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転生大賢者の現代生活  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2―10 鬼とともに その四

 その後、近畿一円と、中国・四国地方を巡り、奈良県で前鬼(ぜんどうき)(赤褐色の鬼)、後鬼(みょうどうき)(紺色に近い濃い青色の鬼)を、京都府で瞋恚蓋(しんいがい)(青鬼)を、和歌山県で掉挙蓋(じょうこがい)(黄鬼)を、岡山県で睡眠蓋(すいめんがい)(緑鬼)を、高知県で塵輪鬼(じんりんき)(茶色)を、変わったところでは、広島県と島根県の県境付近で白い鬼を、また大阪と奈良県の県境の生駒山地で土蜘蛛と言うかアラクネのような(あやかし)が居た。

 塵輪鬼、白い鬼、それに土蜘蛛は、いずれも役小角(えんのおづぬ)とは関わりが無いようじゃ。


 いずれも人間を恐れて山中に隠れ住んでいたらしい。

 塵輪鬼と土蜘蛛は、かつて討伐されたことが有るらしく、討伐後数年で蘇ったようじゃ。


 特に、塵輪鬼については、朝鮮半島から渡って来たとの伝承もあるようじゃが、本人に聞くと朝鮮半島と言うよりは、更に北方の渤海(ぼっかい)から朝鮮半島を経て出雲へ渡り、岡山、伊予を経て和歌山にまで至ったらしいが、討伐された後に蘇ってからは、四国山地に隠れていたようじゃな。

 一方のアラクネ擬きの土蜘蛛は、生駒山地の地中に潜っていた引きこもりじゃ。


 いずれも半冬眠状態から地脈の変動により目覚めたようじゃ。

 程度は違うものの、いずれも覚醒してから空腹だったようで、異界のモンスターを討伐してそれぞれに食していたよ。


 因みに、それぞれの呼び名を前鬼は「ゼン」、後鬼は「ミラ」、瞋恚蓋を「メイ」、掉挙蓋を「ジョウ」、睡眠蓋を「スイ」、塵輪鬼を「ジン」、白鬼を「ハク」、土蜘蛛を「グレン」と名付けた。

