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第九話その3

青の洞窟はメルハから西側、【黒い山】を超えた先にあるパロマス王国に程近い村の周辺にある洞窟だ。

一度来たことはあったが、あのときはゲートのせいで強力な敵が現れ、ラミエが瀕死になるなど、ひどい目にあった場所だ。

…と言うのを今思い出した。

「…ハリス兄ちゃん、大丈夫?気持ち悪かったら吐いた方がいいかもだよ?」

カリースが心配して声をかけてくれた。

「いや…僕達前回ここで強いゴブリンに囲まれて、酷い目に遭わなかったっけ?」

恐る恐るハリスは訊いてみた。

「あー、ラミエねぇちゃんがやられた奴だね…」ロイドは頷く「まぁ今回はこっそり先生もついてくるだろうし…本当に危なくなったらバッジを使ってまた基地に戻ってくること出来るから」

「そうなんだ…」


「…っと、来たよ…ロイド!」

「あいさ〜♪」

カリースとロイドが武器を構える。

棍棒や斧で武装したゴブリンがこちらに向けて走ってきていた。

「ニンゲンダ!」「コロセ!」

「[ブレイドバースト・フレイム]!」

ハリスは全員の武器に炎を纏わせた。

「[なんか岩が飛ぶやつ]っ!」

ロイドが地面に剣を突き刺し、そのまま頭上に振り上げる。

地面が一部分はがれ、巨大な燃える岩石になってゴブリンに襲いかかった。

「グヴァァァァ!」

隊列が乱れたところにカリースが突っ込む。華麗な手つきで銃を構え、片手で靴についていた何かを外した。

「[ホバリング制圧モード]!」

靴はスケートシューズになっているらしく、カリースは華麗に滑りながら腕に取り付けた機関砲を撃ちまくる。

岩から逃れたゴブリンも、これにより綺麗に殲滅された。

「カリース兄ちゃん、次来るよ!」ロイドが叫んだ「なんか小さい鳥!」

「スモールワイバーンだ…」カリースはレバーを引いて銃から煙をふかしながら言う「相手は電気属性…弱点は地の気!」

「了解![オラクルチェンジ]!」ハリスは剣を振り下ろし、先程の魔法の書から得た知識を応用した技を使って瞬時に属性を変更する。武器に石の属性が宿った。

「地ならボクの得意分野だね!」ロイドはワイバーンに立ち向かう「[ロックンロール・アッパー]!」

突如土煙が上がり、ワイバーンの姿が見えなくなった。瞬間、ロイドが地面に剣を叩きつける。

「ギャ!」

土煙が晴れると、地面から拳のような物体がつき上がり、上空を飛ぶワイバーンにクリーンヒットする。

「[設置型撃竜モード]!」

カリースはその隙に地面に銃を固定し、銃の上部にあるピンを引いた。

ガシャンと音がして、銃は巨大なクロスボウ…バリスタに姿を変える。

「すごい…」思わずハリスは呟いた。

「はいっ!」ロイドは後ろに飛び退く。

「どーん!」カリースは全身を使って弦を引き、いつの間にか装填されている大型の槍のようなボルトを発射した。

小さな体が反動で後方に吹き飛ぶ。

放たれたボルトは真っ直ぐ飛んでいき…油断しきっていたワイバーンの頭に当たり、大爆発を起こした。

「やったぁ!」ロイドはカリースとハイタッチを交わした「ボクらの勝ち!」

「必殺技を使うまでもなかったかもね。…ナイスタイミングだったよロイド!」

「二人共、すごいね」ハリスは感心した「連携に全く乱れがない。このコンボは…何度も練習したのかな?」

「れんしゅー?」ロイドが首を傾げた。

「しないよ、あんな退屈なもの」カリースが欠伸をした「敵がいないのに撃ったら弾の無駄じゃん。ただでさえメンテナンスも難しいんだから…僕達はもうお互い何を始めるかって何となく分かるからね。結構行き当たりばったりであんな感じかな」

「ロイドとカリース兄ちゃんは、戦闘学の実技では応用演習までオールSランクだからね!楽勝楽勝っ」

「よっし、ちょっと休憩しようか」カリースは近くの岩に座った「そうそう、キッチンから勝手に持ってきたハムとチーズと食パンが有るんだけど…食べる?」

「たべる!」ロイドは喜んだ。

「勝手に持っていっていいの…?」額に汗を浮かべながらハリスは言った。

「だって昼は無いけど、朝と夕は毎食バイキング式じゃん。食材は余るほど料理長さんが仕入れてるから…」

「毎回やってるけど、一回も怒られたことないしね」ロイドがパンを詰め込みながら喋る「良いんだよ、きっと」

…良いのかな…?

