第73話「小さくなる、という真実」
長との対話は、驚くべき事実を、次々と、明らかにしていった。
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「あの、一つ、伺いたいのですが」
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誠は、慎重に、切り出した。
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「こちらの藤原さん、五十メートルほどの、龍の姿を、しているのですが……皆さんとは、随分、違って見えます」
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長は、藤原の姿を、じっくりと、見上げた。
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「なるほどな。若い、龍じゃな」
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「若い……?」
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「わしらは、皆、生まれた時は、その、嬢ちゃんのように、大きな、卵から、生まれるのじゃ」
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長は、ゆっくりと、説明を、続けた。
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「生まれたばかりの、龍は、卵に、蓄えられていた、莫大な、エネルギーを、その身に、宿しておる。それゆえ、最初は、皆、途方もなく、大きい」
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「そこから……」
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誠が、続きを、促した。
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「成長するにつれて、そのエネルギーを、少しずつ、消費していく。そして、不思議なことにな……エネルギーを、使い切るにつれて、逆に、体は、小さく、なっていくのじゃ」
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「体が……小さくなっていく?」
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誠は、思わず、聞き返した。
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「わしらも、若い頃は、皆、途方もなく、大きかったのじゃぞ。長い年月をかけて、こうして、小さく、なっていったのじゃ」
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一行は、揃って、驚きの声を、上げた。
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「つまり、藤原さんは……"若い"から、大きいだけで、これから、年月をかけて、小さくなっていく、ということですか」
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「その通りじゃ」
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藤原は、その、説明に、しばらく、呆然と、していた。
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「うち、これから、小さく、なっていく……?」
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「うむ。もっとも……」
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長は、少し、複雑な、表情を、見せた。
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「その、"成長"には、"糧"となる、資源が、必要でな」
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誠は、はっとした。
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「もしかして……それが、ウラン、なんですか」
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長の、目が、少し、驚いたように、見開かれた。
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「よく、分かったの。その通りじゃ」
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「この地には、その、"放射する石"が、豊富に、あったそうじゃ。しかし……」
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長は、深く、ため息を、ついた。
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「もう、何百年も前に、この地の、資源は、すっかり、枯渇してしもうた」
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「それで……」
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「ここに、集う、龍族は、皆、"糧"を、得られぬまま、生まれた時の、大きさから、成長することも、老いていくことも、できずに……ずっと、この、小さな姿の、まま、留まっておるのじゃ」
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その言葉に、一行は、揃って、言葉を、失った。
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「つまり……」
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宮田が、静かに、まとめた。
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「ここの、龍族の皆さんが、小さいのは、ウランが、枯渇して、成長できないから。老化のように、成長エネルギーを、消費できないから……ずっと、この、姿の、ままだった、ということですね」
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長は、深く、頷いた。
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「若い者たちは、皆、大きくなることを、夢見ておるが……この地では、それも、叶わぬ」
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誠は、藤原の方を、見た。
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「藤原さん」
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「田中くん……うち、ここに、置いていって、もらおうか、思とったけど」
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藤原は、少し、複雑な、表情で、続けた。
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「せやけど、うちだけ、"糧"、たくさん、食えて、みんなは、食えへんっちゅう、状況、なんか……気まずいわ」
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長も、静かに、頷いた。
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「その、気持ちは、ありがたいがの……嬢ちゃんが、ここに、留まることは、勧めぬ」
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「なんでですか」
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「嬢ちゃんの、その、旺盛な、"糧"への、欲求。ここに、留まれば、いずれ、飢えに、苦しむことになるじゃろう」
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アルフレートが、静かに、口を、開いた。
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「田中、藤原殿は、この里の、皆と、同族ではあるが……この地に、留まるのは、確かに、難しそうだ」
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誠は、深く、考え込んだ。
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(藤原さんの、"糧"を、確保しながら、この、里の皆さんとも、繋がりを、持てる方法は、ないだろうか)
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「あの、長」
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誠は、思い切って、切り出した。
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「もし、僕たちの、国の方に、ウランの資源が、豊富に、あるとしたら……そちらへ、皆さんを、お連れする、ということは、できないでしょうか」
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長は、少し、驚いた様子で、誠を、見つめた。
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「本気で、言うておるのか」
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「はい。皆さんが、望むなら、ですが」
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長は、しばらく、考え込んでいたが、やがて、静かに、答えた。
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「その話、若い者たちに、伝えてみよう。ここに、留まることを、望む者もおるじゃろうが……新天地を、望む者も、おるかもしれぬ」
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アルフレートが、誠に、そっと、耳打ちした。
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「田中、これは、良い考えかもしれん。だが……」
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「はい」
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「藤原殿を、ここに、置いていく、という、当初の計画は……難しそうだな」
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誠は、深く、頷いた。
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「はい。藤原さんは、僕たちと、一緒に、村に、戻った方が、いいと思います」
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「田中くん」
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藤原が、少し、安堵したように、そう、呼びかけた。
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「うちも、そう、思うわ。せやけど……」
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藤原は、里の、小さな、龍族たちを、優しい、眼差しで、見つめた。
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「この子らのことも、放っておかれへんな」
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「はい」
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誠は、静かに、頷いた。
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「一緒に、考えましょう。皆さんが、幸せに、暮らせる方法を」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「龍族の、驚くべき真実が、分かった。彼らは、生まれた時は、大きく、そこから、"糧"となる資源を、消費しながら、少しずつ、小さくなっていくものらしい。この地には、その、糧となる資源が、もう、枯渇していた。だから、皆、小さいままだった。藤原さんは、僕たちと、一緒に、村に、戻ることになりそうだ。でも、この里の、皆さんのことも、何とか、力になりたい。じいちゃん、まだ、答えは、出ていないけど、少しずつ、考えていこうと思う」
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窓の外、二つの月が、小さな里を、静かに、見守っていた。
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まだこの時の誠は知らない。この出会いが、この後、龍族と、この国の、新しい関係の、始まりになることを。
そして、藤原が、この里の、同胞たちのために、何を決意することになるのかも——今はまだ、知る由もなかった。




