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転生大賢者の現代生活  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2ー4 異界の調査 その二

 そうして地球側では全周を覆っている筈のドームは、こちら側では半周だけで、残り半周は開けた空間となっているのじゃ。

 上空を見るとその半周の境界付近がぼやけており、もし、あのぼやけた境界に突入するとどうなるのかがわからぬな。


 概ね半周を境界が取り巻いているので、恐らく元の世界に戻るにはこの境界となっている半周面に向かわねばならないのであろう。

 だが元の地球世界では確かにお椀上の半球だったはずなのじゃ。


 残り半分は一体どうなっておるのじゃ?

 360度分が180度の境界に凝縮されておるのか?


 それとも半分はつながっておらんのか?

 その意味では、真上ではなく少しずれた場所を通過したのが幸いじゃったのかもしれぬ。


 今後は、生身の身体で入る前にモノを投げ込んでから入った方が安全かも知れぬな。

 色々と不明の部分はあるのじゃが、いずれにせよ、各部分がどこへつながっているかはわからないから、儂の場合は入って来たであろう上空から戻ることにしようと思っている。


 しかし、時間の進み方が異なる異界とは言いながらも、ここまで時空が異なるとは思っても居なかったわい。

 下手をすると、時空の狭間に落ちてしまう危険性も考えておかねばなるまいて。


 高度を50mほどにまで落としてみると、空気に毒は無いようだが異臭が漂っておるな。

 ん?そうか・・・。


 幸次郎の記憶にある中では牧場の匂いに良く似ている。

 土の臭いと言うか、家畜の糞尿の匂いではなかろうかと思う。


 そういえば、前世でも似た様な臭いはあったのぉ。

 少々臭くはあるものの、これで死ぬようなことは先ず無いじゃろう。


 周囲を儂のセンサーで探ってみたが、今のところ危険な兆候は認められない。

 で、肝心の魔素の濃度じゃが、地球の側では、目盛りが1.0でゼロ点補正をしていたものが、この異界の中では2.4を示しておる。


 さっきも言うたように、生憎と基準が曖昧なので、明確には判じられないのじゃが、儂の感覚的にはこの異界の魔素が地球側の二倍も有るとは思えないのじゃ。

 飽くまで感覚的なものなんじゃが、精々3割か4割増し程度ではないかと判断しておる。


 そもそも目盛り自体、儂が適当に付けたものじゃから当てにはならんのじゃ。

 但し、この2.4という数値がこの異界の初期値として、移動しながら異界の魔素の濃度変化を見るつもりではある。


 記録自体は、集積回路を利用した魔道具で自動的に保存されるようにしておるのじゃが、それでも、自分の感覚で変化が有った場合に、その都度確認するつもりではいるのじゃ。

 上空から見える植生は、地球側とはかなり違って見えるのぉ。


 未だ行ったことは無いのじゃが、雑誌に掲載されていたアフリカ辺りのサバンナに何となく近いように思えるのじゃが、全体的に灌木のような低木と、雑草が広がっている草原地帯じゃな。

 地面に若干の起伏はあるものの、全体的には緩やかな平地だ。


 地球側の道路みたいな明確なものは地上には見当たらないが、灌木と灌木の間を動物が踏み荒らした痕跡があるし、こんもりとしたフンもある様なので、かなり大型の動物が棲息しているのは間違いないようじゃ。

 少し異界の奥深くへ飛んでみると、体長が12~13m程度の恐竜を発見したわい。


 数十頭の群れを作っており、頭頂から後方へ伸びる鶏冠(とさか)がある。

 儂というか、幸次郎には、この恐竜と似た様な奴を恐竜図鑑で見た記憶があるのじゃ。


 確か、パラサウロロプスとかいう名のはずじゃが、形は全体的に似てはいるが細部が違うようにも思えるな。

 鶏冠が横に大きく広がっておるのと、尾が太く長い。


 儂の気の所為かも知れんが、その分、胴体を支える脚も微妙にでかいような気がするのじゃ。

 色はサイのような灰色で、目立つ色合いでは無い。


 四足歩行じゃが、時折後ろ脚だけで立っている奴が見かけられるのは、眼高を高くすることにより周辺の危険を探っているのかもしれぬな。

 食性は草食のようじゃが、仮にあの体躯で速度を上げてぶつかってこらられると、ちょっと大変じゃな。


 間違いなく体重は6トンを超えておるじゃろうと思うから、ぶつかれば大型トラックでもひしゃげてしまいそうな気がするわい。

 そうして奴らが周囲を警戒しているということは、奴らの敵も居るということじゃろう。


 こんな奴らが集団で街の中に現れたら・・・、まぁ、パニックじゃろうな。

 体高は、5mほどもあるように思える。


 全体的に幸次郎が動物園で垣間見た象よりもはるかにでかそうじゃ。

 こ奴らを襲う化け物がいるとするなれば、ティラノザウルスのようなヤツがいるのかな?


恐竜図鑑に掲載されていたパラサウロロプスによく似た恐竜(?)の群れを引き続き空中から観察していた儂じゃが、突然、開けている異界の上空から飛来するモンスターの気配を感知した。

 遠目(とおめ)ではあるが、あれは、四肢を持つドラゴンではないな。


 ラノベで云う《《ワイバーン》》という奴ではないかと思う。

 全体として翼手竜若しくは翼指竜と呼ばれるものに似ているが、恐竜図鑑のプテラノドンと異なるところは、頭部が(くちばし)風ではなくトカゲ風であることじゃろうか。


 また、英国の寓話(ぐうわ)に出て来るワイバーンと異なるのは、尾の形も普通にトカゲじゃと言うことか?

