佐「世間への公表は不要と考えます。それより夜の対策をどうするか、これに尽きるかと」
側近「公表は不要という意見には賛同します。
そうですね、私は王城として知りたい情報だけを王へ報告しますが、多くは私の胸に秘めたままとする予定です」
天球長官「500年後に来る闇の宝珠の分離の機会。そこに向けて我々は準備をします。
分離技術者はすべて今回の事件で失われましたが、幸い書物が発見されました。
これは不幸中の幸いでした」
地上側へのイヤミに聞こえるが、天球長官としてはどうしても言いたかったようだ。
それだけ彼にとって辛く、許しがたい出来事であった。
補佐「大司祭の指示に従い、悪気が無かったとはいえ、分離技術者を殺害してしまったことを謝罪致します・・・」
ハッとした補佐がとっさに発言して場を取り繕った。
戦士「我々は大聖堂の依頼に従う予定ですが、獣人種が地上で暴走しないよう、そちらから働きかけてもらえると無用な争いを避けられるのですが・・・」
戦士が浮遊大陸側に提案した。
防衛長官「そうですね、これ以上の争いは無用です。
夜が出現しても地上種に迷惑をかけるような行動は慎むように指示をします」
魔剣「もともと地下の闇の世界で暮らしていたんだろう?
地下に押し込めたままにするより、彼らに夜もある地上での生活場所を提供できれば、一番円満に解決できそうだがな」
防衛長官「配慮に感謝します。そうだな。その方が彼らのストレス解消と夜の地上世界への好奇心を満たせるので、よさそうだ」
補佐「地下種の一部は冒険者として街に溶け込んでいる者もいます。
その仲間に入るのもよし、未開の地で新たに集落を作るのもよいのではないでしょうか。
その場合は、そちらで制御できるようにだけはして欲しいですが」
防衛長官「わかりました。具体的には今後こちらで詰めていこうと思います」
補佐「では、今後そちらは宝珠の分離の準備をし、我々は獣人種と争いにならないように周知するということでよろしいでしょうか」
天球長官「そうですね。500年、とてもとても長い年月ですが、分離するそのときまで、我々が争うことの無いようにしっかり次世代へ引き継ぎましょう」
側近「500年後に分離させないぞ!なんてことになったら大変ですからな。頼みますぞ」
僧侶「そう言えば浮遊大陸への移住についてですが、どうしますか」
獣人種が地上に進出すると地上種の土地が減ってしまう。
それを解消するために浮遊大陸への移住も検討するよう以前話があったことによる発言だった。
補佐「今回の事件は世間に知られない方がいいと判断したので、移住もしないほうがよろしいかと。
浮遊大陸は伝説の存在であり、実在するのを知っているのは今回の作戦に参加した冒険者と王城関係者だけです。
浮遊大陸へ行けるとなると、なぜそうなったとか、理由を説明する内に面倒なことになりそうです」
天球長官「そうですね。地上種の移住を受け入れるなら、溢れる獣人を我々で回収する方がよさそうです」
今後の方針や連絡手段、人事異動で担当が変わったら互いに知らせて連絡を密にするという約束をし、話をまとめていった。
ダンジョンについては、大聖堂から獣人との交戦禁止令を出して対応すること。
地下種の王を倒したことで獣人種と不戦協定をしたことにして、浮遊大陸勢力である獣人種との争いを止めることになった。これで獣人との争いも無くなるだろう。
悪魔種などの闇の勢力は制御下にないので、こちらは冒険者が引き続き対応すれば問題ない。
ダンジョンでの遺物収集の他に、町間移動のための護衛任務や他地域の遺跡など、まだ冒険者には仕事は残っている。
浮遊大陸側はコボルト王を復活魔法で蘇生させるか、新たな王を据えて管理することを約束した。
浮遊大陸側としては長官会議で報告と承認を貰えば、手続きは完了だ。
承認を貰えばというが、「認めます」と言う以外に他の長官達に選択肢はない。
認めなければ、地上種との争いが続くだけだし、利点も理由もない。
補佐「では、この場はこれで終わりとしましょうか。
また何かありましたら、互いに連絡を取り合って解決を図ればよいでしょう」
天球長官「そうですな。では」
そう言うと長官達で地上種をダンジョンへの転移部屋まで見送った。




