要件をおうかがいします
お久しぶりです。
2020年もゆっくりペースですが進めていきたいと思います。
今年もよろしくお願いします。
「ふぁあ」
なんとも気の抜けた欠伸が零れる。
お気に入りのレトロな時計を確認するとお昼ご飯の時間からちょうど2時間が経過していた。
そろそろ休憩するか、と立ち上がりラベンダー色のショールを手に取った。
部屋の外へ出てドアノブに自作の『不在にしています』プレートを掛けて鍵を閉める。
夜会が終わって後処理諸々も終わった今の時期はちょうど仕事が落ち着く頃で、ダンセンさんが飛び込みで持って来るような仕事がない限りは多めに休憩時間を作って神殿内を散歩している。決してサボりではない。ないったらない。
神殿は3つのエリアに分かれている。神官長と副神官長が使われているエリア、結界の魔術師が使うエリア、そしてその他の魔術師と私が使うエリア。私は自分のエリアを散歩しながら時々会う神殿の人達とお喋りするのが好きだ。
なぜエリアが分けられているのかといえば、結界の魔術は特別に能力の高いもので無ければ扱うことが出来ず、特化して業務が行えるようにしているそうだ。
また、神官長と副神官長に至っては神殿に仕えている魔術師でさえどんな職務をしているのか分からないほど機密情報をかかえているため、エリア自体を分けているのだと、以前散歩中に魔術師から聞いたことがある。
自分の担当以外のエリアにはほぼ行くことが無いそうで、なんだか閉鎖的だなと思っていた。
それぞれ行っている業務が大きく違うから当たり前っちゃあ当たり前なんだけど。
「あらぁー?あなた職務中では無くてえ?こんな所でフラフラと何をされているのかしら」
私の職務エリアである廊下を歩いていると背後からなんともまあわざとらしい高い声がした。
振り向けばそこには灰色の女性。
「あら!アディラさんじゃないですか!この間の夜会ではどうも!初対面のフリをしていただいてありがとうございました」
ニコニコと態とらしい笑顔満開でそう応えてやると、とてつもなく嫌そうな顔をされた。なんでだ、貴方が先にふっかけてきたんだろう。そういう所がまだまだ幼いなと思う。
このアディラは、特に私の事が気に入らないナーチルさんの弟子の1人だが、こうしてつっかかってくる割には私が一言返すだけですぐに顔に出るのであまり張り合いが無い。何歳なのか聞いた事もたないが見た目に反して私より若いんだろう。派手顔だが肌がツヤツヤだ。
いつもならここでさようならと解散だが、今日は負けじと話を続けたいらしい。嫌な顔をしつつも彼女はまた口を開いた。
「良いわね雑務処理はお暇そうで」
「まあ、そうですね。用もないのにこのエリアまで足を運ぶ人に比べたら暇なんですかね?ちょっと私にも分からないですけれど」
アディラは結界の魔術師だ。だからナーチルさんの近くにいる弟子なんだけれど。そんな、何だか分からないけれど凄い魔術師が私なんかに構ってていいのか。
そんな皮肉を込めつつ苦笑いで返してやると眉間のシワが一層深くなった。あーあ若いのにそんな所に皺作っちゃって。もったいない。
このままこのお嬢ちゃんと話していたらせっかくのお散歩タイムが台無しになりそうな予感がした。早く用事を終えてもらおう。
「それで?私に何の用ですか」
さっさと要件を言え、との思いを込めて息をつきつつそう言うと、アディラはそれまでしていた不機嫌そうな顔をやめて。高慢そうに顎をあげた。
「あなた、隣国の『スナイデル』ってご存知?」




