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第十話その2

「よっし!」ブレード達から離れると、スラッシュは大きく伸びをした「さぁて、公認の自由行動だぜ!?」

「まずは前日下見した場所を回って、安全を確保してから準備に入ろうか」ランサーはニヤニヤしながら言った「さて…ハリスくんにも活躍を期待しているからね」

「は…はぁ…」

…一体何をやるつもりなのだろうか…

「去年と同じ轍は踏まないようにしねえとな…」スラッシュは巨大な大鎌を片手で放り投げては掴むを繰り返す「まずはポイント1地点の制圧からだ。行くぜ!」

「お出でなすったね!」ランサーは機槍を起動させた「いい数だ…さあて、どう調理してあげようかな?」

槍の先端と側面のブレード部分が赤く熱を帯び始め、全体的に電流が走る。

スラッシュがポイント1と呼んでいた場所には、確かに小規模なゲートがあり、そこから魔物が多数出現していた。

一体一体はたいした事が無さそうな猪や大きな蟹のモンスターだったが、なにぶん数がかなり多い。

「[ブレイドバースト・ライトニング]!」ハリスは全員の武器に属性を与えた。

「うぅおらぁぁぁ!!」スラッシュが敵陣に突っ込む「[旋風のブラッドホイール]!食ぅらいやがれぇぇぇ!!」

「…全く、相変わらず突撃思考だな」ランサーが槍を構えた「…まぁ、判断は間違っちゃいないな。[鉄砕・断雷閃]!」

スラッシュが鎌を持ちながらグルグル回って敵を蹴散らし、残った敵をランサーが属性の宿った槍で落雷を落としながら華麗に始末していく。

「[ボルテックスバインド]…[バーチカルサンダーソーン]っ!」

ハリスも倒し漏れた敵を一体ずつ雷の力で拘束し、とどめを刺していった。

最後に聖なる光を剣に付与して、ゲートを跡形もなく閉じる。

「…うん、いいね!その調子だ!」

ランサーが満足そうに頷く。

「よっし、次だ次ぃ!行くぜぇぇぇ!」

スラッシュが威勢よく声を上げ、目星を付けた地点へ向けて走っていく。

「ハリス君、今日はかなりハイペースだ。だが君も男なら、ついてきてくれよ」

謎の言葉を残しランサーも後を追う。

…ど、どういうこと…?

「スラッシュ、時間は?」

ランサーがスラッシュに並ぶ。

「多少余裕だが、急いだ方がいいよな」ランサーに目配する「ちゃんと入場した時に間に合わせないと楽しみが半減だぜ」

「あぁ。そうだな」ランサーはスラッシュと走りながら握手を交わす「必ず成し遂げよう。俺達で…夢と希望を掴むんだ」

「期待してるぜ…相棒っ!!」

「いや…一体何なんですか…」

ハリスは呆れたように二人を見た。

あぁ…何だか何をしようとしているのか、だんだんと想像がついてきたが…。

この二人の戦闘値はかなり高い。

…逆らえる筈がない。

そう。

決して。

断じて。

いくら健全な男子だからと言って。

きょ、興味がある訳ではないっ!!

