黒い者のはなし 7
慣れない夜会の準備も、ノザキ様の事を考えながらであればとても楽しいものだった。特にドレスの発注は自分の色を彷彿させるように仕立てることでそれを身に纏う彼女を想像し、大変興奮した。
脚の露出が多いデザインのように感じたが、仕立て屋は25歳という年齢であれば全く問題ないと言って聞いてくれなかった。
「ねえ、ロイ……、言いたく無かったんだけれど、あなたちょっと気持ち悪いわ」
「そうですか?」
「ええ、男側がドレス作りで目を輝かせるなんて聞いたことないもの」
いつでも私の近くに飛んでいるアリアは私のすることにはほとんど口を出して来ないが、何故か夜会準備が始まるとこうして小言が多くなった。
ひとつため息をついて私の肩に止まったアリアは、腕組みをしている。
その横で私は机に並べられた何枚もの夜会出席者のリストを手にしていた。
神殿は貴族の者が大半で、それは魔術を使役できるものが貴族に偏っているからという理由からである。おそらく、今回の夜会に出席するものも何名か居るはずだと踏んで陛下に頼んで取り寄せたそれを眺めた。予想以上に多くの者が出席するらしく、それらを全て確認するのには時間が掛かった。
副神官長である私が珍しく城の夜会に出席するとなれば、いくつもの家が挨拶に来るだろう。それが普通であることも理解している、が、今回は別だ。ノザキ様がいる。
きっと慣れない夜会で戸惑われるはずだ。それに加え、様々な貴族が彼女の元へ殺到すれば混乱して疲れてしまうだろう。それは出来るだけ避けたかった。彼女には純粋にパーティーを楽しんでもらいたいのだ。
そのため、夜会に出席する全ての神殿関係者に対してあらかじめ挨拶はやめて欲しいとの手紙を送ることにした。
仕立て屋との熱い論争を繰り返した成果は夜会当日にありありと発揮された。
仕立て屋が譲らなかった大胆なアシンメトリーはやはりやめておくべきだったかと思わせるほど魅惑的で、白い脚がチラリと見えては私の心臓を激しく揺さぶる。いつもとは違うメイク方法も彼女の大人の部分を良く引き出していて口元が緩みそうになるのを抑えるので必死だ。
そして何より、私の色をその身に纏う彼女は他の何もかもを霞んで見せてしまうほどに美しかった。
今夜は素敵ですね、と微笑んで言われた時は、もうこのまま2人きりになれる所に連れ出したいとさえ思ったほどだ。自分の正装姿は彼女にどう映るかと、この部屋に来るまでに何度も鏡を見てきた甲斐があった。
会場に入る直前、何やら深呼吸をして緊張気味の彼女に向き直る。
「約束してください。この夜会の間は、決して私から離れないと。今夜の貴方は恐らく男性を惹きつけてしまいます。気をつけてください」
何も嘘偽りは無かった。隣国が彼女を狙っているという以前に、今夜の彼女の装いは必ず男性参加者の目に留まってしまうだろう。誰にも見せたくはないが、そういう訳にもいかない。
隣国のこと、有象無象共のこと、両方に神経を集中させなければと気合を入れた。




