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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
知らんけど

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第82話「神剣、修理中」

「田中、少し、まずいことに、なった」


⸻


ある日、アルフレートが、珍しく、深刻な、表情で、店を、訪れた。


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「どうしたんですか」


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「これを、見てくれ」


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⸻


アルフレートは、腰の、剣——あの、いつも、村を、守ってきた、輝く、剣を、抜いて、見せた。


⸻


⸻


刃こぼれ、というより——刃、全体に、細かい、ヒビが、無数に、走っていた。


⸻


⸻


「これは……」


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誠は、思わず、息を、呑んだ。


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「耐久度、というものが、限界に、近づいているらしくてな」


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「耐久度……ですか」


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「戦うたびに、少しずつ、この、剣自体が、摩耗していく。今までは、気にも、留めていなかったのだが……」


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アルフレートは、少し、疲れた、様子で、続けた。


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「最近、この、"神剣"に、亀裂のような、表示が、見えるように、なってな」


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「表示、というと、あの、ステータス画面みたいな……」


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「そうだ。"耐久度、残り、三パーセント"、と」


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「さ、三パーセント!?」


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誠は、思わず、声を、上げた。


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「これ、次に、使ったら、壊れるんじゃ……」


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「その、可能性が、高い」


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「修理は、できないんですか」


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誠が、そう、尋ねると、アルフレートは、深く、ため息を、ついた。


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「王城の、鍛冶師に、相談したのだが……」


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——数日前——


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「アルフレート様、これは……」


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王城の、鍛冶師が、その、神剣を、見て、青ざめた、表情を、浮かべていた。


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「修理は、可能なのか」


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「可能では、あります。ですが……」


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鍛冶師は、震える手で、見積書を、差し出した。


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「必要な、素材が……"星喰いの竜の、逆鱗"、"深淵の、精霊石"、そして……"古の、勇者が、流した、涙の結晶"、という……」


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「そんな、ものが、どこに……」


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「加えて、金額の方も……」


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鍛冶師が、示した、金額に、アルフレートは、思わず、絶句した。


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「一体、いくらだったんですか」


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誠が、恐る恐る、尋ねた。


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「国庫の、一年分の、予算に、匹敵する、額だった」


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「そんな、額……!」


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「田中、正直に、言おう」


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アルフレートは、深く、頭を、抱えた。


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「無敵の、力を、持っているはずなのに……この、剣が、壊れたら、私は、まともに、戦えなくなるかもしれん」


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「え、そうなんですか」


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「この、剣に、頼りすぎていたのだ。今更、別の、武器に、持ち替えるにも、扱いに、慣れていない」


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誠は、しばらく、考え込んだ。


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「アルフレート様」


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「なんだ」


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「その、必要な、素材、僕に、心当たりが、あるかもしれません」


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「本当か!」


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⸻


アルフレートは、思わず、身を、乗り出した。


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「まず、"星喰いの竜の、逆鱗"、これ……もしかしたら、竜族の、里に、心当たりが、あるかもしれません」


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⸻


誠は、少し、考えながら、続けた。


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「藤原さんに、聞いてみましょう」


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「次に、"深淵の、精霊石"……これは、皆瀬さんの、霧霊スライム族に、聞いてみる、価値が、ありそうです」


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「田中の、その、人脈は、本当に、頼りになるな」


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「最後の、"古の、勇者が、流した、涙の結晶"、これは……」


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⸻


誠は、少し、考え込んだ。


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「これだけは、正直、見当が、つきません」


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「そうか……」


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「でも、他の、二つの、目処が、立てば、随分、状況は、変わります」


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誠は、そう、続けた。


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⸻


「まずは、素材集めの、ツアーを、組みましょう」


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「ツアー、か」


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「はい。竜族の里、そして、霧霊スライム族の、湿地。それぞれ、僕たちの、繋がりを、頼って、探しに、行きましょう」


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「田中」


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アルフレートが、少し、真剣な、顔で、続けた。


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「この、剣が、直るまで、私は、まともに、戦えない、かもしれん」


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「ええ、分かってます」


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⸻


「つまり、その間、私は……ただの、護衛として、田中の、傍にいる、だけの、存在になる、ということだ」


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⸻


誠は、思わず、少し、笑ってしまった。


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「アルフレート様が、僕に、雇われる、形に、なるわけですね」


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「不本意だが……そういうことに、なるな」


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「じゃあ、これから、素材集めの、旅の間は、アルフレート様は、"超強力な、置物"、ということで」


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「置物とは、酷い、言い方だな」


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「でも、事実、ですよね」


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「……否定は、できない」


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「よし、決まりですね」


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誠は、少し、悪戯っぽく、笑った。


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⸻


「これから、しばらくは、僕が、雇い主です。よろしくお願いします、アルフレートさん」


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「さん、付けは、やめてくれ。慣れない」


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「じゃあ、いつも通り、アルフレート様で」


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「田中、報酬は、どうなる」


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アルフレートが、少し、心配そうに、尋ねた。


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「今回は、素材集めの、旅への、同行費として、日当を、出しますよ」


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「その、日当とは……」


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「アルフレート様の、王城からの、討伐報酬から、天引き、しますね」


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「なんと……」


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「置物代、ってことで」


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アルフレートは、深く、ため息を、ついたが、それ以上、反論は、しなかった。


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⸻


その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「アルフレート様の、神剣が、壊れかけていることが、分かった。修理には、天文学的な、費用と、レアな素材が、必要らしい。しばらくは、僕が、旅の計画を、立てて、アルフレート様は、ただの、護衛として、僕に、雇われることになった。無敵の勇者様が、こんな形で、頼りない一面を、見せるとは。じいちゃん、この世界、本当に、色んなことが、起こるものだな」


⸻


窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。


⸻


まだこの時の誠は知らない。この、素材集めの旅が、藤原、そして、皆瀬との、さらなる、絆を、深めていくことになることを。

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