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転生大賢者の現代生活  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2―16 政府との交渉 その三

 8月16日の防衛省との話し合いは取り敢えず終わった。

 物別れでは無いものの、儂の脅しがメインだったかもしれぬな。


 あれで彼らがどう思うかは知らぬし、政府要人にどのように報告するかも知らぬ。

 必要とあれば、魔導で彼らの動きをチェックすることも可能じゃが、現段階では不要と思うとる。


 何せ、新東京の官庁街や防衛省までは千キロに満たんでのぉ。

 儂の魔導も場所さえ分かっておれば、この遠距離でも効果を生じさせることができるのじゃ。


 流石にこれが西日本以西ともなれば、距離的に難しいがのぉ。

 ところで、無事に九幌へ戻った儂じゃが、二時間ほどしてからは、周辺に居た自衛隊と思われる監視者がかなり増えたな。


 これまでは十数人だったものが、近辺のビルの空き室にアジトを設けて、総勢で30名を超す人員が新たに投入された様じゃ。

 これまでの人数に加えて増員されたから、50名体制に近い人員を投入しているみたいじゃな。


 儂がかなりの危険人物であるかも知れぬとみて警戒をしているのじゃろう。

 明後日の政府要人との会談が終わったなら、いやその前にも警察や公安機関が更に増えるかもしれないな。


 一応彼らも周辺住民を刺激しないように注意はしておるようじゃが、自衛隊員と言うのは、一般の人とは違うでな。

 住民からすれば得体のしれない不気味な不審者が現れたとみるじゃろう。


 ご近所に転居してきた一波人とは明らかに違うし、我が家の周囲に紺色系や黒系装束の男たちが急に増えれば、聡い主婦ならばすぐに気づくじゃろう。

 翌日にはかおりが儂に言って来た。


「ねぇねぇ、最近妙な男の人達が増えていない?

 どっちかと言うとダーク系の衣装を身にまとって若い人もいるけど、壮年に近い人たちがウチの近くに随分と多いような気がするの。

 別に何かするわけでもないけれど、何だか格好だけで仕事もせずにいるようで気味が悪いんだけれど・・・。

 コージローは気づいていない?」


「ウン、まぁ、そんなのが増えたね。

 或いはこの近所に危ない男がいるのかもな。

 公安警察なんかは、そういう疑いのある男がいれば、その近辺に人を配置して監視するそうだ。

 かおり、お前、テロとか企んでないか?」


「やだぁ、そんなわけないでしょう?

 私って品行方正で通っているんだから、変なこと言わないで。」


「そうか、だったら、気にするな。

 かおりに何かあったら俺が助けてやる。」


「本当だよね?

 コージローの事、期待してるからね。」


 そんなラブコメのような話をしていたな。

 かおりも勘の鋭い子じゃったな。


 その意味では、周辺住民にマークされておるぞ。

 自衛隊さんよ。


 その日の夕刻、儂のスマホに越智陸将から電話が入った。

 連絡内容は、明後日の政府要人との会合は予定通り開催するとのことで、場所の変更も無いということじゃった。


 儂の方からは時間に間に合うよう行く旨を言い、そのついでに周囲の監視体制についても一言、苦言を呈しておいた。


「越智さん、僕の周囲に監視要員をたくさん配置したようですが、目立ちすぎますよ。

 我が家の周辺は一応ベッドタウンですからね。

 住民は、余所者に結構敏感なんです。

 それも出没したのは壮年に近い男ばかりで、ダーク系の衣装で用事もないのにうろついていれば、誰でも違和感を感じます。

 そりゃぁ、自衛隊の基地も近いから、自衛隊員の服装には多少は慣れていますが、彼らが私服で、しかも団体さんでごそごそやっていれば、不審者として捉(とら)えられても可笑しくはありません。

 よくよく注意された方が良いですよ。

 因みに、僕の方は、その顔ぶれを全部確認していますので、気にはしませんけれどね。

 アジトと思われる近所のビルに出入りしているのは、全部で49名のはずですけれど、違いますか?」


 越智陸将からは、一瞬間が空いて、若干焦ったような雰囲気で「気を付けよう。」とだけ言って電話が切れたよ。

 その日の夕刻からは、自衛隊員が周辺住民の目に触れるような目立った行動が控えられるようになったようじゃな。


 但し、8月18日には、別途、警察関係者が増えたようじゃ。

 公安警察の連中なんじゃろうが、自衛隊員のように住民に気づかれないよう種々の偽装をしておるな。


 必要も無いだろうに周辺の道路を掘り返しているものもいるし、その近辺の空き地にプレハブの飯場(はんば)兼休憩所が出来ておったわい。

 ふむ、こっちは越智陸将の管轄外じゃろうな。


 儂との接点も無い組織じゃから。向こうから儂や知人に危害を加えない限りは放置じゃ。


 ◇◇◇◇


 8月19日月曜日、今日は政府要人との面談じゃな。

 さて向こうが強気で来るか、それとも儂に協力を求めようとするか、どっちじゃろうな。


 まぁ、行けばわかるじゃろうから、出たとこ勝負じゃ。

 この午前中には、これまでちびちびとやっておった学校の宿題と自由研究を一応終えておいた。


 今日の会談次第では、宿題をする時間や自由研究を手掛ける暇もなくなり、果ては学校に通うのも出来なくなろうからな。

 そうなっても良いようにしておくだけじゃ。


 希望者のみ受講できる高校での夏季講座(8月23日~27日)には元から行かぬつもりでおったから、参加申し込みはしておらん。

 大学受験のための補講なのじゃろうが、儂には不要じゃな。


 ほぼ高校三年までの知識は頭に入っておる筈じゃから、例えば高校を卒業した者と同等と認定される何(・)チ(・)ャ(・)ラ(・)試(・)験(・)(?)を受ければ、多分、飛び級で大学を受験することも可能じゃろうと思っている。

