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異世界の君、復興物語 ~狩猟技術と農家の知恵でお国復興しちゃいます~  作者: ezodate
第20章 葡萄畑発展譚

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第364話 葡萄畑発展譚(3)

 [木菓子鋏きがしばさみ★★★★★★]はレア度が高いだけに、銘品というか逸品というかそのレベルのものだった。収穫に最適であるものだけに反応し、切るようになっている。しかもどうも摘果にも使えるようで、果実の成長はもとより、果樹の状態を保つためにも使う事が出来る。

 この骨董品を入手した経過について、魔法使いさんが断片的に思い出したことといえば「ダンジョンの中で襲ってきた樹木系モンスターを一掃したときにたくさん落ちた。以上」ということらしく、どこのダンジョンだったかも全然わからないとのこと。もうこれ、攻略サイトみたいにどこの何からドロップしたっていうのが鑑定か何かで表記されたらいいのに。


「いやーデッドストックになってたから、使ってもらえると嬉しいよ。全部寄付するよ!!全部!!」


 本当ににっこにこ笑いながら、不良在庫を吐き出して喜んでいる人みたいになっている。高ランクドロップであればあるほど市場価格を壊してしまうからおいそれと流通させるわけでもなく、狩場についても気まぐれであるから「何かが欲しくてどこかへ行く」ことはあっても、「仕入れのために狩りに行く」という志向はないので結局倉庫に突っ込んどくことになるっぽい。魔法使いさんにしろ魔女さんにしろ、一体何をどれだけ持っているものだかわからないけれど、私にちょうどいい武器はそのうち譲ってほしい。マジで。


「じゃあノリ、その木菓子鋏、ここ以外でも使う可能性があるから、とりあえず4本、ミアカ村ワイナリーに置いていいか?」

「残りは?」

「チーズの倉庫で預かって、ちょうど作業が必要になった現場で集中的に使いたい」

「別にいいですけど。私のところに置いておいても使いませんし?あげますので自由に使ってください」

 

 こんなに有用なアイテムとしか思えないのに、厄介払い感が否めない。正直、この鋏の系統鋏がドロップするモンスターをぜひ知りたいぐらいなのに。狩れるかどうかは別として。そして、ここまでの間魔女さんは無言でどこからか出した椅子に座っている。因縁の人物が目の前にいるがために、近寄りたくない、話したくない。でも居なきゃいけないみたいな雰囲気を出しているから正直話しかけづらい。

 アオくんとイオくんは畑にとっかかるべく鋏を分け与えられスタンバイ。天くんと閃々と閃電はまだワイナリーの樽置き場のあたりからこっちにまだ来ていない。


「じゃあ、私が送った収穫見定めポイント映像はあるけれど、きっと [木菓子鋏きがしばさみ★★★★★★]の声に従った方がちゃんと収穫できるから、参考程度に定めて作業して。倉庫直結サコッシュは、収穫したぶどうの品種ごとに振り分けられるように設定してあるから、どんどん放り込んでいって大丈夫だよ」

「それならば、今年作ったこのぶどう園全体を見ても割とすぐ終わるかも?」

「……普通ならかなりきつい作業になるんだろうけど、魔法の力があるから……どうかなあ」

「まあ、やってみたらわかるんじゃない?」

 

 そう言いながらタツイさん、イヌイさんにも鋏を貸し、4種の葡萄畑にそれぞれ立つ。タツイさん、イヌイさんはどちらも魔法使いさんと兄の迫力に負けて、無言で頷くことしかしていないのでちょっと手加減してよ兄、と思ってみてしまう。


「じゃあさ、とりあえずどんな感じで鋏が使えるのか、実験してみよう!」

「そうですね、やってみないことには」

「あ!これすごい!皆さん早く鋏持ってみてください」


 最初に使ってみたのはなんとイオくん。イオくんの声掛けにより揃って鋏に指を通し、葡萄を見るとなんてことでしょう。ステータスボードが目の前に展開。収穫しどきのもの、まだのもの、傷んでいて適さない部分、それがすべて目の前でアナライズされたかの如く表示される。

 

「なんだこれ……」

「ノリ、お前がこれドロップした時点では」

「ただの有能な鋏、だったと思いますよ。【ステータスボード】に展開された覚えはありませんね」

「今までドロップ武器のアップデートに遭遇したことって……」

「初めてですね」


 各々の【ステータスボード】越しで葡萄を見ながら収穫作業を開始しながら、そんな会話をしている状態。これ、シンさんにも報告してあげたら喜ぶかもしれない、とか思いながら黙々と作業する。これ、何かにメモしとかないと伝えるの忘れるな確実に。

 そこで沈黙していた魔女さんが口を開く。


「ドロップ品のアップデート、気づかなかったのはお前の手落ちじゃ。該当アイテムを所持していた場合、【ステータスボード】に「アップデートのお知らせ」という通知がくる。見てたらわかる、全く確認した記憶もないじゃろ」

「えっ」


 魔法使いさんが口を押えて蹲る。これ、指摘されたことを恥じてるとか、確認しているとかそんなものじゃない。話しかけられて嬉しいだけだ。これで人生千年ランナーだってことが面白いが過ぎる。


「ノリ……お前、泣いてるのか?」


 あきれたように兄さんが声をかけた結果、図星といっていいのか実際泣いていたみたいで、盛大に鼻をかむ音がした。


「泣いてなどいません!!」

「……泣いているかそうじゃないかは別として、きちんと通知は見た方がいい、相変わらずだな」


 面白がってか魔女さんが追撃をした結果、またも蹲り、魔法使いさんが収穫していた黒ぶどうの畑のみ進行が遅かったため、最終的にはみんなで手伝ってなんとか1日で、今収穫できる分を終わらせることができたのであった。

お読みいただきありがとうございます。

現在不定期更新となっていますので、更新予告はX(@ezodate)をご覧ください。

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