新スキル習得
またしてもご都合主義爆発です
「痛ってぇ~。」
「そりゃ、そんなにくっきりと手形が入れば痛いだろうな。
だが、女性の胸に顔をうずめて、その程度で済んだんだからよかったじゃないか。」
「わざとじゃないぞ!!」
「わかってるよ。倒れそうになった彼女を支えようとしたんだろ?」
「ああ、それがあんなことになるなんて・・・。」
「まあ、ある意味ラッキーじゃないか。なかなか女性の胸に堂々と顔をうずめる機会なんてないぞ?」
「そりゃそうだろうけど、そうなんだろうけど・・・。」
(これって、やっぱり遊神の加護であるラッキースケベが起こしたことだよな。確かにラッキーだったけど、その後に痛い思いをしなきゃならないなら、もう起こらなくてもいいよ・・・。)
「ふむ。昨日の門の閉門時間はいつも通り。兵も門の前で待機か。」
「ん?ああ、俺が言ったことが嘘かどうかの確認か?」
「ああ、お前の言った方角と高さが本当なら門は空いてなければならない。
兵も夜勤だから門の前に常駐してなければならないんだ。」
「俺は嘘は吐いてないぞ。」
「誰もお前が嘘を吐いてるなんて言ってないだろ。それにお前が嘘を吐いてまで、わざわざあんなところに小屋を建てる意味が無い。」
そう言うと、ジュータスは資料を机の上に置き、床に散らばった白パン包を片付け始めた。
コンッコンッ
片付けも終わり椅子に腰かけたところで扉がノックされた。
「入れ」
「失礼します。」
入ってきたのは先ほどとは別の女性の兵士だった。
「すまないが、パン包を2つと飲み物を2つ改めて持ってきてくれ。
それとこれの処分と床を拭くものも頼む。」
「はぁ、それは構わないのですが、先ほど何があったのですか?
叫び声が聞こえたかと思うと、ユーイが慌てて戻ってきたのですが。」
「ああ、不幸な事故があったんだ。そのことについては、後で皆にきちんと説明をする。
今は食事と拭くものを持ってきてくれ。」
「兵長がそうおっしゃるのであればそれに従いますが・・・。」
「なんだ?不服そうだな。」
「正直に言えば不服です。あれだけの叫び声が聞こえたのですから、彼女の身に何かあったのはまず間違いないでしょう。
仲間として、同じ女として説明をお聞かせ願いたいところではあります。
それに後でとなりますと、あらぬ噂がたつ場合もありますので。」
「あらぬ噂がたつか。それは困るな・・・。わかった。説明をするから皆にお前から伝えておいてくれ。
勿論俺も後できちんと説明をする。」
「わかりました。」
「事故の内容はだな、ユーイが食事を持って入ってきたのだが、躓いてしまってな。
それをそこにいるカズマが助けようとして、立ち上がったのだが、二人の距離が近かったのと中腰という態勢が悪かったんだ。
カズマの顔がユーイの胸に挟まれる形になってしまってな、それであの叫び声があがったと言うわけだ。
俺が一部始終を見ていたから間違いないぞ。」
「それは本当ですか?」
女性兵士は俺に冷たい目線を送ってきた。
「ああ、間違いない。嘘だと思うなら、調べの鐘を使っても構わんぞ。」
「いえ、そこまでは。わかりました。
皆には「不幸な事故があり、ユーイがなにかしらされたわけではない。何があったかは後で兵長が説明してくれる。説明があるまで、あらぬ噂を立てないように。」と伝えておきます。」
「ああ、それで頼む。あとユーイのケアも頼めるか?」
「その点はご心配なく。兵長に言われなくてもやるつもりでしたから。」
「頼む。それと後一つ。
待機場から部屋の前に誰かよこしてくれ。部屋の前に着いたらノックを3回鳴らして教えるようにとも伝えてくれ。」
「わかりました。」
「床を拭くものはそいつに持たせてくれたら構わない。」
「はい。では失礼します。」
女性兵士はそういうと部屋から出て行った。
「これで、変な噂はたたないだろう。」
「そうであって欲しいよ。しかし、彼女、ユーイさんには悪い事をしたかな。」
「あれは誰がどう見ても事故だ。偶然という加害者に対してどちらもが被害者なんだよ。」
「確かにそうなんだろうけどな。」
「悪いと思っているなら、後でユーイを呼んでやるから謝ったらどうだ?
ユーイも謝りたいと思っているかもしれんしな。それくらいのセッティングはしてやるぞ?」
「すまんが、頼めるか?」
「了解した。食事が終わり次第手配しよう。」
コンッコンッコンッ
扉からさっきジュータスが言った合図がした。
「少し席を離れる。逃げるなよ?」
「逃げるわけねえだろ!」
「はっはっは、言ってみただけだ。」
そういうとジュータスは資料片手に部屋から出て行った。
俺は痛む頬をさすりながら、痛みを和らげる方法を考えていた。
(熱を持ってるんだから、冷やせばいいんだよな。
冷やすってことは水を使えばいいんだろうが、氷の方がよりいいよな。
水をどんどん冷たくしていったら氷って出来ないかな?)
(さっきので床も濡れてるし、もう少しくらいなら濡れても問題ないよな。ちょっと試してみるか。)
俺は水が熱を失い冷え固まるのをイメージしながら水を発動した。
コロンッ
俺の手のひらに、小さな氷の塊が落ちてきた。
(水じゃなくて氷がでた!?)
ピロン
{スキル:氷魔法}を習得しました。
無詠唱の時と同じく頭の中に声が響いた。
俺は手のひらにある氷の塊をマジマジと見つめながら呆然としてしまった。
(マ、マジで出来ちゃったよ。もしかして魔法ってイメージで姿形をいらえるのか?
これは要検証案件だな。兎に角これで頬を冷やせるから、ありがたくこれは使わせてもらうとしよう。)
手に入れた氷を頬に当て冷たさを実感しながら、俺は氷魔法に鑑定をかけた。
氷魔法:水魔法より派生した魔法 発動には氷の詠唱が必要となる。
(おお~、派生型の魔法だったのか。でも神界で見せてもらったスクロールには氷魔法なんて無かったけどな。
まあ、手に入ったんだしどうでもいいか。)
「すまん、待たせたな。」
俺が小さくなっていく氷の冷たさを堪能していると、ジュータスが手にモップのようなものを2本持って帰ってきた。
「いや、問題ないぞ。って手に持ってるのはなんだ?」
「これか?床を拭くモップだ。飲み物をこぼしてしまったからな。ほら、1本はお前用だ。」
「俺も拭くのか?」
「当たり前だろ。一人でやるより二人でやるほうが早く済むんだからな。ほら、さっさとするぞ。」
そう言うとジュータスはモップで床を拭き始めた。
俺は溶けてしまった氷に名残惜しさを感じながらも、受け取ったモップで床を拭くのであった。