と、ここでハリスに魔法メールが届いた。アニからのメールのようだ。

メニュー画面を脳内にイメージし、中身を確認してみる。

【ハリスへ。シェイダーさんは珍都バブッキンガム周辺のイルネィ廃棄区でレベリングしてるみたい。気づかれちゃって、一緒に行動してるよ】

【だ…大丈夫なのかい…?】

【なんか助けてくれたし、やっぱり親衛隊の一員なんだって感じね。…やっぱりめちゃめちゃ怒られたけど】

【そりゃぁ…まぁ…】

【今夜はやっぱり泊まりみたい。ハリス、温泉は楽しんできなさい。だけどもし間違いを犯したら…】

【あの、なんの事かさっぱり…】

【まぁハーレムプレイでも構わないけどね。くふふ…まぁ楽しんでらっしゃい】

【ええと…アニ?】

【あら、そろそろ切るわよ】

【分かった。気をつけて】

「…メール…ってやつ?」カリースがこちらの顔を覗き込んでいた。

「あぁ、ごめん。そうそう、アニと連絡をとっていてね…」

「アニ…ハリス兄ちゃんのお嫁さんだ」ロイドはてとてととハリスに近づいた「結婚?するとなんか良いことあるの?」

「ロイド、君にはまだ早い話さ…」カリースが指を左右に動かした「それはもう、毎晩きっと腰が抜けるほど良いことが沢山あるに違いないんだ」

「うー?」ロイドは首を傾げた。

「夜…は普通に寝るだけじゃない?」

「ロイドわかんないや〜♪」

「ロイド、【知らぬがオダブツ】だよ」カリースが頭をぽりぽりかいた「あ、【知らぬが仏】だったかな?」

その後も順調に狩りを続け、気づけば時間はあっという間に過ぎていた。

「あんまり上がらなかったねー」

ロイドがため息をついた。

「敵が多分弱いからだろうけど…」カリースはバッジを睨む「これでも自由行動エリアの最高難度の場所に飛んでるはずなんだけどなぁ…」

「おーい、せんせー!」ロイドが声をあげた「そろそろ帰りたいんですがー!」

と、後ろの通路から土まみれになったスーツを身につけたメガネをかけた女性が現れた。先程岩に埋められた、あの人だ。

「…では、評価に移りますので整列してください」ため息をつきながらビエル先生は二人に指示を出す。

カリースとロイドはニコニコしながら先生の前に並んだ。

「戦闘総合評価…S。まぁ、あなた方なら当然ですね。危機管理評価…A。道中の食事中に交代で見張りを行えばなお良し。コスト…B。カリース君は特に弾のばら蒔き過ぎに気をつけ、ちゃんと空薬莢を拾ってください…掃除するのは私です。態度…C。次こそは私を連れてきて下さい」

「せんせー、なんか次Dとか言われそうな気がするんだけどー」ロイドがぼうっとした声をあげる「だんだん点数が酷くなってませんかー?」

「文句があるなら私と行動することッ!本当ならオールEですからね!」メガネを直しながらビエルはハリスの方を見た「親衛隊の方でしたよね。うちの生徒がいつもお世話になっております…」

「あ…いえいえ、こちらの方が多くを学ばせて頂いていますよ」

ハリスは頭を下げた。

「貴方のように勉強熱心な子ばかりなら私も楽が出来るんですがね、ホホホ。アカデミーの授業は冒険者様も受けることが出来ますよ。もし関心がございましたら、何時でもいらしてくださいな」

「まぁ、僕達ぐらいのエリートなら、授業なんて受けなくてもいいんだけどねー」カリースは欠伸をした「大体週に2回授業を受けるのもダルいのに他の特設校舎で追加3回学校行かなきゃいけないんだぜ」

「特設クラスは一定の能力が認められ、更にのびしろのある子供達の為に用意されたエリートのクラスですよッ!カリースくん、貴方は特に魔法学の基礎ぐらいは覚えられるように…私が担当であると他人に恥ずかしくなく言えるような点数を取ってきてから言いなさいッ!」