同じような事を三ヶ所行い、再びブレード達が見張りをしている場所に戻る。

「…ん?戦闘になったのか?」ブレードが心配して声をかけてくれる「大丈夫か?ともあれ付近の厄払い、御苦労だったな」

「あ、ブレードさん…ちっす!俺にかかれば一瞬っすよ!」ニヤニヤしながらスラッシュは言う「そうそう、俺達はいつ頃から温泉にありつけるんですかねぇ」

「ん…そうだな。基本的に女性陣には二時間取ってやってるからその後からだな」

「なるほど」ランサーは考え込んだ「他のメンバーはどこにいるんですか」

「他のメンバーか?」ブレードは腕を組んだ「…ここが西側として俺を配置してるが、北にはシオン、東に村雨丸、南にはカリースとロイドを配置してるな」

「ほほう、そうですかー」

いい笑顔でランサーは頷いた。

「…なぁお前ら」流石にブレードが怪訝な顔をした「何か…企んでないか?」

「あぁいやいや、ハリス君と一緒に戦えるのが楽しくて仕方ないだけですって!」スラッシュは鎌を片手で高速回転させながらブレードに笑顔を向けた。

「すまないが…ハリス」ブレードはハリスに目を向ける「一応こいつらがちょっとでも変な真似をしたら、すぐに連絡を飛ばしてくれ。…いいな」

「はい…」

「…はぁ。シェイダーの奴が来ていれば、俺も同行出来たんだがな」ブレードはため息をついた「まぁ、無理はするなよ」

「へーい」「はいはい」

適当な返事を二人がする。

「…何かあればすぐに連絡しますね」

…もう彼にはこうとしか言えない。

「頼むな」

心が…痛むなぁ…。

「あ゛痛゛ぁ!?」ハリスはブレードのところを離れたところで、バァンと思い切りランサーに背中を叩かれる。

「ははっ、よくやったねハリス君っ」ランサーはグッドサインをする「なんだー、やっぱりノリノリなんじゃないかー!」

…選択肢を間違えた気がする…。

「これでお前も俺達の仲間だな!」スラッシュはそんな二人に背後から腕を回した「なぁにバレやしねぇさ!去年の教訓を生かしてナカノさん直伝の四神結界を採用したんだ。いくらメースさんだって巨大な結界の中に入れちまえば何をされたって分かるはずがないからな!はっはっは!」

…なんか恐ろしいこと言ってるよ!?

ってかあのバカ新聞屋何してんの!?

「ふふっ…ハリスくんがいよいよ…大人になるんだな。あぁお兄さん嬉しいよ」

「は…はぁ…」

「さぁ!」スラッシュは二人の肩を叩く「仕上げは俺達が掘ったトンネルへ行けば、最高の眺めが確保出来るからな!」

そう言うと意気揚々と先陣を切ってスラッシュが駆け出し始める。

次いでいい笑顔のランサー。

そして最後に今にも罪悪感で死にそうになっているハリスが続く。

立ち上る熱気が暑いはずなのに。

ハリスは時折震えそうになる足をうまく動かしながら、ブレードに連絡をするかどうかを必死に考えているのだった。

「さて…」

ランサーが岩を破壊すると、下に不器用に掘られた穴が現れる。

崩れないのかな…この即興トンネル…。

「…まぁ1日しか時間取れなかったし、最悪生き埋めになっても夢のためには仕方ねえと思ってくれな」

スラッシュはウインクする。

「そんな…」ハリスは青ざめた「なんて恐ろしい事を言うんですか…」

「大丈夫」ランサーは青い石をちらつかせる「いざとなったら転移石を使うさ」

「それは…!よく用意できたな!?」

スラッシュが目を丸くした。

…どこの闇市から手に入れたんだ…!?

「…ははは!」ランサーは胸を張った「今日という今日の為に…給料を貯めといたんだよっ!気にするな、同志よ!」

「ありがとう、同志よ…!」スラッシュはランサーと腕を組んだ「お前の遺志は決して…決して無駄にしねえからな!」

「くっくっくっく…」

「へっへっへっへ…」

なんか…もうやだこの二人。

「さぁ!」ランサーはハリスを振り返る「行こうか!ピュアなキッズ君!」

「いやハリスです」

「あぁ今から俺達が!お前を!大人にしてやるからな…!」

「いや結構です」


トンネル内にも熱気があり、暑い。

所々から熱い液体が吹き出してくる。

すごい危険な場所だ。

「あぁハリス君、今左から出てるやつ」ランサーが指を指した「当たると死ぬよ」

「ひぃぃぃぃぃ!?」

「ハリス、それマジもんのマグマな」スラッシュも平然と言う「色々溶けんぞ」

「アイェェェェ!?」

や…やってられねぇ!

