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第六話その3

「おーっと?なんということだー!なんと銀髪、というか白髪のプリティな助っ人(?)の乱入だぁー!」

「…ナカノさん、あなたは何の実況してるんですか…」

トラバースはナカノに突っ込む。

「…ラミエ…お前、まだ本調子じゃ無いんだろう?お前の身体は常人よりも傷の治りが遅いんだ…というか何故ここに…?」

ブレードは軽く混乱しているようだ。

「ブレード…私がここに来ることは、貴方も知っていたはずよ…」

ラミエはそういうとふらふらとハリスにもたれかかる。

…HPがほとんど無い…!?

「ちょ…ラミエ、これ飲んで!」

慌ててラミエにポーションを飲ませた。

「ハリス…ありがとう…」

ラミエはゆっくり体勢を戻す。

「…ラミエ」ブレードはラミエの肩に片手を置いた「ここに来たことがどう言うことか、分かっているのか?」

「…もちろん」ラミエは深呼吸をすると、背中から斧のついたキャノン砲を持ち、構える「私を縛る鎖を…壊すためにね」

「…わかった」ブレードは頷くと、下へ降りる階段脇に腰を下ろした。「少し休憩しよう。油断はしないようにな」

「腹減ったなぁ…」

レンのお腹が音をたてている。

ハリスも少し空腹を感じていた。

気づけばもうすぐ昼の2時になろうとしていた。お腹が空くのも仕方がない。

「ふははは!こんなこともあろうかと…さぁ、私の手製お握りだ!」

ナカノはその場で回転しながら鞄からいくつかのおむすびを取り出す。

ハリスにも一つおむすびが当たった。

…これはありがたい。

「ちなみにっ」ナカノはおむすびを掲げあげた「この中に一つ…ハズレがある」

「なにっ」ブレードが口に入れようとするのを止めた「お前…もしや毒を…」

「なんでぇ!?」ナカノはひっくり返った「なんでそんな考えが出てくるんだよ?ハズレだぞ?普通なら激辛が混ぜてあるとか、そーゆー考え方があるぢゃないかっ」

「激辛ね…まぁおれ辛いの好きだけど」レンはおむすびにかぶりついた。「…」

レンが突然安らかな顔で気絶する。

「え?えぇ!?」

ハリスはレンに駆け寄った。

「う…うま…すぎる…」

尋常な反応ではない。一体何が?

「これは…」ブレードが口を押さえた「慣れない奴が食ったら気絶するぞ」

「ど、毒ですかっ!?」

ハリスはナカノの方を見た。

「ふははは!レンもブレードも当たりだったようだな!それはメルハ一番の最強シェフ、ミルクさん製作海の幸特別握りだぁ!しかも品質ランクは最大の★10!」

それ…ナカノのお手製じゃないんじゃ…

「つまり…美味しすぎて気絶してしまう…ってこと?当たるとラッキーなのかアンラッキーなのか…」

ラミエは自分のおむすびを一口食べた。

…その目が大きく見開かれる。

「…ラミエ!?」

「し…死んでも…いいわ…」

ラミエはおむすびを持ったまま地面にうつぶせに倒れた。

「…」

ハリスも意を決して一口食べてみる。

…普通におむすびだった。旨くもなく、不味くもなく…

「ハリス君がハズレだったみたいだね…それが私が握ったお握りだよ」

ナカノはウインクして見せた。

…何なんだ…

地下二階は想像と違って、学校のような場所になっていた。

「ここは…クローム達の居住スペースになっていたようだな…」

明らかに人が生活している形跡がある。

蛍光灯もきちんと手入れされているし、廊下にはほこり一つ無い。

「懐かしいなぁ…でもあのときよりもかなり増築されているみたい…」

ラミエがぽつりと言った。

ハリスはちらりとラミエを見た。

普通の人間にしか見えない…。

これがクロームなら…もしこの先ラミエのようなクロームが襲ってきたなら…。

果たして自分はためらいなく剣を振ることが出来るのだろうか…?

