表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
知らんけど

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/595

第70話「物理法則」

藤原が、ようやく、目を覚ましたのは、それから、三日三晩が、過ぎてからのことだった。



「んん……よう寝たわ」




藤原は、大きく、伸びをしながら、ゆっくりと、体を、起こした。




「藤原さん、ようやく、起きましたね」




誠は、安堵の表情で、そう、声をかけた。




「あれ、うち、どんくらい、寝とったんや」




「三日、ですよ」




「み、三日!? そんなに!?」





その間、誠と、アルフレートは、開けた場所に、テントを、張り、キャンプのような、生活を、送っていた。




「アルフレート様、また、そのリクライニングシート、出してるんですね」




「快適さは、大事だ」






「なあ、藤原さん」




誠は、ふと、以前から、気になっていたことを、尋ねてみることにした。




「なんや?」




「よく、アニメとか、漫画に、あるじゃないですか。龍とか、恐竜が、ちっちゃく、なったり、するの」




「ああ、あるな。人の姿に、なったりとか」




「藤原さんも、小さくなったり、できないんですか?」





藤原は、しばらく、考え込むように、首を、傾げた。




「無理無理。絶対、無理」




「え……」




「それ、物理的に、不可能やから」





「そう、なんですか?」




誠は、少し、意外に、思った。




「せやかて、考えてみぃな」




藤原は、少し、呆れたように、説明を、始めた。




「うちの、この体、五十メートル分の、質量が、あるんやで。それを、いきなり、人間サイズに、圧縮するって、質量、どこに、消えるんや」




「あ……」




「エネルギー保存の法則、高校物理Ⅲ、取ったやろ? 無理やから」





「確かに……理科の授業で、習いましたけど」




誠は、思わず、納得してしまった。




「まさか、こんな形で、物理法則の、話が、出てくるとは……」





「そうなの?」




アルフレートが、興味深げに、会話に、割り込んできた。




「アルフレート様の、"四次元ポケット"は、どうなってるんですか」




誠が、ふと、思いついたように、そう、尋ねた。





「私の、マジックバッグのことか」




「はい。あれって、明らかに、質量保存の法則、無視してますよね」





アルフレートは、少し、考えてから、答えた。




「知らんけど」





「え」




誠は、思わず、素っ頓狂な声を、上げた。




「知らんけど、って……」




「昔から、こういうものだ、として、使ってきたからな。仕組みなど、考えたことも、なかった」





「藤原さん、これ、どう思う」




誠が、藤原に、同意を、求めるように、尋ねた。




「そんなん、うちに、聞かれても、困るわ」




藤原は、呆れたように、答えた。




「あの、収納魔法の方は、多分、この世界特有の、"魔法"いう、便利な、力技で、成り立っとるんちゃうか」




「力技、ですか」




「せや。魔法って、大体、物理法則、無視して、成り立っとるもんやからな」





「でも、藤原さんの、体の大きさは、魔法じゃ、どうにも、ならないんですか」




誠が、そう、尋ねると、藤原は、少し、考え込んだ。




「うーん……多分、うちの、この体、"生物"として、成り立っとるからやと、思うで」




「生物、というと」




「うちの、細胞一つ一つが、ちゃんと、質量、持っとるからな。それを、魔法で、無理やり、圧縮したら……」




藤原は、少し、想像したように、身震いした。




「多分、うち、死ぬで」




「そ、それは、駄目ですね……」





「一方、あの、マジックバッグの、中身は、"物"やからな」




藤原は、続けて、説明した。




「物を、収納する、っちゅう、単純な、魔法の理屈やったら、質量とか、あんまり、気にせんでも、成り立つんかもしれん」





「藤原さん、なんか、詳しいですね」




誠は、感心したように、そう、言った。




「うち、これでも、理系やったからな。前世では」




藤原は、少し、得意げに、答えた。





「じゃあ、藤原さんが、小さくなる方法は、ないんですね」




「今のところ、思いつかへんな」




藤原は、少し、残念そうに、続けた。




「でも、考えてみたら……うち、この、でかい体、そんなに、嫌いちゃうかもしれん」




「そうなんですか?」




「せや。なんや、こう……強い、力を、持っとるって、安心感、あるからな」





「藤原さん」




誠は、静かに、微笑んだ。




「その、大きな体のまま、竜の谷に、行きましょう」




「せやな。うちは、うちのまま、行くわ」





「田中殿、宮田殿にも、この、物理談義、聞かせてやりたかったな」




アルフレートが、少し、笑いながら、そう、言った。




「後で、話しておきます」





その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「藤原さんに、小さくなれないか、聞いてみた。物理的に不可能、という、明快な答えが、返ってきた。アルフレート様の、マジックバッグの仕組みは、『知らんけど』という、身も蓋もない、答えだった。じいちゃん、この世界にも、ちゃんと、物理法則が、生きている部分と、魔法で、なんとかなってしまう部分が、あるみたいだ」




窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。




翌朝、藤原は、すっかり、元気を、取り戻し、再び、北へ向けて、飛び立つ、準備を、始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