↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
なんてやつだ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/599

第69話「勇者のチート」

竜の谷への旅立ちの日、誠は、アルフレートの提案に、思わず、目を、丸くした。



「藤原殿の背に乗るための、小さな家を、作ろうと思う」



「え……」



「五十メートルもの、巨躯があるのだ。背中に、小屋の一つくらい、乗せても、問題ないだろう」




「うち、別に、ええけど……」




藤原は、少し、複雑そうな顔で、そう、呟いた。




「なんか、うち、移動手段、扱いに、なってへんか?」




「藤原殿、そういうわけでは……」




アルフレートは、既に、マジックバッグから、建築資材を、取り出し始めていた。





数時間後——藤原の、広い背中の上に、こぢんまりとした、木造の小屋が、完成した。




「これは……随分、快適そうだな」




小屋の中には、いつもの、リクライニングシートまで、設置されていた。




「アルフレート様、それ、絶対に、必要ないですよね」




誠は、思わず、そう、突っ込んだ。




「快適さは、大事だ」





こうして、藤原の背中に、誠、アルフレート、宮田、そして、竜崎が、乗り込み、一行は、北へと、飛び立った。





「うち、飛んでるの、まだ、慣れへんから、疲れるわ……」




数時間、飛び続けたところで、藤原が、そう、訴えてきた。




「一旦、休憩を、取ろう」




アルフレートの、指示で、一行は、途中の、小さな村に、立ち寄ることにした。





「そろそろ、着陸するで……」




藤原が、ゆっくりと、高度を、下げ、村の入り口付近に、着地した。




「ふぅ……疲れたわ」




藤原は、そのまま、村の入り口で、大きな体を、横たえ、うとうとと、休み始めた。





そして——




「り、龍だああああ!!」




村の入り口で、寝そべる、五十メートルの巨龍を、発見した村人の、悲鳴が、響き渡った。




「化け物が、来たぞおおお!!」




「討伐隊を、集めろ!」




村は、たちまち、大パニックに、陥った。





「まずい……!」




誠が、慌てて、小屋から、飛び出した。




「違うんです、この龍は、危険じゃ……!」




しかし、誠の声は、混乱する村人たちには、届かなかった。





「田中殿、これは、まずいな」




アルフレートも、事態の深刻さを、悟った。




「藤原殿を、村から、離さねば」





「藤原さん! すみません、起きてください!」




誠が、必死に、呼びかけたが、疲れ切った藤原は、深く、眠り込んでしまっていた。




「これは……担ぐしか、ないな」




アルフレートが、そう、呟くと——




なんと、五十メートルもある、藤原の巨体を、軽々と、持ち上げてしまった。




「な……!?」




誠は、思わず、目を、疑った。




「アルフレート様、それ……!」




「少し、失礼するぞ、藤原殿」




アルフレートは、眠ったままの藤原を、あっさりと、担ぎ上げると、そのまま、村の外へと、大股で、歩いていった。




「た、助かった……」




村人たちも、その、常識外れの光景に、もはや、悲鳴すら、上げられず、ただ、呆然と、それを、見送るしかなかった。





村から、十分に、離れたところで、アルフレートは、静かに、藤原を、地面に、下ろした。




「アルフレート様……」




誠は、その、光景を、見て、これまでの、様々な疑問が、一気に、頭の中で、繋がった。




「アルフレート様、聞いてもいいですか」




「なんだ」




「あなたの、レベル、今、いくつなんですか」





アルフレートは、少し、考えるように、宙を、見上げた。




「今、俺のレベルは……三千八百七十四点七、だったかな」




「さ、三千八百七十四……!?」




誠は、思わず、絶句した。




(僕なんか、まだ、レベル2、なのに……!)





「点七、っていう、小数点は、なんですか」




「ああ、これか」




アルフレートは、事も無げに、続けた。




「お前、どういう、チートなんですか」




誠は、思わず、そう、口にしていた。





「チート、というほどでは、ないぞ」




アルフレートは、少し、得意げに、続けた。




「これは、結構、便利でな。レベルを、十進数で言えば、こうなんだが……十六進数で言えば、また、違う値になる」




「じゅ、十六進数……!?」




「二進数で言えば、さらに、別の、表記になる」




「なんで、そんな、表記方法まで……!」





「それに、レベルアップの、タイミングも、いくらでも、調整できるし……」




「タイミングを、調整……!?」




「レベルアップの、回数自体も、チートで、増やすことが、できるんだぞ」





誠は、しばらく、言葉を、失っていた。




「なんてやつだ……」




誠は、深く、ため息を、ついた。




「この世界の、主人公補正、ひどすぎませんか」




「主人公? 私は、勇者だが」




「いや、実質、主人公じゃないですか、それ」





「田中殿、お前も、努力を、重ねれば、いずれは……」




「僕、レベル2ですよ。まだ」




「それは……なかなか、厳しいな」




アルフレートは、少し、気まずそうに、目を、逸らした。





「んん……」




その時、藤原が、ゆっくりと、目を、覚ました。




「あれ……ここ、どこや」




「藤原さん、村の外まで、運んでもらったんです」




「運んで、って……誰が」




「アルフレート様が」




「アルフレートはんが、うちを、担いだんか!?」




藤原は、驚愕の表情を、浮かべた。




「五十メートルも、あるのに……!?」




「レベル、三千八百七十四点七、だそうです」




「なんやそれ! 意味わからへんわ!」





竜崎と、宮田も、後から、追いついてきた。




「田中、村は、大丈夫だったか」




「なんとか、収まったみたいだ」




「それより、聞いたか、アルフレート様の、レベル」




「聞いた……聞いたよ」




竜崎も、少し、遠い目を、していた。





「さて、休憩も、済んだことだし、また、飛ぶとしようか」




アルフレートが、何事もなかったかのように、そう、提案した。




「藤原さん、大丈夫ですか」




「うん……もう少し、休んだら、飛べると、思うわ」





その夜、誠は、疲れた様子で、祖父のノートに、こう書き加えた。


「藤原さんが、村の入り口で、寝てしまって、大騒ぎになった。アルフレート様が、五十メートルの藤原さんを、軽々と、担いで、事なきを得た。それより、驚いたのは、アルフレート様の、レベルが、三千八百七十四点七だったこと。しかも、色んな表記方法や、レベルアップの調整まで、できるらしい。じいちゃん、あの人、本当に、規格外だよ」




窓の外、二つの月が、静かに、旅の一行を、見守っていた。




まだこの時の誠は知らない。このアルフレートの、常識外れの力の、本当の秘密を。


そして、竜の谷への旅が、まだ、多くの、驚きに満ちた、出来事を、彼らに、もたらすことになることも——今はまだ、知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。