第87話「ログインボーナス回収人」
近所の、雑魚モンスター討伐に、駆り出すように、なってから、しばらく後——
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「アルフレート様、朝、起きた時、何か、変わったこと、ありませんか」
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誠は、ある朝、屋敷を、訪れ、そう、尋ねた。
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「変わったこと、というと?」
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「例えば……食材とか、道具とか、急に、現れたり」
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アルフレートは、少し、考えてから、答えた。
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「ああ、そういえば」
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彼は、そう言うと、寝室の、隅を、指差した。
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そこには——
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見たこともない、輝く、蜂蜜の、瓶。艶やかな、果実。そして、何やら、複雑な、装飾の、施された、道具の、山が、無造作に、積まれていた。
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「な……! これは、全部、なんですか!」
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誠は、思わず、駆け寄った。
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「毎朝、目を覚ますと、こうして、何かが、現れているのだ」
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「それ、絶対、すごい、価値のあるものですよ!」
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「そうなのか」
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アルフレートは、あまり、興味なさそうに、答えた。
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「使い道が、分からないものばかりでな。放っておくと、いつの間にか、消えている」
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「消える……!?」
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誠は、思わず、悲鳴のような、声を、上げた。
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「もったいない! こんな、ものが、消えるなんて!」
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誠は、その、蜂蜜の、瓶を、手に取り、慎重に、確認した。
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「これ……"神のハチミツ"、と、書いてありますよ」
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「そうなのか。読めなかった」
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「読めなかったんですか!?」
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「田中、欲しければ、持っていって、構わない」
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アルフレートは、あっさりと、そう、言った。
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「本当ですか!」
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こうして、誠は、その日から、毎朝——アルフレートが、目を覚ます、少し前に、屋敷を、訪れ、そこに、現れる、謎の、品々を、回収するように、なった。
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「田中殿、また、来たのか」
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朝早く、屋敷を、訪れた、誠を見て、アルフレートが、少し、呆れた様子で、そう、言った。
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「はい、今日は、何が、出てるか、見せてください」
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寝室の、隅には——
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今日も、見たこともない、果実、そして、艶やかな、輝きを、放つ、謎の、香辛料が、積まれていた。
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「これ……"精霊の、林檎"、"竜涎の、香辛料"……」
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誠は、興奮した、様子で、それらを、一つ一つ、確認していった。
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「アルフレート様、これ、本当に、要らないんですか」
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「ああ、要らん」
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「じゃあ、いただきますね」
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こうして、誠は、毎朝、屋敷から、それらの、貴重な、品々を、こっそりと、回収していった。
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「田中さん、最近、朝早くから、何を、してるんですか」
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エリナが、不思議そうに、そう、尋ねた。
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「これを、見てください」
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誠は、その日、回収してきた、"神のハチミツ"を、見せた。
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「これは……なんですか」
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「アルフレート様の、屋敷に、毎朝、勝手に、現れるらしいんです」
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(読者はお気づきかと思いますが、ログインボーナスである。勇者だけにログインという概念がある)
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「そんな、ものが……」
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「これを、うちの、薬草に、少し、混ぜてみようと、思うんです」
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誠は、いつもの、作業台に、向かい、自分の、地道な、手順で、作った、薬湯に、その、"神のハチミツ"を、ほんの、一滴、垂らしてみた。
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「これは……」
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エリナが、その、薬湯を、味見して、目を、見開いた。
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「全然、味も、効果も、違います!」
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「本当ですか」
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誠も、味見をしてみて、驚いた。
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普段の、しょっぱい、素朴な、味に——ほんのりとした、甘みと、それに、体に、じんわりと、染み渡るような、確かな、効能が、加わっていた。
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「これは……売れるかもしれない」
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誠は、思わず、そう、呟いた。
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こうして、誠は、この、「アルフレート様の、ログインボーナス」を、密かに、活用した、新商品を、開発することにした。
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「田中商会の、新作、"ちょっと効く、ポーション"です!」
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市場の、屋台に、並べられた、その、薬湯は、たちまち、評判に、なった。
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「これ、本当に、効くね! なんだか、体が、軽くなった気がする!」
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「田中さんのところの、薬湯、最近、また、腕を、上げたね!」
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「田中くん、これ、材料、何、使ってるんだ」
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ある、常連客が、興味深げに、尋ねてきた。
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「企業秘密、ということで」
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誠は、少し、悪戯っぽく、笑って、そう、答えた。
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「田中殿」
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ある日、アルフレートが、店を、訪れ、そう、切り出した。
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「最近、田中商会の、薬湯、随分、評判が、良いと、聞いたが」
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「あ……はい、おかげさまで」
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誠は、少し、気まずそうに、答えた。
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「もしかして、あの、朝の、品々を、使っているのか」
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「そ、それは……」
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「まあ、いい」
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アルフレートは、あっさりと、そう、続けた。
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「どうせ、放っておけば、消えるだけの、ものだ。田中が、有効に、使ってくれるなら、それに、越したことは、ない」
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「本当ですか、良かった」
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誠は、深く、安堵した。
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「その代わり」
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アルフレートは、少し、悪戯っぽく、続けた。
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「利益の、何割か、私にも、還元してもらおうか」
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「え……」
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「原材料、提供者としての、権利、というものだ」
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「アルフレート様、そういうところは、しっかりしてるんですね」
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誠は、深く、ため息を、つきながらも、結局、その、提案を、受け入れることにした。
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「アルフレート様の、屋敷に、毎朝、謎の高級食材が、現れることが、分かった。あの人は、興味がなくて、放っておくと、消えてしまうというので、こっそり、回収させてもらうことにした。それを、いつもの薬湯に、混ぜてみたら、驚くほど、評判が良くなった。じいちゃん、思わぬところに、商売のヒントが、転がっているものなんだな」
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窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。




