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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
落ちてた落語家

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第93話「妖精族への長旅」

末広を、様々な、種族に、紹介する、活動は、その後も、続いていた。


⸻


「田中、次は、また、妖精族の、グランデルさんのところに、行きたいねんけどな」


⸻


ある日、末広が、そう、提案してきた。


⸻


「この前の、興行、大好評やったやろ。今度は、もっと、ちゃんとした、演目、用意して、行きたいんや」


⸻


⸻


「いいですね。じゃあ、また、一緒に、行きましょうか」


⸻


⸻


「せや、それでな」


⸻


末広は、少し、思いついたように、続けた。


⸻


「せっかくやから、他の、同級生も、誘うて、賑やかに、行かへんか」


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「それは、いい考えですね」


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こうして、誠は、黒崎、竜崎、そして、桜庭にも、声を、かけることにした。


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⸻


「妖精族への、旅か。フッ……我が、闇の力を、披露する、良い機会かもしれん」


⸻


⸻


黒崎は、いつもの調子で、そう、答えた。


⸻


⸻


「田中の、誘いなら、俺は、いつでも、乗るぜ」


⸻


⸻


竜崎も、快く、参加を、表明した。


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⸻


「久しぶりに、皆で、集まるのも、いいですね。私も、行きます」


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⸻


桜庭も、参加することになった。


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こうして、誠、末広、黒崎、竜崎、桜庭の、五人での、妖精族への、長旅が、決まった。


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「アルフレート様は、どうするんですか」


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エリナが、そう、尋ねた。


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「今回は、王都で、討伐の、依頼が、立て込んでるらしくて、来られないそうです」


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「じゃあ、あの、便利な、マジックバッグも、ないんですね」


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「そうなんですよ……」


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誠は、深く、ため息を、ついた。


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出発の日——


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「うわ、この荷物、重いな……」


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一行は、それぞれ、大きな、リュックサックを、背負っていた。


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アルフレートの、マジックバッグが、使えない今、食料も、野営道具も、すべて、自分たちで、担いでいくしか、なかった。


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⸻


「田中、お前の、荷物、特に、でかくないか」


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⸻


竜崎が、誠の、巨大な、リュックを見て、そう、言った。


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「僕、なぜか、マジックバッグに、荷物が、入らない、体質なんで……いつも、これなんです」


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「マジで、大変やな、お前」


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末広が、同情するように、そう、言った。


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⸻


「フッ……荷物の、重さなど、我が、闇の、鍛錬の、前では、些細なこと」


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⸻


黒崎が、そう、格好つけたが——


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「うっ……こ、これは、意外と、重い……」


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すぐに、その、重さに、顔を、しかめた。


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「黒崎、無理すんなよ」


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⸻


竜崎が、笑いながら、そう、言った。


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こうして、五人の、大所帯での、賑やかな、長旅が、始まった。


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道中、様々な、出来事が、あった。


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「田中、そこの、魔物、避けろよ」


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竜崎が、そう、注意したが——


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「うわっ!」


⸻


誠が、重い、リュックの、バランスを、崩し、思わず、魔物に、ぶつかってしまった。


⸻


⸻


その、瞬間——魔物の、目が、赤く、光った。


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⸻


「あ……また、これか……」


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⸻


「田中殿の、体質、健在だな……!」


⸻


⸻


覚醒した、魔物を、竜崎が、素早く、斬り伏せた。


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⸻


「相変わらず、田中の、周りは、退屈せえへんな」


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⸻


末広が、感心したように、そう、言った。


⸻


⸻


⸻


夜の、野営でも——


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⸻


「アルフレート様が、いないと、こんなに、大変なんですね……」


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⸻


誠は、硬い、地面に、薄い、布を、敷きながら、そう、こぼした。


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⸻


「あの人、いっつも、快適な、テントで、寝てたもんな」


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⸻


竜崎も、少し、恨めしそうに、そう、言った。


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⸻


「フッ……こういう、質素な、野営こそ、我が、魂を、研ぎ澄ます……」


⸻


⸻


黒崎が、そう、言いながら——


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「あー、背中、痛い。地面、硬すぎるだろ」


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すぐに、弱音を、吐いた。


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「黒崎、お前、さっきから、格好つけては、すぐ、素、出るよな」


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⸻


桜庭が、少し、呆れたように、そう、言った。


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「まあまあ、皆さん」


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誠は、そう言って、鞄から、祖父直伝の、保存食と、薬草茶を、取り出した。


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「こういう時のために、色々、持ってきましたから。食べて、元気、出しましょう」


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「おお、さすが、田中。用意が、いいな」


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⸻


一同は、焚き火を、囲み、誠の、用意した、食事を、囲んだ。


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⸻


「なんか、こうやって、皆で、集まると……高校の、頃を、思い出すな」


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竜崎が、しみじみと、そう、言った。


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「あの頃は、こんな、異世界で、こんな、旅を、することになるとは、思わなかったよね」


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⸻


桜庭も、少し、感慨深げに、頷いた。


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⸻


「ワシは、皆と、同じ学年やった、いう、実感、あんまり、ないんやけどな」


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⸻


末広が、少し、寂しそうに、そう、言った。


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「先輩やったし、あんまり、接点、なかったし」


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⸻


「でも、今は、こうして、一緒に、旅してるじゃないですか」


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⸻


誠が、そう、言うと、末広は、少し、照れくさそうに、笑った。


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「せやな。田中の、おかげや」


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⸻


「フッ……こうして、かつての、学び舎の、仲間が、異界の地で、再び、集う……これも、運命の、悪戯か」


⸻


⸻


黒崎が、いつもの調子で、そう、締めくくった。


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「黒崎、それ、ちょっと、ええこと言うてるやん」


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「フッ……たまには、な」


⸻


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⸻


こうして、賑やかな、長旅は、続いていった。


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数日後——ようやく、妖精族の、里が、近づいてきた。


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「もうすぐ、着きますね」


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「グランデルさん、喜ぶだろうな」


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⸻


「末広さんの、落語も、楽しみですね」


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⸻


⸻


その夜、誠は、野営の、焚き火の傍らで、祖父のノートに、こう書き加えた。


「末広さんの、落語を、また、妖精族に、披露するため、皆で、長旅に、出た。黒崎、竜崎、桜庭も、一緒だ。アルフレート様が、いないので、全員、大きなリュックを、背負っての、大変な旅になったけど……皆で、焚き火を、囲むと、なんだか、高校の頃を、思い出して、懐かしくなった。じいちゃん、こうして、昔の仲間と、旅ができるのは、幸せなことだな」


⸻


窓の外——ではなく、野営の空に、二つの月が、静かに、輝いていた。


⸻


まだこの時の誠は知らない。この、賑やかな、旅の、先に——妖精族の里で、思いがけない、出来事が、待ち受けていることを。

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