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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
知らんけど

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第80話「閑話・妖精王と皇帝」

——これは、田中誠の、あずかり知らぬ、ある日の、出来事である。



ガルディア帝国の、帝都。その、中心に、そびえる、壮麗な、宮殿。



その、謁見の間に——身の丈、三メートルを、超える、巨躯が、窮屈そうに、身を、かがめて、立っていた。



妖精王、グランデルである。




「よう来てくれたな、グランデル殿」




そう、声を、かけたのは——玉座に、ちょこんと、腰掛けた、小柄な、少女だった。




見た目は、十歳ほど。丸い、眼鏡を、かけた、その、幼い、姿から——この、大帝国の、頂点に、立つ、皇帝であるとは、俄には、信じがたい。




しかし、その、少女——一色美奈子こそが、あの、レールガンという、一つの、兵器を、生み出し、その、力ひとつで、この、帝国の、頂点にまで、上り詰めた、人物だった。





「おう、皇帝はん。相変わらず、でかい、城やなぁ」




グランデルは、豪快に、そう、笑った。




「ワシの、巨体でも、窮屈に、感じるくらいや」




「グランデル殿の、体格に、合わせて、椅子、特注で、用意させたんだけど」




一色は、そう言って、部屋の、隅に、置かれた、巨大な、椅子を、指差した。




「おお、気ぃ、利くやんか。ありがとうな」




グランデルは、その、巨大な、椅子に、どっかりと、腰を、下ろした。





「にしても、皇帝はん」




グランデルは、少し、真面目な、顔に、なって、続けた。




「あんた、こんな、でかい、城の、てっぺんに、ひとりで、おって……寂しく、ないんか」





一色は、少し、驚いたように、グランデルを、見た。




「……どうして、そう、思うの」




「なんとなく、や。あんたの、目ぇ、時々、田中の、ところの、龍の、嬢ちゃんと、似た、色、しとるからな」





一色は、しばらく、黙り込んだ後、静かに、口を、開いた。




「……正直、寂しいよ」




「せやろ」




「この、姿でしょう。誰も、私を、"皇帝"としては、見ても……"一人の、人間"としては、見てくれない」




「敬われるか、恐れられるか、利用されるか……そのどれか、なの」





グランデルは、静かに、その、言葉を、聞いていた。




「ワシも、似たようなもんや」




「え?」




「三万の、妖精、束ねる、王様や。皆、ワシのこと、"グランデル王"としてしか、見よらん」




グランデルは、少し、遠い目を、して、続けた。




「せやから、田中に、会えた時、嬉しかったんや。あいつは、ワシのこと、ただの、"隣のクラスの、田中"、としか、思うてへんからな」





「田中くん……」




一色の、表情が、少し、和らいだ。




「あの、村の、祭りの、時も、そうだった。あの、歌う会で……久しぶりに、ただの、一色美奈子で、いられた、気がしたの」




「せやろ。あの、田中の、周りは、不思議と、そういう、空気に、なるんや」





二人は、しばらく、静かに、笑い合った。





「なあ、皇帝はん」




グランデルが、ふと、思い出したように、尋ねた。




「あんた、あの、麻雀好きの、神さん、知っとるか」




一色は、驚いたように、目を、見開いた。




「知ってる……! あの、関西弁の?」




「せや、それや!」




グランデルが、思わず、身を、乗り出した。




「あの、神さん、あんたのとこにも、来るんか!」





「来るよ。しかも、決まって、私が、一番、忙しい、政務の、最中に」




一色は、少し、疲れたように、続けた。




「"皇帝はん、ちょっと、運命の、相談、乗ってくれへんか"、とか、言って……」




「わははは! それ、田中も、龍の、嬢ちゃんも、皆、言うとったで!」





「あの、神様……一体、何者なんだろうね」




一色が、ふと、真剣な、顔で、そう、呟いた。




「さあなぁ。ただ、暇な、神さん、いうだけかも、しれへんけど」




「でも……時々、妙に、意味深なこと、言うのよね」




一色は、少し、声を、落として、続けた。




「この前なんて、"皇帝はん、あんたの、作った、あの、兵器な。実は、別の、世界にも、同じもんが、あるんやで"、って」





グランデルの、表情が、少し、変わった。




「別の、世界にも……?」




「うん。私、あの、レールガン、自分で、一から、考えたはずなのに……あの神様、"それ、実は、あんたの、オリジナルとちゃうかも、しれへんで"、なんて、言うの」




「どういう、意味や、それ」




「分からない。でも……なんだか、背筋が、寒くなった」





二人の間に、しばし、奇妙な、沈黙が、流れた。




「まあ、あの、神さんの、言うことや。あんまり、深く、考えん、方が、ええんちゃうか」




グランデルが、そう、話を、締めくくった。




「そうだね……」





「なあ、皇帝はん」




グランデルが、立ち上がりながら、そう、言った。




「また、遊びに、来るわ。あんたも、たまには、あの、城から、出て、田中の、村にでも、顔、出してみぃ」




「……そうだね。いつか、また、あの、祭りみたいな、場所に、行けたら、いいな」




一色は、そう言って、少しだけ、微笑んだ。





こうして、妖精王と、皇帝の、奇妙な、交流は、静かに、続いていった。



大帝国の、頂点に、立つ、孤独な、少女と、三万の、妖精を、束ねる、孤独な、王。



田中誠が、結んだ、思いがけない、この、縁が——いつか、この、世界の、運命を、大きく、動かすことになるとは——この時は、まだ、誰も、知らない。



そして、あの、麻雀好きの、神が、二人に、囁いた、"別の、世界にも、同じ兵器が、ある"、という、意味深な、言葉が——何を、示唆していたのかも——今はまだ、誰も、知る由が、なかった。

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