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シープルおばさまは名探偵〜秋のパン祭り殺人事件〜  作者: 地野千塩


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犯人逮捕大作戦編-8

 幸子のカフェで、亜弓と雪也は向き合ってお茶を飲んでいた。前に雪也とカフェに行く約束をそていたが、事件の事もあり、雪也の原稿が大詰めになり、犯人が捕まってから一週間後にこいうして会う事になった。


「幸子さん、紅茶と桃のケーキお願いできる?」

「ええ。紅茶と桃のケーキね。雪也君は何食べる?」

 俺はコーヒーとフルーツタルト!」

「わかったわ」


 幸子はふんわりと優しく微笑んで厨房の方へ行ってしまった。


 カフェに他に客はなく、時々窓の外から商店街の客達の笑い声が聴こえてきるだけで静かだった。あんな事件があった事など信じられなぐらい平和だった。


「しかしよく護身術こしんじゅつできたよな」

「あの時は必死だたから!」


 亜弓は恥ずかしくてちょっと俯く。


 あの後、優馬も光も逮捕されて工藤も釈放された。

 栗子のICレコーダーで録音した音声が動かぬ証拠となり、二人とも素直に犯行を供述しているという。


「それを言うなら栗子さんだって、死んだフリしICレコーダーで録音していたなんて。そもそもあなたに連絡して、私達の後をつけされていたのもびっくりよ。まったく気づかなかった」


 意外にも栗子は見切り発車でもなく、そこそこ計算していたようだ。本人はコージーミステリを読みすぎて、最後に犯人を捕まえる為の用意に頭が回ったというが。


「ま、あのオバタリアも今回はお転婆てんばしすぎだったな」


 雪也はため息をついた。


 そこへ幸子がケーキやお茶を運んできた。どうも気を使ってくれたようで、幸子は再び厨房ちゅうぼうの方へ行ってしまった。


「とりあえずあの様子では、認知症の心配は当分ないな」

「ないと思うけど、ユッキーはそういうところも心配してたの?」


 意外だった。栗子にはいつも態度が悪いし、血のつながりも無いのに。


「孤独死でもしたら、こっちが夢見が悪いだろ。まあ、メゾン・ヤモメにいれば問題ないだろうけどさ」


 雪也なりに栗子を心配しているようで、亜弓はちょっと笑ってしまう。素直になれば良いとも思うが、雪也のキャラでは難しいかもしれない。亜弓はフォークで桃のケーキを崩し、口に入れた。事件の後に食べるケーキは一段と美味しく感じた。


「ルカは元気?」

「元気よ。特に幸子さんに懐いちゃって。もうメゾン・ヤモメは大騒ぎよ」


 ルカというにはあの猫の名前だった。今日子の裏アカによると、ルカという名前をつけられているようだったので、そのまま呼ぶ事にした。お転婆てんばなネス猫で、メゾン・ヤモメで現在大暴れしている。まあ、おばさん二人にとっては良い刺激になり、毎日猫の世話に明け暮れていた。


 桃果は、手作りのキャットフード作りにハマり、栗子は制中のシンデレラストーリーに猫を急遽登場させる事に決まった。シンデレラストーリーを書くとメンタル崩壊する栗子だったが、ルカのお陰でだいぶ安定しているようで編集者としても安心した。やはりアニマルテラピーというのも現実にあるのかもしれないと思う。


 雪也フルーツタルトをもぐもぐと頬張っていた。


「しかし、食の好みの違いで殺意に発展するなんて怖いよな〜」


 雪也は光を思い出してブルっと震える素振りを見せた。


「でも案外奥さんの料理に困っている男性って多いらしいわね」


 あの後、亜弓はインターネットで調べてみると、案外妻の料理に不満な夫のコメントが見られた。殺意に至ってもおかしくないかもしれない。自分も一生肉が無い食卓だったら、確かに堪忍袋かんにんぶくろの尾が切れるかもしれないと思った。この桃のケーキも美味しい。卵やバター、牛乳といったビーガンには食べられない材料も入っているが、これが一生食べられないと思うと、自分は絶対ビーガンにはなれないなと亜弓は思う。


「私は料理が苦手だから、あんまり食に興味がないパートナーを探さないとね」

「いやいや、料理頑張って勉強しようぜ」

「そうだけどね…」

「まあ、俺はそんなこだわりはないけどね?」

「だったら私と付き合う?」


 肉食女子の本性を出してみた。しかし雪也は笑って一蹴した。


「え? タッキーと? それはないわ〜」

「そ、そうね…」


 事件は解決したが、亜弓の恋は前途多難ぜんとたなんのようだった。やはり不倫なんてしてしまうと、それなりに報いを受けるのだろうと亜弓は思った。

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