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シープルおばさまは名探偵〜秋のパン祭り殺人事件〜  作者: 地野千塩


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犯人逮捕大作戦編-9

「おかえりなさい!工藤さん!」


 亜弓が雪也と会っているその頃、栗子と桃果は工藤のお帰りパーティーを開いていた。


 もちろん場所はメゾン・ヤモメだ。絢子も招待した。


 食堂にはベーカリー・マツダのパンを皿に並べた。皿は今回のパン祭りで貯めたシールを交換して貰ったものだ。


 絶品のシナモンロールはもちろん、カレーパン、ソーセージパン、塩バターパン、フルーツのタルトやクリスマス時期限定のチョココロネもある。キラキラとしたチョコのトッピングがされていてクリスマスツリーのように見えるチョココロネだ。てっぺんには星形のクッキーも載ってる。見た目も可愛らしい。


 パンだけでなく、桃果お手製のチキンやナゲット、フレンチフライ、焼いたソーセージ、シーザーサラダやジュースや紅茶も用意してある。まだ昼間なのでお酒は出さない予定だ。


「それにしても本当に事件が解決してよかったわねぇ」


 桃果はしみじみと呟いた。


「シーちゃんが録音した証拠が決めてでしょ。シーちゃんが解決したようなものよ」


 ここまで褒められてしまうとかえって栗子は恐縮してしまった。


 証拠は自分の機転でどうにか抑えられたが、推理はほとんど亜弓がしたようなものである。逆に優馬の色仕掛け攻撃に引っかかり、一時は事件調査も興味が持てないほどだった。


「そんな褒められると照れるわー」


 栗子の頬はほんのりと赤くなっていた。


「いやいや、本当に栗子さんのおかげだよ。助かった」


 工藤は頭を下げた。犯人だとは疑っていなかったが、工藤にいい印象を持っていなかった事には少し栗子も罪悪感を持ちほどだ。見た様子では表情も穏やかで、すっかり落ち着いているようだ。こうしてベーカリーマツダのシナモンロールを美味しそうに頬張る工藤を見て、もう町でトラブルを起こしそうには無いと安心する。


「本当よ。まさか優馬が犯人だったとは。信頼していた家政婦さんだったのになぁ」


 工藤の妻である絢子はその事はやっぱり引っかかっているようだった。


「そうねぇ。私も最初は優馬が犯人だとは思わなかったわね」

「シーちゃんは意外とイケメンに弱いんだから」


 桃果の冷静なツッコミには同意せざるおえない。やはり優馬の色仕掛け攻撃にまんまとハマってしまった事は反省すべき事だった。亜弓の話では、優馬は自分の事をタイプだと言っていたそうだが信じられない。そんな話を聞いて浮かれるほど頭にお花は咲かなかった。


 そこへ猫のルカがゴロゴロいいながらやってきた。元気な灰色の猫ですっかり我が家のヒロインと化している。元々は香坂家の猫だったが主人は塀の中にいて面倒を見る事は出来ないだろう。栗子達が飼うと言っても誰に反対される事もなかった。


「まあ、可愛い猫ちゃん!」


 絢子は黄色い声を上げた。


「可愛いな」


 工藤も目尻を下げてルカを見ていた。


 ルカが工藤夫婦もメロメロにしてしまったようだ。その後工藤夫婦は時々メゾンヤモメにルカに会う為にくるようになった。メゾン・ヤモメは毎日より賑やかになった。


 こうして事件の幕は降りた。


 事件は解決してハッピーエンドだが、コージーミステリのヒロインになりきっていた栗子はほんの少し寂しい気持ちも感じていた。

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