「…うぜー」ボソッとカリースは言う。

「せんせー、物理が全くわからないよー、物理なんて勉強したくないよー。ロイド物理とか何の役にも立たないって証明して勲章もらいに行っていい〜?」

ロイドが両手をぶらぶらさせた。

「物理は私の担当ではありませんよ。真面目に勉強してください」

「じゃあ先生も知らないことをやる意味って一体何なんだろ…や〜めた〜」

「コラーッ!ビェェェ!」

「「あははははははは!」」

…先生という職業も大変だなぁ…。

「ただいまーッ!」ロイドは元気よく基地のエントランスで声をあげた「じゃあね、カリース兄ちゃん。早く帰らないと寮が閉まっちゃうから」

「おう、またね〜」手を振ってロイドを見送るカリース。そして…「ハリス兄ちゃん…あの、大丈夫…?」

「うううう…」気持ち悪い…!

「帰ったか」ブレードが書斎から出て吹き抜けを見下ろしている「…おいカリース、ハリスに何があった」

「え…や、狩りに連れてったんだけど…。ハリス兄ちゃんがここまで転送酔いするタイプだと思わなくて…ごめんなさいっ」

「…はぁ」ブレードは大きなため息をつくと、階段を降りてくる「おいハリス、部屋まで歩けるか?…丁度いいラフィーリア、連れてやってくれ」

「はぁい」ハリスのすぐ背後にラフィーリアが突然現れ、肩を貸してくれる「わー、転送酔いかぁ…私はなったことないけど辛そうね。…ハリス君、大丈夫?」

「なん…とか…」ハリスはよろよろと階段を上がっていった。

「夕食までに良くなれば良いんだけどね」ラフィーリアは優しく声をかけてくれる「せっかく水着を新調したのに…」

「水着!?」

ハリスが立っている隣の部屋からそんな声と同時に何かが飛んでくる。

「わぁぁぁ!」ラフィーリアが素早く回り込み、飛んできた何かを受け止めた「ノルイ、あなた私達を殺す気!?」

【ごめんなさいい!!】ホワイトボードを片手に持ったノルイがラフィーリアから小さな丸椅子を受け取る【あの、水着って…その、男の人たちと入るんですか?】

「私はそのつもり…あれ」ラフィーリアは階下のブレードを呼ぶ「ブレードさ〜ん!明日のお風呂って男女別れて入るんだっけ〜?混浴なんだっけ〜?」

「しまった…伝達してなかったか」ブレードは慌てたように言う「一年ぐらい前…混浴でアーチャーを泣かせてしまった馬鹿がいたからな…。今回選定した場所はきちんと分けて入れるようになってる」

「あー…そう…」ラフィーリアはひょいっとハリスを持ち上げた。

「ファッ!?」

「今日1日かけて買い物して選んだのに…ッ…!うわぁぁぁぁぁッ!!!」

「ギャアアアアアアアアアアアア!!」

ラフィーリアに乱暴にベッドに入れられてから、ハリスは少し仮眠をとった。一時間は眠っただろうか…少し気分も晴れて、起きようと思ったところに来客が来る。

「…私です」アーチャーの声だ。

「どうぞ」

扉が開いて、アーチャーがまるでぬいぐるみのようにブレードの甲冑の胴部分を持って現れる。アーチャーは白いYシャツ姿で、何故かグリーヴをはいていた…。色っぽい雰囲気が台無しである。

「ブレードさんが、夕食を取れるか聞いてこいと…」アーチャーは少し顔を赤らめた「着替えの最中だったのですが、ブレードさんは気づかなかったようで…別にその、今日はアニさんがいないから寂しそうだなとか、枕を置きに来ただけだとかではないですからね…」

ツンデレ風に言っているが、何かとんでもないことをしようとしてるんじゃないかこの子は!?

「夕食は食べるよ。そうだね…アニは今日はいないけど…」

「そうですか」アーチャーは頷いた「動けますか?必要なら手を貸してあげても良いですが」

「大丈夫だよ、ありがとう」


「…」アーチャーはしばらくこちらを見つめている。心なしか少し顔が赤く、ぼうっとしているようにも見えたが…

「…えぇと、他に何か?」

「…いいえ…そ、それではこれで」

アーチャーは踵を返すと、階段を足早に降りていった。

【続く】


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