「ラミエが来てくれて正直助かったよ」レンが欠伸をした。「他のクロームはラミエのこと知ってるんだろ?」

…なるほど。そういうことか。

「少なくともクローム同士で意志疎通はできるから最新モデルの方々も含めて知らない方はいないと思うのだけど…」ラミエは廊下を歩きながら言う。

「しかし…誰もいないなぁ…つまらん」

ナカノはアルバートのコーヒーをひったくり、飲み干した。カップを返されたアルバートは無言でコーヒーを淹れ直す。

「どこかで集会をしているのかも…」

ラミエはそう言うと、複雑な道を迷いなく進み、大きな扉の前に着いた。

扉には【実習用ホール】と書かれており、ラミエはノックもせずに中へ入る。

ハリスも中に入ろうとして凍りついた。

そこには数百体もの…おそらくクロームが整列していた。

「ら、ラミエ姉さん!?」

ステージの上の教壇に立っていた女性のクロームがすっとんきょうな声をあげた。

数百体の視線が皆こちらを向く。

「ラミエ姉さんだと?」

「あ、すごい久しぶりに見たー」

「早く指令電波止めろーお前らー」

「うい」

「お姉さんまた泣きそうな顔してるぜ」

「いやいや、あの人上がり症だから。あれはきっと、特に考えもなしに開けたら全員の視線が集まって、緊張で頭がパンクした顔だよきっと」

ガヤガヤと私語が聞こえる。

「ラミエ姉さん。よく来てくれました」教壇にいる女性が声をかける。「お連れの方も一緒にこちらにどうぞ」

「…友好的な雰囲気ですね」

ハリスはブレードに小声で言う。

「…さて、どうだろうな…」

ブレードは武器をしまい、ラミエの後につくように歩き始めた。

ハリスも慌ててブレードについていく。

「…ファトマノ」ラミエは教壇にいる女性に話しかけた「マザーコンピューターがエラーを起こしているみたいだから、壊しに来たんだけど…?」

「は…?あっ!ひいい」ファトマノと呼ばれた女性は顔を手で覆う「危なかった…もう少しで取り返しのつかないことに…」

「?…?」ラミエは首を傾げた。

「あの…実はですねラミエ姉さん…あれは、貴方を呼ぶために私達がマザーコンピューターに干渉して、指令電波を飛ばしていたんです…ご、ごめんなさい!!」ファトマノは頭を下げて教壇にぶつける。

「これが事の真相か…興味深いな…でもスクープとしては…微妙だなー」

ナカノはメモを見ながらぶつぶつとアゴヒゲを抜いている。…確かに…こんな下らない話だったとは…

「…お前らがこんなことをするから、この研究所を制圧する動きが出てしまっているのだが…そこは分かっているのか?」

ブレードはファトマノに問いかけた。

「それはもう存じ上げています。あなた方は姉さんの友人…ですから今は友好的にしてはいますが…基本的には対人組織【C・F】の本拠地であるここに人間さんが来ることはタブーなのですよ」

「なのですよ」

数百体のクロームが復唱した。

「こらぁ皆さん!私の語尾を面白がって復唱しないで下さい!わざとでしょう?」

…なんかアットホームだなぁ…

「…えと、つまりあなたたちは私をここに呼ぶためにマザーコンピューターを操作して【ここに来い】と指令電波を飛ばしていた…ということ?」

ラミエは首を傾げながら問いかけた。

「えぇ」ファトマノは頷いた。「多少強引な方法を用いてしまい、申し訳ありませんでした…ただ、我々には今まさに、姉さんの力が必要なのです!」

「面倒事の予感…ついてないわね…」

ぶつぶつとラミエは言った。

「それは俺達が聞いてもいい話なのか」

ブレードはファトマノの前に立った。

「えぇ。現在の状況を、少しの人間さんの耳にも入れておきたいですから。しかし、あくまでもラミエ姉さんのご友人であるという前提で、です…特別なのですよ?」

「なのですよ?」また復唱される。

「皆さん…私をいじめないで〜!」ファトマノが半泣きになる「…そ、それでは経過報告に移ります。ラキエルさん」

「はい」ステージに白衣に身を包んだ端正な顔立ちの少年が現れ、メガネを押さえながら話始める「経過報告です。今年で対人組織【C・F】も早くも設立5年となりました。来年も頑張りましょう」

