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英雄は世界を救う。モブは人の暮らしを救う。  作者: 伝説の男前
落ちてた落語家

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第96話「立ち聞きした耳」

宴の、喧騒も、ようやく、落ち着いた、三日目の、深夜。



「田中、ちょっと、ええか」



グランデルが、誠を、里の、外れの、人気のない、場所へと、そっと、呼び出した。



「どうしたんですか、こんな、夜遅くに」



「実はな、お前に、だけ、こっそり、話しときたいことが、あってな」




グランデルの、声は、いつもの、豪快さとは、違い、少し、潜められていた。




「例の、皇帝はんの、ことなんやけどな」




「一色さんの、ことですか」




「せや」




グランデルは、周囲を、警戒するように、見渡してから、続けた。




「あの子と、文通したり、宮殿で、話したり、しとるうちにな……妙なこと、分かってきてん」




「妙なこと?」





「あの、麻雀好きの、神さん、おるやろ」




「はい、あの、関西弁の」




「あの神さん……どうも、皇帝はんの、こと、やたら、気にかけとるみたいでな」





誠は、少し、身を、乗り出した。



「どういう、ことですか」




「あの神さん、皇帝はんに、こう、言うたらしいんや。"あんたの、作った、あの、レールガンいう、兵器な。実は、あんたの、オリジナルとちゃうかも、しれへんで"、って」




「オリジナルじゃ、ない……?」




「せや。"別の、世界にも、同じもんが、あるんやで"、って、な」





誠は、その、言葉に、はっとした。



「それって……藤原さんが、言ってた、話と……」




藤原京香が、別の、世界で、レールガンに、撃たれて、死んだ——あの、話が、脳裏に、蘇った。




「お前も、何か、心当たり、あるんか」




「実は……藤原さんが、別の世界で、レールガンに、殺されたって、言ってたんです」




グランデルの、表情が、険しくなった。



「やっぱり……ただの、偶然やない、いうことか」





「あの神さん」



グランデルは、声を、さらに、潜めた。



「単なる、暇な、神やと、思うとったけど……どうも、この、世界と、世界の、繋がりみたいなもんに、深く、関わっとる、気がするんや」




「世界と、世界の、繋がり……」




「皇帝はんの、レールガンも、藤原の、嬢ちゃんを、殺した、レールガンも……あの神さんが、何か、絡んどるんちゃうか、思うてな」





誠は、しばらく、考え込んだ。



「グランデルさん、これ、僕たちだけの、秘密に、しておいた方が、いいですね」




「せやな。下手に、広めたら、皇帝はんの、立場も、危うくなるかもしれへんし」




「はい。慎重に、様子を、見ましょう」





こうして、二人は、この、重大な、話を、胸に、秘めることに、した——つもりだった。





しかし——




その、会話を——里の、外れの、木の、上で、一つの、影が、じっと、聞いていた。





(……これは……とんでもない、情報や)




その、影の、正体は——末広だった。




忍者としての、習性か——彼は、夜、寝付けずに、里を、散策していた、その、途中で、偶然、この、密談に、行き当たってしまったのだった。





(皇帝の、レールガンが、別の、世界にも、ある……。しかも、あの、神さんが、絡んどる、いう、話……)




末広は、木の、上で、息を、殺しながら、その、会話を、一言も、漏らさず、聞き取っていた。





(これは……忍者稼業、長いこと、やってきたけど……こんな、大きな、"収穫"、初めてや)




かつて、諜報の、仕事で、各国を、渡り歩いた、末広にとって——この、情報の、価値は、計り知れないものだった。





(せやけど……)




末広は、少し、複雑な、思いを、抱いた。




(ワシは、もう、忍者は、やめたんや。落語で、生きていく、決めたんや)




(この、情報、どこかに、売れば、大金に、なるやろけど……)




(田中は、ワシの、命の、恩人や。あいつを、裏切るような、真似は……)





末広は、しばらく、木の、上で、葛藤していた。




やがて——静かに、そう、決意した。




(この、情報は……田中のために、使お)




(いざという時、あいつを、守るための、"切り札"、として、な)





末広は、音もなく、木から、降り、そっと、自分の、寝床へと、戻っていった。





翌朝——




「末広さん、なんだか、眠そうですね」




誠が、そう、声を、かけると、末広は、少し、慌てた様子で、答えた。



「あ、ああ……昨夜、ちょっと、寝付けへんくてな」




「大丈夫ですか」




「大丈夫、大丈夫。それより、田中……」




末広は、少し、真剣な、顔で、続けた。



「ワシ、これからも、ずっと、お前の、味方やからな。それだけは、覚えといてくれ」




「え……? 急に、どうしたんですか」




「いや、なんとなく、や。恩人やからな、お前は」




誠は、少し、不思議に、思いながらも、その、言葉を、素直に、受け止めた。



「ありがとうございます、末広さん」





その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「グランデルさんから、こっそり、皇帝の一色さんに関する話を、聞いた。あの神様が、レールガンの秘密に、深く、関わっているらしい。世界と世界の、繋がり……なんだか、途方もない話だ。慎重に、様子を見ていこうと思う。それと、末広さんが、急に、"ずっと味方だ"、なんて、言ってきた。何か、あったのかな。でも、心強い言葉だった。じいちゃん、少しずつ、大きな謎に、近づいている気がするよ」



窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。



まだこの時の誠は知らない。末広が、あの、密談を、立ち聞きし、その、重大な、情報を、"田中を守るための切り札"、として、密かに、胸に、秘めたことを。


そして、その、情報が、この後、思いがけない、局面で——決定的な、意味を、持つことになることも——今はまだ、知る由もなかった。

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