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転生大賢者の現代生活  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2―8 鬼とともに その二

 ドンとともに異界の草原に降りたった儂じゃが、周囲の気配を探ってみたところ、一里程のところにモンスターの集団がおった。

 ここで言う一里は、ドンの知っている一里(飛鳥時代はおよそ500mほど)ではなく、現代?いや近代の一里(3.9キロ)じゃな。


 草原の中で数十匹もの集団でおるモンスターは、いにしえの恐竜で言えば草食系じゃろう。

 肉食系であればウルフ系など様に群れの習性を帯びるものの可能性もあるが、その場合同じところに集団で留まっておることはあるまい。


 ドンを亜空間から出す際に注意喚起としてその旨を告げてやる。

 ドンは、亜空間から出ると同時に姿勢を低くした。


 草原とは言っておるが、かなり背丈の高い草木が生い茂っており、儂の背丈以上に伸びているのでな。

 儂の姿はモンスターからは見えないはずじゃが、モンスターどもがどんな知覚を持っているかはわからぬので用心するに越したことは無いであろう。


「ドンよ。

 この先、8里程先に魔物らしきものがおるのじゃが、わかるか?」


「おうよ。

 数十匹ほど居るな。

 何やら美味(うま)そうな臭いがするぞよ。」


「ほう、ドンも遠方の見えぬ敵が(うかが)えるのじゃな?

 美味そうということは食べられるということか?」


「ふむ、確かなことは云えぬが、儂の堪は、あ奴らが美味いと告げている。

 儂の勘は滅多なことでは外れたことが無い。」


「そうか。

 なれば、この異界の地でドンの餌を得ることが出来そうじゃな。

 なれど、ドンよ。

 高みに空を飛ぶ魔物が居るのは知っておるか?」


 そう、儂らの上空には例の空飛ぶトカゲ、ワイバーンというかプテラノドンというか、翼竜が飛んでおるんじゃ。

 ドンは、体格が大きいから彼奴等の餌とは見做(みな)さなぬかもしれぬが、あるいは儂の身体ならば餌と認識しておるやもしれぬな。


 まぁ、儂を狙って来たならば、即座に丸焼きにしてやるが・・・。


「あぁ、知っておる。

 100丈ほどの高さを舞っておるのが数体おるな。

 流石にあれほどの高みにおるとなれば儂も手を出せぬが、もそっと下に降りてくれば手もあるぞ。

 但し、あ奴が美味いかどうかは臭いも()げぬでわからんわい。」


 ドンの言いようでは、本当に臭いで餌になるかどうかを判断しているようじゃ。

 まぁ、それならば目に入らずとも存在が分かるということじゃな。


 但し、ドンと出会った際は、儂が認識疎外と光学迷彩により姿を消しておったはずなのに、ドンは儂の存在を見破っておったようじゃ。

 しかも、役行者が使う術と似たものと認識しておる。


 流石に千三百年も前の人物についての記事は少なく、今や伝説と化した人物なのでその能力は定かでは無い。

 ただ、伝承としては、海を歩いて渡ったとか、空を飛ぶことができたとの逸話(いつわ)が残っているのじゃが、後の修験道(しゅげんどう)において、そのような術を使えた者が居ないところを見ると眉唾物(まゆつばもの)と思えたのじゃが、その役小角に仕え、若しくは、術をかけられたものが居たのだから、そのような方術師が存在したのは事実なのじゃろうな。


 儂がここでこのようなことを言うのは、オヅヌが使った方術を認識し、同時に儂の魔導に気づく存在が居るということであって、ドンの場合は、あるいは臭いだけではなく周囲の気配を察知できる別の特殊能力が有るのではないかと思ったからじゃ。

 まぁ、いずれにせよ、ドンがこの異界の生き物を餌として食べられるならば、ドンとその仲間の鬼達をこの異界に住まわせることも可能だと言うことじゃ。


 但し、ドン達が、この異界に侵入して来る人間達(例えば自衛隊員)に見つかると、人間たちにモンスターと見做されて騒動が起きることになろうな。

 取り敢えず、この大屋野原演習場の特異点が、切り立った山頂に通じているということで、取り敢えずの調査活動が遅れているのが好条件なのじゃ。


 但し、自衛隊も航空機を所有しておるでな。

 武装ヘリでこの異界の地に侵入してくるとなれば、ドンも見つかる可能性が高いので、早めに自衛隊と交渉せねばならんのじゃが、取り敢えずはドンの捕食を確認してからにするつもりじゃ。


 ドンがこの異界で過ごせることを確認してから次の一手を打つことにしよう。

 で、結果はと言うと、体長5mほどのサイに似たケラトプスの仲間かと思うモンスターを一撃で殴り倒していた上に、そのまま腹を裂いて生のままでそのモンスターを食しておった。


 儂の目がおかしくなったのではないと思うが、自分よりもガタイの大きなモンスターを丸ごと一匹食って、ようやく満腹になったみたいじゃが、ドンの胃袋は亜空間なのか?