 グレンは、先日見た米国映画の俳優でグレン何某に顔つきが何となく似ておったからじゃが、正直なところ名付けの才覚は儂には無いのぉ。


 人間と比ぶれば、いずれも結構な大食漢じゃが、中でもタマ、ジン、ハク、グレンは比較的小食のようじゃ。

 但し、ジンは身体を巨大化することができ、その際には大量の食糧が必要になるとのことじゃ。


 最終的に、九州と沖縄にも行って調査はしたが、「鬼」の気配は察知できなんだ。

 その調査行を終えて九幌の我が家に戻る途中で、何故か別の存在を見つけたんじゃ。


 一つは秋田県の多澤(たざわ)湖に居た竜神の化身じゃな。

 今一つは、北海道の庸市(よういち)にあるHUGO洞窟の近隣山中に潜んでいた白い狼じゃ。


 竜神の化身は、向こうから儂に接触してきた。

 儂が飛翔しているところへ、湖から飛来してきたんじゃが、姿形はまぁ若い女子じゃな。


 じゃが、魔力とは異なる巨大なオーラを放っているから、出現した時点で儂でも異常な存在として用心したぞ。

 この存在とまともに戦えば、儂が勝てるとは限らんのじゃ。


 前世・現世を通じてこれほど警戒感を持った存在は無かったのぉ。

 儂は、前世でドラゴンとも戦った経験があるが、この目の前の存在は怒らせてはならない存在だと直感したわい。


 こちらはビビっておるのに、向こうは親しげにすり寄って来るんじゃから困ったものじゃ。

 この竜神の化身は、自ら『竜神の化身でティアと言う』と名乗ったわい。


 何やら面白き存在が空を行くので近寄ったという。

 ほんの少し空中で思念でのやり取りをしただけなのじゃが、ティアは儂について行くというのじゃ。


 因みにティアは、妙齢の女性じゃぞ。

 そんな存在を我が家に連れて行けるわけがない。


 ティアを連れて行けば、絶対に家族から根掘り葉掘り聞かれることになる。

 家族皆が納得できるような説明をするという自信は、儂には無いぞ。


 まぁ、近い将来において、いずれはそれなりの人物に儂の素性若しくは能力を知らしむる必要はあるが、それは決して今ではない。

 儂が断ると、ティアはあっけらかんと言った。


「別にあなたの家族に私の姿を見せる必要は無いでしょう。

 私は、貴方が持っているその特殊空間の中に居ればいいじゃない。

 中々見かけられない存在も、その中に居るようだから、きっと楽しくお話しできると思うし・・・。

 何かあったら私の名を呼んでね。

 呼ばれるまでは、あなたの特殊空間にいるから。」


 そう言い放って、ティアは、勝手に儂の亜空間の中に入り込んでいった。

 いや、その、なんだ。


 儂の亜空間に出入りするには、本来であれば儂の意思決定が必要なんじゃが、そんなものを無視して入り込んで行ったわい。

 竜神の化身と言うからには或いは神霊的な力が有るのやも知れぬな。


 泣く子と何とかには勝てぬと言うが、儂にとってティアは、手を出せぬ存在じゃな。

 仕方がないで、ティアの思うがままにさせておこう。


 もしかすると、ティアが儂らの手助けになってくれるかもしれん。

 魔法は使えずとも、方術でも扱えるなら大きな力にもなろう。


 そう言えば、前世のドラゴンは炎のブレスを吐くものも居ったのじゃが、ティアはどうなのじゃろう?

 中華風或いは和風のドラゴンならば、四つ足が有って天空を舞い、雷と雨を操れたような気がするが、あれは寓話なのか?


 暇な時に、ティアに確認してみようと思う儂じゃった。

 もう一つ、庸市近くの山林に居った白狼は、最初随分と剣呑とした雰囲気じゃったが、思念で話が通じると、なぜか懐いたな。


 こ奴も腹をすかしていたので、最寄りの仲間山の異界に連れて行き、餌を探してやった上で、草食恐竜を食べさせた。

 草食恐竜に襲い掛かった際、この白狼はジンと同様に巨大化できる妖とわかり、十分な戦力になりそうだ。


 白狼は、ラノベに出て来るフェンリルをイメージさせたから、「フェン」と名付け、亜空間に入ってもらったよ。

 いずれにせよ、取り敢えずの全国行脚(あんぎゃ)により、ドンの仲間たちの回収は一応済んだので、早急に国防省との交渉を検討せねばならん。


 ◇◇◇◇



 色々と異界関連で動いていると時がたつのが早いのぉ。

 夏休みが始まってから、もう11日目、異界の特異点が出現してから5日目になる。


 8月末までが夏休みじゃからまだ余裕はあるのじゃが、この分では自由研究の時間が無いかもしれぬな。

 まぁ、いよいよとなれば、異界にカメラでも持ち込んで、色々な写真や動画を取り、それを題材に自由研究とでもするかと安易に考えておるんじゃが、やはりそんな写真が出回ると政府筋からしかられるやもしれんのぉ。


