表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
知らんけど

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/572

第76話「勇者の瞬間移動」

里の再建と、ウランの分配が、一段落した頃だった。



「よし、これで、皆、随分、大きくなったな」



長が、里を、見渡しながら、感慨深げに、そう、言った。



藤原が、口から、吐き出した、ウランを、均等に、分け与えられた、龍族たちは、それぞれ、一メートルを、超える、大きさにまで、成長していた。



「これなら、もう、うっかり、踏み潰される、心配も、ないやろ」



藤原が、少し、安堵したように、そう、呟いた。



「藤原殿の、おかげじゃ。この里は、ようやく、また、前に、進めそうじゃ」



長が、深く、頭を、下げた。




「藤原さん、どうしますか」



誠が、そっと、尋ねた。



「これから、僕たちと、一緒に、村に、戻りますか。それとも……」




藤原は、しばらく、考え込んだ後、静かに、答えた。



「うち、ここに、残るわ」



「本当に、いいんですか」



「せや。同じ、龍族の、皆と、一緒に、これから、色々、教え合っていきたいし……ここも、うちの、居場所に、なる、気がするんや」




誠は、静かに、頷いた。



「分かりました。でも、いつでも、村にも、遊びに来てくださいね」



「もちろんや。ウランの、運搬も、まだ、続けなあかんしな」





すべての、話が、まとまり、一行は、ようやく、帰路に、つくことになった。




「では、私は、先に、失礼する」




アルフレートが、そう、告げると、懐から、見慣れない、複雑な、文様の描かれた、札のようなものを、取り出した。




「アルフレート様、それは……?」




「転移法陣、というものだ。王都と、繋がっている」




「て、転移……!?」




誠が、驚いて、声を、上げた、その、瞬間——




アルフレートの、姿が、淡い光に、包まれ——




次の瞬間には、跡形もなく、消えていた。




「……え?」




誠は、しばらく、その場に、立ち尽くしていた。




「い、いなくなった……!」




竜崎も、呆然と、その場を、見つめていた。




「あの人、そんな、便利な、道具まで、持ってたんですか……!」




宮田も、思わず、そう、漏らした。





誠は、深く、深く、ため息を、ついた。




「僕たち、これから、どうやって、帰るんだ……」




竜崎も、宮田も、揃って、遠い目を、していた。




「まさか、あの人だけ、瞬間移動で、帰るとはな……」




「勇者特権、酷すぎませんか」




誠は、思わず、そう、呟いた。




「というか……主人公特権、酷すぎる、というか」




「田中殿、何を、言ってるんだ」




竜崎が、不思議そうに、尋ねた。




「いえ……主人公じゃ、ないですけどね。アルフレート様は」




誠は、力なく、そう、答えた。





「とりあえず、歩いて、帰りましょうか」




宮田が、そう、提案し、一行は、とぼとぼと、氷の回廊に、向かって、歩き始めた。





「田中くん」




その様子を、見ていた、藤原が、声を、かけてきた。




「歩いて、帰るん?」




「はい……アルフレート様みたいな、便利な、道具は、持ってないので」




誠は、少し、しょんぼりと、答えた。




「送っていったろか」




藤原が、そう、申し出た。




「え、いいんですか」




「ええに、決まっとるやろ。ここまで、色々、手伝ってもろたし、恩返しや」




「ありがとう、藤原さん!」




誠は、思わず、顔を、輝かせた。




「竜崎、宮田も、乗ってってええで」




「助かる!」




竜崎が、真っ先に、そう、答えた。





こうして、誠たちは、藤原の、背中に、乗り込むことになった。




「せやけど、うちも、里から、離れすぎるのは、あかんから……」




藤原が、少し、申し訳なさそうに、続けた。




「村の、近くまで、送ったら、また、ここに、戻ってくるで」




「もちろんです。本当に、ありがとう」





藤原は、大きく、翼を、羽ばたかせ、里の、皆に、見送られながら、空へと、舞い上がった。




「田中くん、達者でな!」




「また、来てや!」




小さな龍族たちの、声が、下から、聞こえてくる。




誠は、その、声に、大きく、手を、振り返した。





「アルフレート様、絶対、村に、着いたら、文句、言ってやる」




誠が、飛びながら、そう、呟くと、藤原が、思わず、笑った。




「せやな。うちからも、一言、言うたるわ」





その夜——正確には、道中の、野営の夜——誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「龍族の里の、皆が、無事、大きくなった。藤原さんは、里に、残ることを、決めたらしい。それは、良かったんだけど、アルフレート様が、転移の法陣で、僕たちだけ置いて、さっさと、帰ってしまった。あの人、あんな便利な道具まで、持ってたのか。結局、藤原さんに、送ってもらうことになった。じいちゃん、勇者っていうのは、本当に、ずるいものなんだな」



窓の外、二つの月が、帰路を、急ぐ、一行を、静かに、照らしていた。



まだこの時の誠は知らない。村に戻った後、アルフレートに、この件について、じっくりと、文句を言う機会が、待っていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