第77話「勇者のステータス画面」
藤原に、村の近くまで、送ってもらってから、数日後。
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「アルフレート様、聞きたいことが、あります」
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誠は、王都から、村を、訪れていた、アルフレートに、そう、切り出した。
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「なんだ、田中」
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「あの、転移法陣の、件、まだ、根に持ってますから」
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「それは、すまなかった」
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アルフレートは、あまり、悪びれた様子もなく、そう、答えた。
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「それより」
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誠は、以前から、気になっていたことを、続けて、尋ねることにした。
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「アルフレート様、"ステータス画面"って、見えるんですか」
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アルフレートは、少し、驚いた様子で、誠を、見た。
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「田中は、見えないのか」
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「僕、そもそも、"ステータス画面"というものを、見たことが、ないんです」
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「そうなのか……」
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アルフレートは、少し、宙を、見つめるような、仕草を、した。
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「私には、常に、見えているが」
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「どんな、感じなんですか」
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「そうだな……」
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アルフレートは、少し、考えてから、説明を、始めた。
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「視界の、端に、常に、名前、レベル、能力値、そして、装備の一覧が、表示されている」
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「装備の、一覧まで……」
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「それと」
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アルフレートは、少し、複雑な、表情を、見せた。
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「時々、確認の、ダイアログが、出る」
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「ダイアログ、ですか」
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「例えば、"新しい称号を、獲得しました。表示しますか?"というような、確認だ。それに対して……"はい"か"いいえ"、どちらかしか、選べない」
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「それの、何が、問題なんですか」
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アルフレートは、深く、ため息を、ついた。
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「これがな……時に、非常に、都合の悪い、質問にも、"はい"か"いいえ"でしか、答えられないのだ」
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「例えば?」
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「先日、王城の、晩餐会で……"この料理を、気に入りましたか? はい/いいえ"と、出てな」
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「それは、普通に、答えれば、いいのでは」
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「実際には、口に合わなかったのだが……"いいえ"を選ぶと、なぜか、料理長に、通知が、届く仕組みらしくてな」
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「それは……なんとも、シビアな、仕様ですね」
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「あと、これも、見てくれ」
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アルフレートは、そう言うと、いつものように、薄手の、旅装のまま——ポケットも、何も、ないはずの、その、背中から——
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「鉄鉱石、99個」
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と、大量の、鉱石の、山を、取り出して見せた。
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「な……!」
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誠は、思わず、絶句した。
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「その、服の、どこに、そんなもの、入ってたんですか」
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「入っていない」
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「入っていない……?」
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「どこにも、収納していない。ただ、"取り出そう"と、思うと、こうして、現れるのだ」
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「意味が、分かりません」
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「私にも、分からん」
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アルフレートは、さらに、続けて——
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「ドラゴンの骨、50個」
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と、今度は、白く、巨大な、骨の山を、同じように、取り出した。
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「これも、無限に、出てくるんですか」
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「今のところ、尽きたことは、ない」
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誠は、深く、頭を、抱えた。
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「マジックバッグどころじゃ、ないですね、これは……」
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「あと、これも、聞いてほしい」
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アルフレートは、少し、真剣な、顔で、続けた。
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「魔物と、戦う時、なぜか、私にだけ、敵の、注意が、集中する」
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「それは……前から、思ってましたけど」
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「先日の、討伐でも、そうだった。私が、一撃で、ボスを、倒しに、向かった、瞬間——ボスの、視線、殺気、すべてが、私一人に、向いてな」
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「周りの、他の、冒険者は?」
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「ボスの、視界に、全く、映っていない、様子だった。まるで、初めから、存在しないかのように」
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誠は、しみじみと、頷いた。
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「あの、ゴブリンの群れの時も、そうでしたね。僕が、囮に、なった時も、結局、アルフレート様が、来てくれるまで、危なかったですし」
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「そうだったな。あれも、今、思えば……」
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「あと、もう一つ」
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誠は、少し、遠慮がちに、続けた。
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「アルフレート様って、素材を、売る以外の、商売、あまり、得意じゃ、ないですよね」
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「その通りだ」
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アルフレートは、素直に、認めた。
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「値切り交渉も、宿の手配も、どうにも、うまくいかない。気づけば、いつも、田中や、他の者に、任せることに、なってしまう」
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「宿の交渉、この前も、僕が、全部、やりましたよね」
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「うむ。すまない」
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「ギルドとの、交渉も、僕でしたね」
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「その通りだ」
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誠は、深く、深く、ため息を、ついた。
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「アルフレート様、こうして、整理してみると……」
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「うむ」
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「規格外の、力と、無限の、収納と、敵の注意を、独占する体質を、持ってるのに……生活能力、商売の才能は、皆無、ということですね」
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「そう、言われると、返す言葉も、ない」
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アルフレートは、珍しく、しゅんとした様子で、頷いた。
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「だからこそ、田中が、必要なのだ」
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「なんか、都合よく、纏められてる気が、しますけど……」
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誠は、苦笑いしながら、そう、答えた。
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「にしても」
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誠は、改めて、思った。
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「レベル、3874.7で、無限収納持ちで、敵の注意を、独占して……それに、比べて、僕は、まだ、レベル3ですよ」
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「田中には、田中の、良さが、ある」
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「その、慰め、あんまり、慰めに、なってません」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「アルフレート様の、"チート"の、全貌が、少し、分かってきた。ステータス画面、無限に、出てくる素材、敵の注意を、独占する体質。それなのに、商売や、交渉は、まるで、駄目らしい。結局、そういうところを、僕が、支えることに、なっている。じいちゃん、勇者っていうのは、本当に、極端な、人なんだな」
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窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。




