表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。モブは人の暮らしを救う。  作者: 伝説の男前
落ちてた落語家

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
96/328

第94話「神の忠告(ついで)」

妖精族の里まで、あと、一日、という、最後の、野営地でのことだった。



「田中さん、どこ、行くんですか」



「ちょっと、用を、足しに」




誠は、そう言って、皆から、少し、離れた、茂みへと、向かった。




「ふぅ……」




しゃがみ込み、ようやく、一息、ついた、その、瞬間——




「おう、兄ちゃん。ええとこに、おったな」




「……あなたは……」




誠は、思わず、天を、仰いだ。



「なんで、いつも、この、タイミングなんですか……」




「天界サポートセンターの、担当の神ですわ。いやぁ、久しぶりやなぁ」





「今回は、レベルアップの、話ですか」




誠が、そう、尋ねると——




「いや、今日は、特に、用件は、ないんやけどな」




「またですか……」




「まあ、聞いてぇな。実はな、最近、天界の、麻雀大会でな……」





こうして、神様の、いつもの、脈絡のない、雑談が、始まった。




「ワシ、決勝まで、行ったんやけどな。最後の、最後で、人類担当の、神に、振り込んでもうてな……」




「はぁ……」




「あの、役、絶対、狙っとったんや。国士無双、いうてな……」





誠は、しゃがみ込んだまま、その、麻雀の、話を、延々と、聞かされ続けた。




「あの、僕、そろそろ、皆のところに、戻らないと……」




「まあまあ、そう、急かさんと。あと、天界食堂の、新メニューの、話もな……」




「それも、聞くんですか……」





結局、二十分近く、脈絡のない、話に、付き合わされた、後——




「ほな、ワシは、そろそろ、行くわ」




「やっと、解放される……」




「あ、そうそう。一つだけ、言い忘れとった」




神様の、声が、少し、真面目な、調子に、変わった。




「この先の、道な。ゴブリンの、群れが、あんたらを、狙って、待ち伏せしとるで」




「え……!」




誠は、思わず、身構えた。



「それ、大事な、情報じゃ、ないですか! 先に、言ってくださいよ!」




「いやぁ、雑談の、方が、楽しかったからな。まあ、気ぃつけて、頑張りや」




そう言い残すと、神様の、声は、消えた。





「皆さん、大変です!」




誠は、慌てて、野営地に、戻り、皆に、その、忠告を、伝えた。




「ゴブリンの、群れが、待ち伏せしてるって……あの、神様が」




「マジか」




竜崎が、すぐに、剣を、構えた。




「なら、警戒しとかんとな」




末広も、忍者の、顔に、切り替わり、辺りに、気を、配り始めた。





しかし——その時、既に。




「ギャオオオオ!」




茂みの中から、大量の、ゴブリンが、一斉に、姿を、現した。




「来たか!」




竜崎が、真っ先に、斬りかかる。





「田中、お前は、下がってろ!」




「はい!」




誠は、慌てて、後ろに、下がろうとしたが——




重い、リュックを、背負ったままだったせいで、バランスを、崩し——




「うわっ!」




一体の、ゴブリンに、思わず、ぶつかってしまった。




その、瞬間——




ゴブリンの、目が、赤く、光った。




「あ……」




「田中!? まさか!」




竜崎の、顔が、引きつった。





覚醒した、ゴブリンの、雄叫びに、呼応するように——周囲の、ゴブリンたちまでもが、次々と、赤い光を、放ち始めた。




「うわ、群れ、全体が、覚醒してる!」




「田中殿の、体質、最悪の、タイミングで、発動したな!」





「す、すみません……!」




誠は、涙目で、そう、謝った。




「謝ってる、場合か! 皆、来るぞ!」





覚醒した、ゴブリンの、群れが、一斉に、襲いかかってきた。




「フッ……我が、闇の力、見せてやろう! 昏き、影よ!」




黒崎が、闇の魔法を、放ち、数体の、ゴブリンを、一気に、吹き飛ばした。




「おお、黒崎、やるじゃん!」




「フッ……この程度、造作もない!」





末広も、忍者の、身のこなしで、素早く、ゴブリンの、間を、駆け抜け——




「隠密奥義……煙玉!」




煙幕を、張り、ゴブリンたちの、視界を、奪いながら、次々と、無力化していった。




「末広さん、すごい……!」




「これでも、元、忍者やからな!」





竜崎も、守り竜団仕込みの、剣技で、覚醒した、ゴブリンを、次々と、斬り伏せていく。




「田中、お前は、後ろで、大人しくしてろよ! これ以上、覚醒させられたら、たまらん!」




「はい……本当に、すみません……」





桜庭も、冷静に、後方支援に、回り、負傷しかけた、皆に、的確な、指示を、飛ばした。




「竜崎くん、右から、来てる! 黒崎くんは、左を、お願い!」




「了解!」





こうして、誠が、覚醒させてしまった、ゴブリンの、群れを——忍者・末広、魔法使い・黒崎、剣士・竜崎、そして、指揮官・桜庭が、必死に、片付けていった。





戦闘が、終わった頃には——皆、すっかり、疲れ果てていた。




「はぁ……はぁ……なんとか、片付いたな」




竜崎が、額の、汗を、拭った。




「田中……お前の、体質、ほんまに、勘弁してぇな」




末広が、少し、疲れた様子で、そう、言った。




「本当に、すみませんでした……」




誠は、深く、頭を、下げた。





「まあ、でも」




桜庭が、少し、笑って、続けた。



「皆で、力を、合わせて、乗り切れたじゃない。これも、悪くない、思い出だよ」




「桜庭さん……」




「フッ……確かに、我が、闇の力を、存分に、発揮する、良い、機会だった」




黒崎も、満足げに、頷いた。





「にしても、あの、神様」




誠は、少し、恨めしそうに、天を、見上げた。



「もっと、早く、教えてくれてたら……」




「雑談の、後に、ついでみたいに、言われたんやろ?」




末広が、そう、尋ねた。



「はい……二十分も、麻雀の、話を、聞かされた後に」




「相変わらず、たちの悪い、神さんやな」




一同は、思わず、苦笑いした。





その夜、誠は、疲れ果てながらも、祖父のノートに、こう書き加えた。


「最後の野営地で、また、あの神様が、来た。案の定、二十分も、麻雀や、天界食堂の、雑談を、聞かされた。最後に、ついでみたいに、"ゴブリンの群れが、待ち伏せしてる"、と、教えてくれたけど……結局、僕が、群れを、覚醒させてしまって、皆に、大変な、迷惑を、かけてしまった。忍者の末広さん、魔法使いの黒崎、剣士の竜崎、みんなが、必死に、片付けてくれた。じいちゃん、本当に、仲間には、感謝しかないよ」



窓の外——ではなく、野営の空に、二つの月が、静かに、輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