 確か、オヅヌの術を真似た儂の魔導て小食にしたはずなのだが、それでもこの大食漢ぶりだ。


 仮に小食の術をかけていなければもっと大量の餌を必要としたということか・・・。

 なるほど、ドンが腹を減らして所かまわず餌を求めて放浪したなら、確かに北海道の野生動物はさほど時を置かずしていなくなるだろうな。


 無論、この間に他のモンスターは逃げてしまっており、残されたのは概ね骨と一部の臓物だけじゃった。

 ドン曰く、残りは食えんことは無いが不味いのじゃそうな。


 まぁ、ドンの強さもわかったし、モンスターが餌になることも分かった。

 で、戻ろうかと思うていたら、血の臭いに誘われたか別のモンスターが現れたのじゃ。


 ドンを連れてその場を去ることもできたのじゃが、ドンが闘志を(あらわ)にしていた。

 久方ぶりに敵と見做せるものに出遭ったので血が(たぎ)ると言うのじゃ。


 どうやら、鬼族は戦闘民族のようじゃな。

 前世において、儂も自衛のためには闘ったが、無駄に命を奪うことはせなんだ。


 但し、前世の騎士どもは、強敵と見るや一騎打ちを挑んでいた阿呆が結構居ったな。

 あれは習性のようなもので死ぬまで治らんじゃろうと思っていたが、ここにもおったということじゃな。


 相手は、何と言うか幸次郎の記憶の中にあるラプトルに似ておるんじゃが、図体がかなりでかいな。

 ジェラシックなんとかという映画に出て来たラプトルは細身で、全長が2~3m程度の身体を有し、俊敏で賢い奴だったはずじゃが、目の前にいる2体のモンスターはその形が似ておるが、体長は5m近くになるな。


 頭の形と歯並びからすると間違いなく肉食恐竜じゃな。

 儂は危険を避けるために、空中に退避したが、ドンはその二匹を相手に戦闘を開始した。


 驚いたことにラプトルに似たモンスターがドンに噛みついても、ドンの身体には一切傷がつかないのじゃった。

 腕に噛みついた奴を委細構わず振り回して地面に叩きつけておる。


 うむ、スケールは違うが大怪獣戦争じゃな。

 それにしても、ドンの身体は、いったい何で出来ておるのかと不思議に思うぞ。


 前世において、初級魔導の一種ではあるが、騎士たちが身体強化の術を使って、身体を強化することがあった。

 しかしながら、身体強化は筋肉を強化するのがメインであって、身体自体を岩のように固くする術ではなかった筈じゃ。


 ドンの場合は、むしろ魔導師が使う対魔導用のバリアに近いかもしれんと思うたわい。

 見たところ、対物理攻撃に対する防御術のようだが、あるいは対魔導用にも使えるのかもしれぬな。


 後でドンに確認してみようと思う儂じゃった。

 結果から言うと、ドンは、5分とかからずにラプトルに似たモンスター2体を倒していたな。


「ドンよ。

 こいつは食うのか?」


「いや、今は腹が減っていないから食わん。」


「なんだ、こいつは不味(まず)いのか?」


「いや、不味くはないだろうな。

 そこそこ美味い筈じゃ。

 じゃが、今食うても左程は入らぬ。」


「ドンは、亜空間とかインベントリは持っておらぬのか?」


「ン?何じゃそれは?」


「一時的に物を別の空間に保管しておくことができる術じゃ。

 ドンはそんなことが出来ぬのか?」


「儂には出来んな。

 オヅヌは、時折何もないところから酒を出したりしておったが・・・。

 コウはできるのか?」


「あぁ、ドンが後で食うというならば、儂が一時的に保管しておいてやってもいいぞ。

 この二匹程度なら入るからな。」


 まぁ、このラプトル擬きならば数百匹でも収納できるが、儂を便利な貯蔵庫代わりと思われてもかなわんから、そこは黙っておこう。

 ドンが保管を望んだから、儂のインベントリへ保管しておく


「で、ドンの同類たちはドンと同じような強さなのか?」


「あぁ、儂と同じぐらいじゃな。

 儂より強いのは、疑蓋(ぎがい)宿儺(すくな)ぐらいじゃろう。」


「疑蓋とは、もしや黒い肌の鬼か?」


「おうよ、コウは、よう知っておるなぁ。

 では、宿儺も知っておるか?」


「ふむ、宿儺は日本書紀と言う古代の書物に出て来るようじゃ。

 どこまで本当かはわからぬが、昔々、飛騨の国に、一つの胴体と一つの頭部でありながら、前後に顔を有し、手足が各四本あった宿儺が居たという。

 その宿儺が近隣で悪さをして、討伐されたと聞くが?」


「あぁ、まぁ討伐はされたが、あ奴は死なぬのよ。

 だから後に蘇って、山中に籠っておった筈じゃ。

 奴が言うには蘇りはできるのじゃが、死ぬときはとても痛いのじゃそうな。

 じゃから、人目に触れぬように隠れておったわな。」


「なれば宿儺もこの世に残っていると?」


「ふむ、おそらくは飛騨の山中に隠れておろうな。

 元々、奴は、儂らほどには餌は必要とせぬからな。

 おそらくは生きていよう。」


 ふむ、古代の妖怪にも近い物の怪(もののけ)達が、今も生きているとはある意味で驚きじゃな。

 ただ、異界からの侵攻を抑えるためには、彼らの助力を得ることが大事じゃろう。


 如何に儂でも、日本国内の数カ所の特異点に対応するだけでも大変なのじゃ。

 仮に、国内15カ所の特異点で恐竜に似たモンスターどもが溢れ出た場合、自衛隊で対処できるならば良いのじゃが、彼らの武器で対処できないとなれば、儂が出張らざるを得ず、その場合でも同時に複数に対処するのは難しいじゃろう。


 まして特異点は日本だけではなく、世界中に400カ所も特異点がある故、それら全てへの対応は絶対に無理じゃ。

 それゆえに、儂は今居る北海道を、いや、日本を優先して守りたいが、それでも手が足りぬ。


 じゃから仲間が欲しいのじゃが、ドンやその仲間が助力してくれるならば物の怪でも構わぬ。

 彼らも日ノ本に棲んでおるなら、自らの縄張りを守ろうとする気概はあるじゃろう。


 或いはオヅヌの後継者として儂を見てくれれば、儂の命に従うものも出て来ると思うのじゃ。



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