表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。モブは人の暮らしを救う。  作者: 伝説の男前
知らんけど

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/256

第90話「真の敵は薬草売り」

——それは、魔王城の、とある、一室での、ことだった。



「魔王様、斥候からの、報告書が、届きました」




一人の、魔族が、うやうやしく、一枚の、羊皮紙を、差し出した。




魔王——玉座に、深く、腰掛けた、その存在は、静かに、その、報告書に、目を、通し始めた。





『報告。勇者アルフレートの、日常を、監視した、結果を、以下に、記す——』




『勇者は、確かに、強大な、戦闘能力を、有する。しかし、その、実態は、"ただの、戦闘生物"に、過ぎない』




『驚くべきことに、この、勇者の、経済、兵站、そして、あらゆる、意思決定は——同居する、一人の、男が、掌握している』




魔王の、眉が、わずかに、動いた。





『その男の、名は、田中誠。表向きは、冴えない、薬草売りにして、刃物研ぎ師である』




『しかし、その、実態は——恐るべき、"真の、軍師"である』





『観察の、結果、勇者が、前線に、出るか、否かは——この、男が、"家賃が、払えないから、働け"、と、命じるか、否かに、かかっていることが、判明した』




『つまり、勇者は、この、男の、手のひらの上で、踊る、駒に、過ぎない』





『結論。我が、軍が、真に、滅ぼすべき、敵は——勇者、ではない。この、冴えない、薬草売りの、男こそが、光の軍勢の、"真の、頭脳"であり、討つべき、標的である』





魔王は、しばらく、その、報告書を、見つめた後、静かに、命じた。




「暗殺部隊を、その、男の、店に、送れ」




「はっ」






こうして——魔王軍の、精鋭、暗殺部隊が、次々と、誠の、しょっぱい、薬草店に、送り込まれることに、なった。





その日、誠は、いつものように、店で、薬草を、すり潰していた。




アルフレートは——店の、片隅で、例によって、"ログアウト"、していた。無表情のまま、微動だにせず、しかし、確かに、そこに、立っている。





「ふぅ……今日も、地道な、作業だな」




誠が、そう、呟いた、その、時だった。





天井裏から、影が、一つ、音もなく、舞い降りた。




黒装束に、身を、包んだ、魔族の、暗殺者だった。




「標的、田中誠……覚悟!」




暗殺者は、そう、囁くと、誠に向かって、短剣を、構え——





しかし、その、進路上に——ちょうど、"ログアウト中"、の、アルフレートが、仁王立ちしていた。




暗殺者の、短剣が、アルフレートの、体に、触れた、瞬間——




バチィイイン!!




凄まじい、反射の、衝撃と共に、暗殺者は、天井まで、弾き飛ばされ——そのまま、力尽きて、地に、伏した。





「……ん?」




誠は、その、物音に、顔を、上げた。




「なんか、音、しました?」




しかし、店の中には、既に、伏した、暗殺者の、姿しか、なく——アルフレートは、相変わらず、無表情のまま、仁王立ちしていた。




「気のせいか……」




誠は、再び、薬草を、すり潰す、作業に、戻った。






しかし、その、翌日も——




「標的、確認……!」




別の、暗殺者が、忍び込み——




バチィイイン!!




アルフレートの、"当たり判定"、に、触れた、瞬間、跳ね返され、全滅。





その、翌日も——




バチィイイン!!




その、翌々日も——




バチィイイン!!





「アルフレート様、最近、店の周り、なんか、物騒じゃ、ないですか」




ある日、誠が、店の、隅に、伏している、黒装束の、集団を、見つけ、そう、尋ねた。




「そうか?」




アルフレートは、"ログアウト"、から、目を、覚まし、周囲を、見渡した。




「ああ、また、何か、寄ってきていたようだな」




「これ、誰なんですか」




「さあ。私に、触れた、瞬間、勝手に、倒れているようだ」





「触れただけで……?」




「物理反射、とかいう、体質でな。私に、危害を、加えようとすると、その、力が、そのまま、跳ね返る」




「そんな、チートまで……」




誠は、深く、ため息を、ついた。






——一方、魔王城では。




「魔王様……暗殺部隊、全滅の、報告が……」




「また、か」




「これで、何十人目に、なりましょうか……」





魔王は、深く、頭を、抱えた。




「あの、薬草売りの、周りには……常に、あの、"無敵の、置物"が、立っているというのか」




「はっ。しかも、その、勇者は、大抵、"瞑想状態"、で、微動だに、せず……ただ、そこに、立っているだけで、我が、暗殺者を、跳ね返して、おります」




「なんという、鉄壁の、守り……」





「やはり、あの、薬草売り……ただ者では、ないな」




魔王は、そう、呟いた。




「あれほどの、守りを、常に、身に、纏うとは……恐るべき、軍師よ」






「田中殿、また、店の裏に、妙な、連中が、倒れているぞ」




竜崎が、ある日、店を、訪れ、そう、報告した。




「ああ、また、ですか……」




誠は、もう、驚きも、しなくなっていた。




「最近、多いんですよ。アルフレート様に、勝手に、跳ね返されて、倒れてる人が」




「これ、魔王軍の、暗殺者の、ようだが」




「暗殺者!?」




誠は、思わず、声を、上げた。




「なんで、暗殺者が、僕の、店に……!」





「田中殿が、狙われているのかも、しれんな」




「なんで、僕が! ただの、薬草売りですよ!」




「さあ……。何か、恨みでも、買っているのでは」




「心当たり、なさすぎます!」





誠は、深く、頭を、抱えた。




(まさか、僕が、魔王軍から、"真の敵"、なんて、思われてる、なんて……夢にも、思わないよな……)





その夜、誠は、疲れ果てた様子で、祖父のノートを、開いた。


「最近、店の周りに、黒装束の、怪しい人たちが、次々と、倒れている。どうやら、魔王軍の、暗殺者、らしい。なぜか、僕の、店ばかり、狙われているみたいだけど、心当たりが、全くない。でも、アルフレート様が、店の隅で、寝ているだけで、勝手に、跳ね返して、全滅させてしまうので、実害は、ないみたいだ。じいちゃん、僕、一体、何に、巻き込まれてるんだろう」



窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。



まだこの時の誠は知らない。魔王軍が、自分を、"光の軍勢の、真の軍師"、と、完全に、誤解し、討伐対象の、最優先に、据えていることを。


そして、その、誤解が、この後、さらに、思いがけない、事態へと、発展していくことも——今はまだ、知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