ただいま留守にしております
お久しぶりです。
ようやく2章に入ります。
あのとんでもない夜会から1週間が経ちました。
私が城内で誘拐まがいなことをされたという事実は、極わずかな人間にしか知らされないこととなった。
よからぬ事を致そうとしてきたあの男は結局どうなったかは分からない。あの人も騙されていたんだから、どうにか助かっていますように。
あんなに練習したダンスは踊れなかったけれど、当初の目的であった、ナーチルさんの虫除けの役割は果たせたはずだ。成功だったのか失敗だったのかはさておき、ひとまず依頼された案件は終わったのだ、とようやく実感してきたところだった。
今日も私は神殿と騎士団からの庶務を黙々と片付けている。時々お茶とお菓子をつまみながら。
ふいに、肩にかけていたショールがずり落ちた。
それを拾い、また自分の肩へ掛け直す。
肩に暖かさが帰ってきたからだろうか。ふと誘拐された時にナーチルさんが私を抱きしめた温もりを思い出した。
何気なく肩に掌を当ててみる。
『無事でよかった…あなたに何かあったら、私は…』
ぶわっと、首から頭のてっぺんまで熱が広がった。
あの言葉と表情を目の当たりにして、何も思わない訳ではない。あれは、好意の少し上を走る何かだ。
でも、彼にそこまで想ってもらえるということが信じられない。
私たちは、出会ってからずっとただの先生と生徒だった。これまで一度だって甘い雰囲気になったことなんて無い。それ以前に気軽に話が出来る仲でだって無い。
ただ、ストイックな先生に感化されて、生徒も必死で付いていっただけ。
授業の期間は、常に静かで穏やかな時間が流れていた。
授業期間が終わってからも、ナーチルさんはずっと先生だった。時々頼まれる本探しだって、本来ならばナーチルさんが自分でやった方が早く見つかるし時間もかからない。私がたくさんの本を目にする事が出来るようにナーチルさんが気を回してくれてるのだ。
ずっと、先生だった。今でもそうだ。
いつから?とか、どうして?とか
考え出したら止まらなくなってきた。
「王子といい、ナーチルさんといい、一体どうした?」
客観的にこの独り言を聞いたら、随分と調子に乗っていると思われそうだ。でも、あれだ。モテ期到来だ。なぜ、こうも癖の強い人ばかり·····
まだ2人から何も言われた訳でもないのに、もし違ったら、そう考えたらとてつもなく恥ずかしくなってきて、ひとまず思考を止めることに成功した。
ふぅ、とため息を1つして、すっかり支障なく読めるようになった数字の羅列眺め、また作業に戻った。




