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197話 大司祭の日記

 大司祭補佐は肩を叩かれ、振り返るとそこには僧侶がいた。

 その手に握られていた本が渡された。


僧侶「内容からするに、恐らく大司祭様が大昔に書いたと思われる書物です。確認して頂けますか」


 補佐は表紙をめくると文字が目に入ってきた。

 それは古代文字ではなく、浮遊大陸で使われている文字で書かれており、更には見慣れた筆跡がそこにあった。

 そして、本というより日記のような感じで書かれていた。


-----------------------------------------------

 私は司書長官としてこの書庫と秘密を引き継いだ。

 どれも聞いたことがない内容や、知られている常識には無いものばかりである。

 事実を知り、私は苦悩している。

 恐らく歴代の長官たちも同じだったであろう。

 遺伝子学は闇に耐性のない天上人をどうにかするために発展させることなく、身代わりの獣人を新たに造ることに注力し、現代も技術を失わないように研究施設で細々と技術の継承がされている。

 悪魔種をも上回る、より強い獣人種を造るという方向に変えて。


 宝珠を光と闇の二つに分けたとき、闇の勢力は誕生した。

 彼らの住処を考える事なく、地下へ追いやった過去の浮遊大陸人。過去の差別を理由に地上種から夜を取り上げ、睡眠の場を奪い、生態系まで変化させてしまった。

 睡眠の場の確保が困難であることが、どれだけ大変か、過去に地上で生活していた天上人は嫌と言うほど理解していたはず。

 その仕返しと言わんばかりに行われた宝珠の分離は、睡眠の場だけでなく、生態系とさらには世界の在り方を変えてしまった。

 夜がなくなり、昼だけの世界となってどれだけの年月が経過したのだろうか。


 もう良いのではないか、夜を地上種に、世界に返してはどうだろうか。

 現在、昼だけの世界に慣れた地上種と浮遊大陸人は良いだろうが、地上に出られない悪魔種をはじめとした闇の勢力と、自然増した獣人種にとっては苦しい世界である。過去の天上人と同じような苦しみの中にいるであろう。

 だが、昼だけの世界が当たり前となった世界に夜をもたらすことは混乱を生む。

 それは正しいことなのか。

 私のエゴではないか。

 浮遊大陸人の身勝手な対応を知り、許せなくなっている私の。


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 どうやら私は先代の長官の様に強くはなかったようだ。

 私は今だに、昼夜の世界に戻すべきではないかと悩むと同時に、これもまた1天上人の身勝手な判断で世界を変えることにならないか悩んでいる。


 後輩よ。

 この書庫は歴史の事実として保管し、今の世界を維持し、生きるのが最善なのではないかとも考えてしまう。

 そう生きるのであれば、この書庫を次の司書長官に引き継ぐ必要もないかもしれない。

 継承しないなら、この重圧に後輩を晒せずに済むし、後輩は悩むことも無くなる。

 後輩よ。お主ならどうする?


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 大昔に浮遊大陸人の後ろめたさを解消するために実行した、この歴史事実の封印隔離策。

 事実を白日の下に晒せば、昼だけの世界の異常さに皆が気付くかもしれない。

 そう考え、長官会議の場で夜のある世界が正規の世界であり、元に戻すべきだと議題に挙げることも考えた。

 だが、隔離された趣旨を考えると、実行に移せなかった。

 そこで天球を操作し、夜を出現させることで自然現象のように見せることを思いついた。制御室で理由をつけて管理システムを操作したが、結果は犯罪者として地上への追放だ。

 この秘密の書庫の存在は語っていない。

 後任への引き継ぎで、この書庫の存在は伝えないつもりだ。


 今まさに、最後の引継ぎのための時間を与えられ、その時間を使ってこれを書いている。

 この手記をあなたが読んでいるということは、私の悩みは解消されたか、和らいだか、引き継ぐべきだと判断したということだろうか。


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 ここで終わっていた。

 大司祭の苦悩と葛藤がそこにはあった。






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