モンスターこそ出ない物の、こんな危ない通路を進まなくてはならないなんて。

二人は落ち着き払って移動している。

やはり流石はベテランの胆力なのか。

「…そろそろか」スラッシュはため息をついた「時間がもっと開けば、ちゃんと整備出来たんだけどな」

「万が一があっても、俺の転移石を使えばすぐにメルハに帰れる」ランサーが頷いた「後戻りは、もう出来ないよ」

ハリスは二人の背を追って進む。何も話さなければ、とても格好いいベテランのダーククルセイダーとメカニクルなのに…。


そしてようやく狭いトンネルを抜け、開けた場所に出る。

一応木材や金属端材を使って補強されたその空間には…。

「…マジかよ」

スラッシュが呟く。

「本当に…ついてないね」

ランサーは機槍を構えた。

大規模なゲートの前に、

巨大な黄色いスライムが現れていた。

スライムには大量の端材や金属片、それに大量の武器が刺さっている。

「あれの…弱点は…!?」

ハリスは精神を集中させた。

「冷気を頼むっ!」スラッシュは駆け出した「おらぁ…俺様が相手だぁっ!」

「[ブレイドバースト・アイシクル]!」ハリスは属性を付与すると左へ回り込む「スラッシュさん!無理しないで!」

「そうだスラッシュ!無形生物相手には物理攻撃は相性が悪いぞ!」ランサーも右側に回り込んだ「離脱しろ!」

「相性だぁ…?」スイッチの入ったスラッシュは止まらない「んなもん、数ぶちこみゃ何だってぶっ潰せるんだぜ![重底のメテオスラッシャー]!」

スラッシュは集合体のコアを目掛けて的確に攻撃を叩き込んでいくが、やはり飛び出ている武器などに体が当たり、少しずつ負傷しているようだった。

「全く、世話が焼ける相棒だ…!」ランサーは属性付与された機槍を構え突っ込む「[絶将・氷刃十字閃]!」

「[レギオン・スノウサークル]!」

ハリスも側面から攻撃を叩き込む。

そして次の瞬間、

スライムが収縮した。

なにか…強力な攻撃が来る…!?

「…やべっ!?」

スラッシュの反応が遅れた。

刹那、スライムの体に突き刺さっていた武器が突如弾けた。

ハリスは身軽に地面を転がり回避する。

「スラッシュ!?」

ランサーは反射的に槍を盾にするが、スラッシュは後方に吹き飛んでいく。

「そんな…スラッシュさんっ!」

スラッシュの腹には深々と…返しのついた曲刀が刺さっていた。

「ぐあっ…この、クソ野郎…」スラッシュは腹に刺さった剣を引き抜いた「…へっ…上等じゃねぇか…ぶっ殺してやるぜ…」

血が地面に飛び散る。

「おい馬鹿っ!」ランサーはスラッシュを怒鳴りつけた「お前何抜いてんだよ!?回復役のメースさんは今ここには居ないんだぞ!?待ってろ、今、今…」

「ランサー!いいか、自分の事に集中しろ」スラッシュは深呼吸する「ハリスもな。これが俺のやり方だ…邪魔すんな」

「くっ…」ハリスは歯を軋ませた。

…スラッシュの体力は三割を切っている…それに今しがた剣を引き抜いた為追加ダメージと大量出血状態だ…!

「死ぬなよ…相棒」ランサーは再び機槍を構え、敵に振り下ろす「やってやる…![断罪・極彩槍〜冬〜]っ!!」

ランサーは無駄のない動きで槍を振り回しながら腰についている爆弾を投げる。

軽い爆発と共に彼の姿が見えなくなり、

次の瞬間に巨大なハンマーに変形したそれでスライムを押し潰し、無理矢理変形させて巻き込みながら槍を戦斧の形状に変化させて横凪ぎに一閃。最後に鎌に変形したそれでスライムを斬り伏せる。

「コンボっ!行くぜ…[血染めのスラッシュ]!!くたばれやぁぁぁ!!」

体力が僅かのスラッシュがこの隙にランサーと入れ代わり、下から大鎌を振り上げてスライムのコアを一刀両断した。

スライムは黒く変色し、地面に液体状になって崩れ落ちる。

「やった…?」

ハリスはスラッシュを見る。

体力は…半分くらいまで回復していた。

出血も何故か治っている。

はぁ…よかった…。

「馬鹿野郎っ」ランサーはスラッシュを睨み付けた「心配する方の身にもなれ!」

「ハッ、悪い」スラッシュは鎌をしまう「…ま、ちょっと頭に血が上っちまった」

「全く…」ランサーはゲートを見た「しかしこいつは…どうするんだ?」

目の前には巨大なゲート。

ゲートブレイカーをこの二人に対して果たして使うことが出来るだろうか…。

しかしこうしている間にもここから凶悪なモンスターがもし現れたら…。

消耗している今は危険だ。

それならば、賭けてみるしかない。

「二人とも」ハリスは顔を上げた「少し…いいですか」

【続く】


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