 それよりも防衛省のお偉方とどのように接触を図るかじゃが、まともに行ったのでは、門前払いが順当なところじゃろうな。

 一応調べたところでは、防衛省の越智陸将(54歳)が異界調査の特別部隊の責任者のようじゃな。


 その下に陸将補1名、一佐等の佐官が18名おって、各地の現地指揮官に任ぜられているようじゃ。

 因みにこの特別部隊は、防衛省特任局という組織が管理し、その局長(ボス)が越智陸将になっておるようじゃな。


 越智陸将の住まいは、新東京都北区須賀谷にある防衛省宿舎で、妻子三人と一緒に住んでいるようじゃ。

 狙いどころは、取り敢えずこの宿舎での非公式会見じゃろうな。


 まぁ、防衛省宿舎の中でも高級官僚と言うか、少なくとも左官級以上の者が入っておる宿舎なので、それなりに警戒体制もあるようで、この宿舎の最寄りに交番もある。

 地方都市では常時人がおる交番は珍しいのじゃが、この交番には常時警察官が駐在しているようじゃ。


 儂の能力をもってすれば、越智陸将と秘密裏に会うことなど朝飯前じゃが、問題は説得方法じゃな。

 少なくとも儂の力を見せつけ、自衛隊が進んで協力する体制を造らねばならん。


 最初に越智陸将を落として、その上で他の将官や政府高官も納得させるしかあるまい。

 但し、儂も前世では、国王にええ様に利用された経験があるから、それに(はま)らぬよう十分に注意はせねばならん。


 必要な人助けはするが、少なくとも国の戦力となって他国への侵略に手は貸さぬ。

 往々にして攻撃魔法の使える魔導師というものは、戦争に狩りだされるのじゃ。


 前世では、儂の所属する王国が侵略することは無かったものの、複数の隣国が、入れ代わり立ち代わり、たびたび攻め入って来たので、儂も魔導師を引き連れて戦場に出向き、多くの敵国兵士の命を奪ったことが有る。

 ある意味で悲しい思い出じゃが、互いに殺しあうのが戦場の掟ならば、参戦する以上は敵を殺さねばならなかった。


 殺さねば殺されるからであり、対処を誤ると味方の兵士が死に、場合によっては無辜の民が殺されることになるのじゃ。

 従って、心を鬼にして大量殺戮も演じざるを得なかったのじゃ。


 幸いにして、この国は他国への侵略をしないと国是(こくぜ)で定めている。

 どこまでそれを貫けるかはわからぬが、儂が自衛隊に協力する以上はその国是を遵守してもらうしかない。


 それから二日ほどは、普段通りの生活をし、夜間に亜空間の中で鬼達とも協議をした。

 ティナも傍に居ったが、にこにこして聞いてはおっても、口は挟まなんだな。


 ティアは、見た目20歳そこそこの美人じゃぞ。

 出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでおるというナイスバディじゃ。


 身長は、幼馴染のかおりよりもやや高いな。

 髪はロングにしており、服装は普通の洋服のように見えるが、儂の感覚ではおそらく幻影じゃろうと見ている。


 魔導でもそのような事ができるが、生憎と魔導で造った幻影ではなさそうじゃ。

 因みに、会うたびに服装の色とデザインを変えておるな。


 ティナは、亜空間の中で鬼どもとは至極仲良くしているらしい。

 因みにティアは、別格のボス的存在らしい。


 鬼どもの取りまとめ役であるドンとイガ曰く、力比べをせずとも俺達ではかなわん存在じゃと誰しもが認めておるようじゃ。

 いずれにせよ、越智陸将との折衝を始めるべく、8月9日に儂は上京した。


 北海道からじゃと新幹線もあるし、飛行機もあるのじゃが、儂は自前の魔導で行く。

 鬼達の探索行に際して、新東京のとあるポイントに目星をつけておったのじゃ。


 新東京(その昔、賽多摩(さいたま)と呼ばれておった土地らしい)の新たな観光地ともなっておる|Neo Tokyo Spireネオ・トキョウ・スピアの眺望回廊の屋根の上じゃ。

 風邪は強いが、見晴らしは良いし、その上に普通に立っていても誰も気が付きはせん。


 例によって隠形(認識疎外と光学迷彩)のままで空間転移をするから、仮に目の前に誰かが立っていても気づきはせんじゃろうがのぉ。

 但し、空間転移と言う奴は、結構面倒でな、転移先に障害物があると転移が出来んのじゃ。


 その途上に遮蔽物が有っても何ら支障はないのじゃが、転移するその空間に障害物があると転移自体が失敗に終わるし、往復分の無駄な魔力を消費することになる。

 8月9日午後10時過ぎ、暗闇の中、儂は地上から590m上空にあるNeo Tokyo Spireの眺望回廊の屋根に無事降り立っていた。


 目指す防衛省の宿舎は、儂の視界の隅に入っておる。

 再度の空間転移を行って、当該宿舎の屋根部に降り立った。


 大事なところで大ポカをしてしまいました。

 幸次郎が幼馴染のかおりとともに海水浴へ行ったのは7月30日なのに、特異点が出現した空間震が有ったのは7月27日と時間を遡ってしまいました。

 このバグ修正のために、海水浴は2029年7月30日のまま、空間震が発生した日付を2029年8月2日(夏休みが始まってから6日目)と修正させていただきます。

 悪しからずご了承願います。


 By サクラ近衛将監

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