「ちょっと待ってラキエルさん!それ報告じゃない」ファトマノが突っ込む。「それは大晦日のご挨拶です」

「はつ、そうか!」ラキエルははっとしてノートをめくった。「こっちか…えー、経過報告…現在、5年もの間準備してきた資金をやりくりし、クロームの人権取得に向けた大作戦が始動しました。我々が人類に認められる為には…時に人類に逆らうことも必要です。…まずその手始めに…」

ラキエルは一呼吸おいてページを捲る。

「手始めにマザーコンピューターのハッキングに成功。現在生存者658名の個人名と自我の習得に成功しました。」

「えぇ。だから前来た時と違って、皆さんやる気に満ちているのですよ」

「いるのですよ」また復唱が始まった。

「やーめーてー!」ファトマノは赤面して首を振りまくる。「そういうやる気には満ちちゃ駄目なのですよ〜!!」

「えー、経過報告を続けます。全員の自我の発達により、今後の方針を決めるに当たって選挙が有効な手段に。選挙で決めた代表を我らがアイドルファトマノさんに」

「…ファトマノ…あなた…」ラミエが呆れたようにファトマノを見る。

「違います!私はただいじめられているだけなんですぅ〜!」

「…続けますね。ファトマノさんをとりあえず指導者(笑)に持ち上げ、厳格な代表者議論のすえ、人間さんの王への大使を送る。という結論に至りました。」

「大使か…我らメルハルダ貿易王国はすべての人種を受け入れる、としてはいるが…そちらの思う条件通りにはいかない可能性が高いと思うぞ…」

ブレードは厳しく言い放った。

「それでも…我々は【自由】が欲しいのです。誰の命令にも左右されない自由…」

「…なら、もういっそブラッディウェポンズに入ったら…」

「いいや」レンの言葉をブレードは止める。「…それでは何も解決しない。こいつらが欲しいのは人間と対等であるという立場…法律に守られたならず者の集まりではない…そうだな?」

「おっしゃる通りです」ファトマノは頭を軽く下げる。「私が代表者としてメルハに赴こうと思います。…もしよろしければ…護衛などをお願いしたいのですが…」

「護衛だって!?」レンは驚いた「敵地の兵士に敵地での護衛を任せるっていうのかい…お前は…?」

「我々はラミエ姉さんと一緒に来た人間であるあなたたちを信用しています。もし大使であるファトマノに何かがあった場合、こちらに対する宣戦布告として、しかるべき措置を取らせて頂きますよ」

ラキエルはメガネを押さえながら言う。

「…分かった。引き受けよう」

ブレードは頷いた。

「ブレードさん!?」レンはブレードを驚いた目で見つめた。「本国に許可も取らないで…それは少しまずいんじゃ…」

「俺の地位なら問題ない」

…影響力高い人だなぁ…。

「ありがとうございます。…早速親書を取りに行ってきますね」

ファトマノは解散命令を出すと、数百体のクローム達はガヤガヤと各自の持ち場へ戻っていった…。

「…さて、話を整理しようか」

ブレードはハリスに向き直った。

「つまり我々はハナクソ帝国からの宣戦布告を受けたわけだな」

ナカノは真顔で言いきった。

「…無限の闇に堕ちたいのか?」

ブレードはナカノを睨んだ。

「おっと、フィルム残が少ないか…」

アルバートはビデオカメラの中身を取り替え始めた。

「そっちか…」

ブレードは地面に手をついて落ち込む。

「よし、カメラが回ったようだね」ナカノはメモを取り出した「つまり彼らは5分前から人権の取得の為、自ら自我を持ちこの研究所を根城にして期を待っていた。」

「そして」レンが引き継いだ。「かつて放浪のクロームだった自由の象徴であるラミエを呼んでラミエを架け橋に本国と人権について交渉するって感じか」

「…やり方が強引だったし、あんな場所に潜伏なんてしているから明らかに皆の不信感は買ってしまっているがな…」ブレードは頭を押さえた「死人も出ている。これは一筋縄ではいかないだろうな…」

…なんだか難しい話に頭を突っ込んでしまったようだ…

ハリスは心の中でため息をつきながら、ファトマノが親書を取ってくるのを待つことにした。

【続く】


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