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転生大賢者の現代生活  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2―15 政府との交渉 その二

 鬼との出遭いを簡略化して説明した後で、「鬼を同行しては居ないようだが見せてはくれないのか?」というので、束の間、ドンを出現させた。

 高さが3.5m、体重で2トンを超える化け物がこの武道場に立って現れたなら床が抜けるかもしれぬでな。


 考えてもみい。

 足長約55センチの足の裏の面積は概ね1400~1600平方センチ程度なんじゃ。


 両足で精々が3000平方センチ程度じゃろう。

 そこに集中的に3トンの重量がかかれば、弾力性を持たせた木製の床が持つかどうかじゃ。


 じゃから、ドンには胡坐をかいた姿勢で居ってくれと言って、座らせたまま儂が亜空間から運んで、静かに床に置いたんじゃ。

 それでも、武道場の床がミシミシと音を立てているのが聞こえたぞ。


 流石に鬼の巨体が目の前に出現すると参加者は浮足立った。

 特に、録画と録音役だったのか、女性自衛官は明らかに「きゃっ。」と叫び声をあげていたな。


 ある意味で、見せてくれと言うておいて、怖がるとは失礼な話よのぉ。

 まぁ、何せドンは、強面(こわもて)じゃからのぉ。


 頭に大きな一本の角が生えており、口元には牙が見える。

 幸次郎が幼い頃に秋祭りの縁日で見かけた鬼の面とよく似ているが、あっちはずっと可愛げすぎるのじゃ。


 夜中に一般人が道端でドンと出会ったなら、きっと腰を抜かすはずじゃ。

 まぁ、出席者の動揺も間もなく収まったようで、ドンは早々に亜空間にひっこめたよ。


 直接ドンに興味本位で色々聞かれても拙いかもしれぬからな。

 その後で、次なる質問は、「妖(あやかし)と言うのは、実際にそんな化け物が居るのか?」じゃったな。


 まぁ、確かに存在するということだけは話しておいた。

 儂の亜空間に入り込んでいる奴らには、事前に防衛省の幹部等から請われたなら姿を見せてやるつもりはあるかと聞いてはいるのじゃよ。


 鬼ではドンと宿儺(すくね)が、儂の頼みならばさらし者になってやろうと云うたな。

 妖では、タマ(妖狐、玉藻の前)、グレン(土蜘蛛)、ティア(竜神の化身)は、明確に嫌じゃと言うたが、白狼が主の頼みであれば人前に出ても良いと言った。


 従って、仮に要望が有っても出せるのは、鬼が二体と妖一体だけだったのじゃ。

 嫌じゃと言うのを無理やり外に出すほど、儂も鬼畜(きちく)ではないぞ。


 じゃからどうしても見せろと言うなら白狼を出してやるのじゃが、ドンの姿を見た後では、向こうもそこまで強気ではなかったようじゃ。

 それよりも、儂の力を知りたがったのじゃ。


 まるで子供の様な興味本位の質問じゃが、政府要人と会わせる前に、お偉方も検証をする意味合いで避けては通れぬ質問なのじゃろうな。

 儂も宮廷魔法師団に属しておったから良くわかるが、宮仕えと言うのは間に挟まって結構な気苦労が絶えんのじゃ。


 同情したわけでは無いが、仕方がないからそこで何も言わずにパッと姿を消したのじゃ。

 目の前の防衛省幹部が若干騒ぎ立てる。


「ン、消えた。」


「どこに行った。」


「まさか能力を探られるのが嫌でバックれた?」


「もしや、突然ここに現れたように空間転移なのか?」


「かもしれぬ。

 何せ北海道に張り付けた特別隊からは、対象者が動いていないとメールで定時連絡をしてきている。

 少なくとも昼頃には、ジャージ姿で庭に出て菜園に水やりをしていた当人を確認している。

 北海道から新東京までは直線でも800キロ超だから、それから飛行機に乗っても間に合うはずがない。

 空港にも別動隊を張り付けていたが、彼が現れたという報告が無いところを見ると、やはりテレポートなのだろう。」


 などと勝手にぬかしおる。

 儂は、単に隠形で姿を見えぬようにしただけなのじゃがな。


 このままでは、時間ばかりが過ぎて行くじゃろうから、儂は姿を隠したまま声を出した。


「僕はここに居ます。

 チョット姿を消しただけです。」


 皆が声のする方向を見ながら、儂の姿を追い求めるようにあちらこちらに視線を向けているが、見えないものは見えないのじゃ。

 彼らにもそれが分かったところで、姿を現した。


 最前の姿を消した場所から、儂は全く動いてはおらんのじゃ。


「今のは、単に姿を見えなくする魔法のようなものです。」


 佐々木統合幕僚長が、勢い込んで尋ねて来た。


「他には何ができるのかね?

 因みに君が北海道から短い時間で移動してきたのは、テレポートなのか?」


「まぁ、巷(ちまた)に言うテレポートのようなものですね。

 行く場所が分かっていれば、短時間で移動が可能です。」


「しかし、君はこの防衛省には来たことが無いのじゃないのかね?