 寓話では、脚は(わし)で、尾は蛇の頭と言う表現もあるのじゃが、翼部分の鉤手以外を除いては、大きなトカゲの前足の代わりに翼がついている感じじゃな。

 

 まぁ、空飛ぶトカゲと言っても差し支えあるまいて。

 但し、でかいぞ。


 頭頂部から尾の先端までは、12mほどもありそうじゃし、翼を広げている状態では翼の長さは20mほどもあるのではないかと思われる。

 但し、この空飛ぶトカゲでは、群れているパラサウロロプス擬きを襲うことはできまいな。


あの大きさと翼では重たい獲物を運び去ることはできまいと思うのじゃ。

 尤も、彼奴らの飛行がそもそも魔法に由来するもの、例えば、重力操作などであれば、脚で掴めるものなら相当な重量でも運べることになるから、空からの襲撃もあり得るじゃろうな。


しかしながら、ワイバーン擬きは、群れの上空を舞っているだけで、一向に襲撃しようとはせぬな。

群れには比較的小型のパラサウロロプス擬きもおるのじゃが、それでも重量は1トンは越えような。


 可能性があるとすれば、近くにいるかもしれないより小型の恐竜を狙っているか、若しくは他の大型捕食動物が襲撃した後で残った遺骸を(あさ)スカベンジャー(死肉漁り)やもしれぬな。

 ところで、この恐竜と言うか、モンスターというか、以前テレビの実況中継では、この異界から出て、地球世界へ出現していたものもあったな。


それがために、周辺に居た者達がかなりの数捕食されるなど相当の被害を生じたはずじゃ。

 じゃから、奴らは出ようと思えばこの異界から出て来れるということになるのじゃが、何故に奴らは出て来ぬのじゃ?


 まぁ、世界的な平均値からに見て日本と言う地にこの異界が多数出現しておるわけで、その理由も今のところ判然とせぬのじゃが・・・・。

 この異界が弱肉強食の世界であるとしたなら、弱肉が集まっておるはずの日本側へ強大なモンスターが侵入してきても何らおかしくは無い筈じゃ。


 ところが、儂の知る限り、北広ノ島の特異点のドームから出てきたのが一例だけなのじゃ。

 あの際は、男女二人が無理やりドームへ侵入し、五分ほどして、男だけがドームから逃げ出してきたのじゃが、その後を追いかけて来た恐竜にパクンチョとされたわけじゃ。


 あのように餌と言う人参を目の前にぶら下げられねば、敢えて異界からこちらの世界へは出てこようとしないのかどうかじゃな。

 もし、そのような傾向があるとしたならば、何が原因なのかじゃ。


 万が一。さしたる原因も無しにこちらに来ないとすれば、いずれかの時点で大量の恐竜がドームから湧き出る可能性もある。

 ラノベで云うスタンピード(まが)いのことが起きては、如何に自衛隊と言えども対応できなくなる恐れがあるのぉ。


 事後の機密報告書によれば、自動小銃等の携行火器の類は余り役に立っていなかったようなのじゃ。

 ロケット弾や戦車砲等の場合はかなりの被害を与えたようじゃが、それでも一発や二発では仕留められなかったようじゃ。


 自衛隊が使用した弾薬は、報告書によれば戦車砲弾で42発、ロケット弾で32発、携行型ジャベリン発射装置で10基を使ってようやく息の根を止めたようじゃ。

 仮に同じようなモンスターが百匹も出現すれば、たちまち自衛隊の弾薬は枯渇する可能性もある。


 戦時ならばともかく、平和に慣れた日本では予備の弾薬量は少ないらしいのじゃ。

 陸海空を含めて、三回戦分の弾薬が有れば上等のはずじゃ。


 従って、それを使い切れば自衛隊も役には立たんと言うことじゃな。

 儂も戦は好きではないが、多数の命がかかっているのであれば、好き嫌いを言うている場合ではなかろうて。


 政府も予備費を流用して備蓄弾薬を増やし始めているが、すぐに増産できるものではない。

 その昔、日露戦争の頃、大陸の最前線では、弾薬が不足したことが有った。


 当時の内規では砲一門につき、年間に砲弾百発しか割り当てが無かったのじゃ。

 然しながら強国ロシアは、数倍の規模の砲兵隊でバカスカ撃ってくるものじゃから、それに応じて数分の一でも撃ち返していると、たちまちのうちに持って行った弾薬が枯渇しだしたのじゃ。


 前線司令部からは本国に至急に弾薬を送れとの催促が来るものの無い袖は振れん。

 当時は逢坂(おおさか)に弾薬工場があったらしいが、一年での納入量が決まっている以上、そんなに在庫は持っていない。


 オーダーされてから造るのじゃから、量産が出来んのじゃ。

 ましてや設備投資もそれまでにしていないから急に生産量を増やせと言っても出来んのじゃ。


 おそらくは、最新の兵器の弾薬等を生産している大企業でも、今現在、似たようなことが起きているのじゃろうな。

 いずれにせよ、ラノベで云うスタンピードのような現象が起きないという保証が有ればよいのじゃが・・・。


 或いは、魔素の濃度の差に恐竜が出て来ない理由があるやもしれぬ。


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