第366話 葡萄畑発展譚(5)
兄はサラダを作り終わったあと、どこぞから取り出した太いアスパラを取り出した。この村の人数を網羅する量だから、結構な量がある。
根元の方をぐるっと皮を剥き、固い部分をなくす。
「これ、シラタマで見つけたんだけど、まるでアスパラだろ~?」
「本当にアスパラだね。どうやって見つけたの?」
「山に地生えしてたの」
「地生え?!味は?!」
「結構美味い、グリーンアスパラ」
ってことはおがくずをかけたり日に当てずに育てればホワイトアスパラもできるというわけで。
「今回は焼いたアスパラを塩で食べてもらうから、結構あっという間にできるけど冷めるともったいないから、順番に出していこうか」
「じゃあもうみんなテーブルについてもらう?」
「そうだな、そうしよう」
テーブルウェアのセットはイオくんとアオくんがいつの間にか終わらせている。そして魔女さんと魔法使いさんは何の手伝いもしないでそれぞれキャンプチェアでゆっくりしている、それぞれ別の場所で。前よりは多少ましになったものの、魔女さんはミーティング以外では積極的な接触を避けてはいる。切り分けた記憶はほぼ戻した状態ではあるけれど、何かしらの記憶を魔法使いさんが握ったままなのは、これからどうするつもりなんだろう。
そんなことを考えながらシチューをどんどんついでいく。食堂のようだな~、と思いながら給仕に徹していた結果、全て食べ終わり落ち着くまで大体2時間ほど要した。それにしても働いていないメンバーは食事をするわけでもなく、ただ状況を観察しているだけで平気なんだなあ、お腹空かないのかなあ。別にあの二人に何かしてほしいとか思ってないから、先に食べてくれていてもいいのに。いや、私たちと食べたいのかな?そう思っとこうかな。
「皆の者ご苦労」
「魔女さん、何もしてないじゃないですか」
「それはコイツも天も虹竜たちも一緒じゃないか」
魔法使いさんを一瞥しながらそんなことを言っている。そういえば天くんたちを忘れていた。タツイさんとイヌイさんも一緒にいるはずなんだけど、ワイナリーに。
「じゃあ、呼びにいってきますか」
「僕も一緒に行きますね」
「ありがとう」
野外レストランを兄とイオくんに任せ、向かう。
大体において音沙汰がなく静かな状況というのはロクなことがない。それは転写される前のういの行動で知っている。大人しいとおもったら大体何かしらのいたずらをしているんだ。
「お腹すかないんですかね?」
「なんか、夢中になってるんじゃない?何かに……」
「兄さんの料理のにおいだってわかりそうなものなのに」
「ほんとにね」
大体10分弱ぐらい歩いたところで、ワイナリーに到着する。
「天くーん、ごはんだよ?」
扉を開けると、さっきの樽倉庫のあたりに電気がついていた。正しくは魔石パワーによる点灯なので電気ではないのだけれど。そこに居たのはさっきここに置きっぱなしにした本のワインラック部分を壁に拡大投射、樽のサイズに合わせ微調整していたのかな?投射しているのは閃電。閃々はその投射にあわせラックをまるで3Dプリンタのように重ね上げていく。
そしてその技術でくみ上げたのだろう樽ラックがすでに4つはある。
ちょっと呆然とした後、タツイさんに話しかけてみる。
「3人が突然始めたんですよね。みんなをびっくりさせよう、とか言って。なんの技術なんですかこれは」
「多分あの巨大な女性2人の魔法ですね」
「こんなでたらめな魔法あるんですね……」
「そもそもこの建物もあの2人の魔法ですよ」
「え……えええ?!何なんですか一体……」
「理解しがたいものは、そういうものとして認識すると楽ですよ」
「そういうものですか?」
「そういうものです。ところで、お腹すいていませんか?今このワイナリーとミアカ村の間のあたりで野外レストランみたいなことやっているんですよ。料理人やってる兄が」
その言葉でタツイ夫妻、イヌイ夫妻の表情がかわる。兄の食事の魅了もとい味の虜だったか、それはそうか。
「ここは見ておくので、皆さんは食べにいってきてください」
「いいのですか、ありがとうございます!」
そう言うと4人は速足で倉庫を後にする。そのウキウキ感を底上げしているのは、空腹なのか兄なのかはたまたその両方か。
「アオくんこれって」
「キリがいいところまでいかないと、ずれますね」
「大体これから……」
「来てから出来ていく速度から考えるとあと……20分ぐらいで1つ出来上がるでしょうか?」
「わかった。これ中断しずらすぎる作業だから、イオくんに連絡打っておいて」
「ですよね。なんか今まで傍観していたというのに、この時間で分かりやすく怒る師匠が目に浮かぶんですけど」
「……奇遇だね、私もだよ」
魔女さんだけではない、多分これ、魔法使いさんも暴れる。そっちは兄に任せておこう。自分のターンが来たタイミングでなにか思うように言ってないと機嫌がちょっと良くなくなるタイプとみている。追加のデザートを要求され、食べたら満足して静かになるレベルの不機嫌。いや、これがもしかしてフキハラというやつか?!
そして私とアオくんが待機すること20分、作業が終わって頬を紅潮させた閃々と閃電が天くんに抱き着いたところで、3人は私たちに気が付いた。
正直いって、とても気まずい空気が流れたのであった。
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