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異世界の君、復興物語 ~狩猟技術と農家の知恵でお国復興しちゃいます~  作者: ezodate
第18章 バナクコート

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353/355

第353話 バナクコート深(7)

 生死の境を原因不明のまま彷徨った王子は、意識を取り戻したあと、何事もなかったよう素振りをみせた。そして、遠くを見ることが増えていった。


 時を同じくして、城の上空に魔物が増え、灰色の空が常となった。

 まず、王城から活気が消えた。


 前王妃と前王弟ではない、見知らぬ者が王子の周りに現れるようになった。城の職員は不審者と認知し、排斥しようとしたところ記憶が混濁し、前からいた者と誤認し、受け入れてしまった。


 マガキ城とその城下町に住む者は、常に恐怖心がまとわりつき、心を病む者が増えた。

 

 王子が目覚めてから約1か月、マガキ城は城下町ごと王命により、封鎖された。


 その『王命』は、『王』によるもの。

 強制力はあったが、その『王』が誰かはわからなかった。

 

 戴冠式が行われることは、なかった。

 

 ◆

 

「あれから1か月でこれか。かなり良くないな……。王よ?」

「オイスター、だよね」

「マガキ城が閉鎖された。あそこの王子、ちょっと妙だっただろう?」

「凍結の魔女に妙と言われるとは、なかなかの逸材だよね」

「それ、どういう意味と捉えてよいのか?」


 ははははは、と王は笑う。


 ナット王とともに、チーズたちの無事を見届けた後も、マガキ城の中を覗き見ていた。本来であればこういうことはするべきではない、とは思っているものの、あまりの様子のおかしさに、監視を続けていた。おそらくは、救国の二人も目を離してはいないだろう。


「言語を操る魔物はテミスが初めて、かと思ったが、この王子もかなりあやしいな」

「まあ、様子を見ていくしかないにせよ、注意しておくにこしたことはないね」

「わたしの凍結魔法とは別の方向性でマガキ城が閉鎖、変容していっているきがするのだが?」


 大まかな意味で私の行使した大魔法が原因でこの世界にひずみが起きた、とは思ったもののまだ1年未満。不具合が出るには早すぎる。


 ナット自体はチーズたちの尽力により郊外部からだけれども産業が定着し、国としての体はまだ取り戻せてはいないものの、村ぐらいの機能は取り戻せている。


「マガキ、閉鎖したら兵糧攻めになっちゃうよね?」

「それがな、どうも、食料を必要としない状態に強制変化してるような気配が」

「我が国の臣民たちみたいな?」


 ナットの多くの国民はいまだ、凍結魔法により黒いモヤ状のヒトであった者のまま、国内にとどまっている。


「いいや、わたしのは『魔法』、あちらさんは『呪い』だな……失礼。王に申してよい言葉ではなかった」

「自分の状態はわかっているからね、言葉を選ぶ必要はないよ」

「ありがたい。私の偵察範囲にはその王子、一度も姿を現してはいないのよ」

「ほう」

「基本あの城に設置されている映像魔石ネットワークに乗っかって見せてもらっているからか、ちょうどその範囲外で生活しているようでな、さすが王子というか、護られている」

「次期王、でもあるしね」


 王のモヤが少しゆらぐ。

 友であった者の子。感情の揺らぎがあっても、おかしくはないだろう。


「とにかく、よくないことが起こりつつある。こんなことはわたしが生きてきた間にも一度もない」

「なんで嬉しそうな顔をしてるの」

「ああ、笑みが漏れていたな、すまない。しかし興味深いだろう?」

「友の臣民にトラブルが起きているわけだから、そんな考え方は私にはできないね」

「確かにな、お前は出来た王だよ」


 オイスターにとって、これは大きな政変。しかも傍目に見ると全くの原因不明。このナットのように完全に姿かたちを隠すわけでもなく、そこにあるまま、マガキ城が城下町ごと、機能を失ったわけで。潜入スパイも居ただろうに、ここまで詳細な情報が出てこない。


「とにかく、注視しておくしかないか。あっちが解決したら王の呪いも解けるといいのだが」

「いや、関係ないでしょ」


 王のモヤがグラッと動く。笑っているのか。


「ところでだ。イオくんはいつ戻ってくるんだい?」

「あいつらアトルでダンジョン攻略に勤しんでいるから、まあ、そのうち?」

「君が荒らした部屋、片づけ不能になっているから、そろそろ戻ってきて欲しいんだけど?」

「えええ?!いや、まあ……気にしちゃだめだよ、王よ?」

「いいや、気にする。あまりにも目にあまる」

「だって、弟子、楽しそうだよ?」

「私がシンに叱られている」


 叱られている。そうか。そもそもこんなに部屋ばっかりあって誰も使っていない城、わたしが自由に使って何が悪いんだ?理解ができない。


「凍結の魔女殿は理解してはくれないのだな」

「いや、理解はしているのだ。納得はしていないだけで」

「ほーう」


 あ、もう、居心地が悪い。どうしてこっちの方向に話が向いたんだ。冷たい視線にならないなにかがわたしに突き刺さる。


「ああもう、わかったわかった!イオに連絡をうつ。それでいいな?!なんか伸び伸びとアオと楽しくやってるのを見ると、このままにしてやりたいなあって……」

「わかった。じゃあ、今のダンジョン攻略が終わったら、まとめてみんな一度帰ってくるといい。そう連絡するように」

「仕方がないな……。そういえば、テミスはどうする?国に入れても良いか?」

「そのリスクは負いたくないなあ。だって目をつけられているんだろう?」

「変に仲間外れにもしたくはないから、まあ、その辺はチーズに任せるか。アトルの拠点を勝手にハギとフジの魔窟にしたんだ、そのぐらいしてくれてもよいだろう」


 話はまとまった。

 ということで、イオに帰還命令の連絡をした。そのときのわたしは、まだチーズたちに同行していたアイツの存在を完璧に失念していた。

お読みいただきありがとうございます。

更新ペースが戻っていませんが、気長にお付き合いいただけると幸いです。

現在不定期更新となっていますので、更新予告はX(@ezodate)をご覧ください。


※バナクコート深の5~7までの重複表現について、気持ちの悪さを助長しようとしているのでわざとなのですが、伝わっていなかったら完全に筆力不足です。

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