 但し、魔導師たる儂が大学へ行って、そこから得られる知識で更なる魔導を追求できるかどうかは不明じゃな。


 前世と今世では、そもそも思考の歩みというか物事に対する見方、考え方が違うのじゃ。

 確かに科学の力で出来ていることを魔導で再現することも面白かろうが、儂の求める魔導の未知の探求とは違うような気がするのじゃ。


 なんとのぉ、カンニングをして、ズルをしているような気がせんでも無いのじゃ。

 魔導でも先達の業績から得られることは多いのじゃが、飽くまで魔導を極めるための段階としてそれを追承認するだけの話じゃ。


 当該先達の魔導は、儂にも使用できるようにはなるが、多少改良したところで儂の魔導とは言えぬのじゃ。

 今世で得られる知識から派生して、新たなる魔導を生み出したとして、先達の魔導を改良することとさほどの違いは無いのではないかと思うのじゃ。


 それゆえに、知識欲はあれども、大学と言う学び舎(まなびや)で、新たな知見を得たいと強く思うほどでは無いのじゃな。

 まぁ、機会が有れば、進学するかどうかを再度検討するとしよう。


 いずれにせよ、今日は政府要人との折衝じゃ。

 いつも通り、婆ちゃんの手料理の昼飯を食って、部屋に引きこもる。


 家族には夏休みの宿題を片付けるからと言い残し、前回と同様の服装(今日はシャツの色が少し違う)で、部屋にはダミーの人形を残し、部屋の内側から鍵をかけて、午後1時55分には、前回同様に防衛省の武道場に転移した。

 前回と違うのは、「コ」の字型にテーブルが並べられ、そのコの字の空いている部分に儂が座るべき椅子が置かれていることのようじゃな。


 その対面には6名の知らない顔が・・・、いや、二人は知っているな。

 一人は、確か〇×党幹事長の平内浩二衆議院議員で、もう一人は〇×党副総裁の倉田潔のはずじゃ。


 儂もテレビのニュースぐらいは見るでな、この二人が顔と名前を出していた画面を見たことが有る。

 但し、その平内氏と倉田氏の間に欠席があるようじゃ。


 ふむ、今一人はもしや堀内慎吾首相なのか?

 二人よりも偉そうなのは首相ぐらいしか思いつかん。


 そうして儂が座る位置から右手のテーブルには5人。

 左手のテーブルには、前回見知った防衛省幹部の5人、うち一人は越智陸将だから、恐らく右テーブルに座っているのは関連政府機関の長あたりではなかろうか。


 つまりは正面には、国会議員等で、右側に政府役人、左側に防衛省という感じじゃな。

 防衛省の背後には例の記録担当の女性自衛官がいるが、今日は二人じゃな。


 そうして、正面テーブルの背後には秘書か若しくはSPが座っておるし、政府役人の方も背後に補佐あたりがついているようじゃ。

 それと、武道場の四隅には、各二人の制服自衛官が立っているのじゃが、腰に拳銃を装備しておるところを見ると、会場の警護隊というところじゃろう。


 ある意味で物々しい雰囲気ではあるな。

 前回は、武道場の外にはかなりの警備員が居ったようじゃが、内部には一名乃至二名程度じゃった筈じゃ。


 儂が急に正面に出現したので、恐らくは事前に情報は与えられていたにしても、防衛省関係者以外は驚いていたようじゃな。

 まぁ、委細構わず、儂の指定席と思われる場所に座った。


 すると、越智陸将が立ち上がり言った。


「首相が官邸を出たとの報告が十分ほど前にありました。

 現在、此方(こちら)へ向かっている途中であり、ここへ到着するのは、およそ十分後になりますので、皆様にはもう少々お待ちくださるようお願いします。」


 なるほど、やはり正面中央の席には首相が座るわけじゃな。

 多忙な首相が自ら顔を出すともなれば、政府としても重大事としてとらえていることなのじゃろう。


 さて、このことが、どのように作用するかじゃな。

 正面に座っている〇×党副総裁の倉田潔が頬杖を突きながら言った。


「佐島君じゃったな。

 些少(さしょう)の合間(あいま)しかないが、雑談を少し、良いかな。

 儂は、〇×党副総裁の倉田潔というものじゃ。」


「はい、テレビでお顔は拝見しております。

 どのようなお話でしょうか?」


「若いおぬしの考え方を少し聞きたいと思ってな。

 日本と言う国は、当てにはならぬかな?」


「日本と言う国とは、どのことを指していますか、それによって返答が違います。」


「ほう、禅問答に近くなったかな。

 もちろん君が住んでいるこの地の国民全てを含む日本じゃよ。

 その中には老若男女もおれば、様々な職業の人間が住み、政治家も居れば軍人もおる。」


「曖昧な質問ですね。

 どこの政党を支持しているかとの質問ならば、答えやすいのですが、・・・。

 日本と言う国が当てになるかと言えば、・・・。

 そう、危ういというのが一番当たっていますね。

 自然災害に対応する態勢、地球温暖化等将来起こり得る環境の変化に対する態勢、そうして突発的な事案に対応する能力など、かなり未熟だと思います。

 僕がやればできるという話ではなく、仮に方針が決まっても、実行するに足る資金も無いし、基盤整備ができていないというのが実情でしょうか?

 ですから、その意味では将来を懸念しています。

 これで貴方の質問のお答えになりましたでしょうか?」



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