 にもかかわらず、テレポートができるとは・・・。」


「越智陸将の宿舎を訪ねた時も、今回ここに来る前にも事前に下見をして、場所を確認していましたから、すぐに来れましたよ。」


「で、他には何ができるのかね?」


「余り、能力を知られるのは僕のデメリットになるので明かしたくないのですが、佐々木さんはどんな能力を見たいのですか?」


「そりゃぁ、息子たちが観ているアニメなんぞでは、魔法のような超能力が多々あるようだが、・・・。

 ここに来るまで、そんなものが実際にあるとは思えなかったんだが・・・。

 現実に見せつけられるとなぁ。

 そんな中でも、特に我々が気にしているのは、君がどんな攻撃能力を持っているかということなんだ。」


「ふむ、気にされているのはそういうことですか・・・。

 では簡単に申し上げておきましょう。

 僕がその気になれば、この防衛省どころか新東京の半分以上が一瞬で吹き飛ぶような力を持っていますよ。」


 その途端、武道場が静まり返った。

 誰しもが、そこまでの能力を想定していなかったに違いない。


 統合幕僚長が冷や汗を拭きながら、尋ねて来た。


「どうも・・・・、君は、鬼や妖以上に危険な人物のようだが、・・・。

 そんな力を高校生の君がどうやって手に入れることができたのかな?」


「それにはお答えできません。

 僕にも守るべき秘密はありますから。

 あなた方に何でもお話しする必要は無い筈ですが?」


「ふむ、ラノベのようにある日突然異世界に行って大きな力を持って帰還した勇者のような話なのかね?」


 ふむ、まぁ、似たようなものではあるが、前世で大魔導師じゃったことは言う必要も無いじゃろう。

 特に幸次郎の記憶は残っていても、その意識がほぼ無い状態のことを家族に話されると、家族が悲しむことになる。


「アニメの見過ぎでは無いのですか?

 いずれにしろ、僕からはお答えしかねます。」


「ふむ、君の要求は、鬼達の餌場として異界の接続点から異界に鬼を入れることのようだが、そのことで我々に対して見返りはないのかね?」


「ほう、国防省の現役トップの方が見返りを要求されるとは・・・。

 失礼ながら、防衛産業と癒着しているのではないですか?

 僕としては、特段何もしませんよ。

 敢えて言うならば、異界からモンスターどもが出て来ないように間引きをするだけの話ですかね。

 越智陸将にも伝えたはずですが、お願いを聞いてくれないなら、日本以外の国にある異界に行って、鬼達を開放します。

 もう一つ、彼らに勝手にしろと言って、人間界に放つのも最終手段としてはありでしょうかね。

 僕としてはそんなことをしたくないので、お願いする必要も無いのに、こうしてやっているだけなんですけれど・・・。

 僕の考え方って、おかしいでしょうか?」


「今の言動は、我々や政府に対する脅しと受け取られる恐れがあるから、注意をしたまえ。

 政府要人にもそんな態度をとるなら、君の要求は通らないばかりか、君の家族がどんなことになるかわからないよ。」


「おや、今度はそちらが脅す番ですか?

 けんか腰ではまとまるものもまとまらないのですが、そちらがその気ならそれでも結構ですよ。

 お断りしておきますが、僕の家族に対して何らかの手出しをするようならば、あなた方の家族の安全も保障されないと思ってください。

 ある程度は僕も許容しますが、必要とあればこの国そのものを潰しますよ。

 無論、僕の個人情報を公開するようなことをしたなら、僕の家族に手出しをしたものと同等と見なします。

 お間違えの無いように申し上げておきますが、僕は15歳ではありますが、独り立ちが可能であり、外国でも生きて行けるだけの才覚はあります。

 何処の政府も似たり寄ったりでしょうから、日本でだめならどこの政府にも依存しません。

 その代わりに、日本は僕の敵になるという風に理解し、あなた方や僕の家族から日本を助ける様にとの依頼があっても無視します。

 と言うよりも、僕とは一切連絡が取れなくなるでしょう。

 スタンピードの類が起きなければ良いのですけれどね。

 あと一つ、二つ皆さんに情報を教えておきましょう。

 一つは、世界中で確認されている異界への接続点を国連が集計して発表していますが、実際には二つほど知られざる接続点が存在します。

 もう一つは、こちらの世界にも存在するものではあるんですが、皆さんに知られていないものがあり、異界の方が多少濃度が高いので、その何かが流れて徐々にこちら側の世界に浸透しています。

 その良く分からないものが、仮に向こうの世界と同等のレベルになった場合、向こうでしか本来生きられないような生物や病原体が、こちらの世界へ大手を振って出て来れるようになるかもしれません。

 単純な話、向こうのモンスターがこちらへ余りやって来ないのは、例えば酸素濃度が多い地域に住む者が、いきなり高山に登って酸素不足になるようなもので、余りこちらに来たいとは思わせない何かが有るのでしょうね。

 野津幌での惨劇は、たまたま接続点付近にいたモンスターが、目の前に突然現われた餌がこちら側に逃げたので追いかけてきたわけで、その後も付近に同じ餌が居たので本能で食べただけの話でしょう。

 彼らは、基本的に何時でも腹を減らしていると思った方が宜しいでしょうね。

 さてさて、交渉はこれでおしまいでしょうか?

 次回は、政府要人との面談を準備されておられるようですけれど、失礼を承知で申し上げるならば、誰が相手でも僕の方から述べることは余り変わらないと思いますよ。

 ですから、次回の面談を中止いたしますか?」


「いや、セッティングは、済んでいるので今更変えられない。

 ただ、その、なんだ。

 政府要人に対してケンカ腰で臨むのは辞めてほしいんだが・・・。」


「はぁ、まぁ、心に留め置いておきましょう。

 但し、正当防衛では無いですけれど、ケンカを売られたなら、買いますよ。

 どうせ、この面談の様子はビデオに撮ってあるみたいですから、予め、政府要人の方にも見せておいてください。

 そうすれば、向こうも、僕にどのように応待すべきかを考えるでしょうし、場合により、向こうから面談を中止するかも知れませんしね。」


 余り良い雰囲気ではなかったが、一応の第一回の面談は終わった。

 儂は、元々前世から人付き合いは悪かったので、性格として、相手に迎合するということが中々出来んのじゃよ。


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