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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
昭和の怪獣ってこんなんだよね

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第62話「龍の好物」

藤原——龍の姿の彼女は、誠が用意した食事に、なかなか、手をつけようとしなかった。


⸻


「藤原さん、お肉とか、お野菜とか、色々、用意したんですが」


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「うーん……なんや、違うんよなぁ」


⸻


藤原は、鼻先で、それらの食事を、つついてみるものの、一向に、食べようとしない。


⸻


⸻


「漬物なんかも、あるんですけど」


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「あかん、それも、ちゃうわ」


⸻


「薬草茶とかは……」


⸻


「うちが、欲しいのは、そういうんちゃうねん」


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⸻


誠は、困り果てた。


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「じゃあ、何が、食べたいんですか」


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「うちにも、よう分からへんのや。お腹は、ペコペコやのに、なんか、しっくり、こおへんくて」


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⸻


数日後、アルフレートと、藤原が、誠の店を、訪れた際のことだった。


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⸻


誠は、探索で持ち帰った、あの、鉱物のサンプルを、店の奥の、机の上に、置いていた。宮田が、危険だと言っていた、あの、ウランの塊も、その中に、あった。


⸻


⸻


「くん、くん……」


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⸻


藤原が、突然、鼻を、忙しなく、動かし始めた。


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⸻


「藤原さん、どうしたんですか」


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「な、なんや、この、匂い……!」


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藤原は、そわそわと、周囲を、見回し始めた。


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「なんか、めっちゃ、ええ匂いが、するんやけど……」


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「え……」


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誠は、思わず、机の上の、あの、封をされた、鉱物の包みに、目を、やった。


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⸻


「まさか……」


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⸻


「あそこや! あの、包みや!」


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藤原が、翼を、羽ばたかせながら、机に、飛びついた。


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「た、田中、これは……!」


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⸻


アルフレートも、驚いた様子で、声を、上げた。


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⸻


「藤原さん、それ、危険なものかもしれません!」


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誠は、慌てて、藤原を、止めようとした。


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しかし——


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⸻


藤原は、既に、その、包みに、噛みついていた。


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「あ……!」


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⸻


包みの布が、破れ、中の、黒みがかった、鉱石の欠片が、露わになった。


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⸻


藤原は、それを、一口で、パクリと、飲み込んでしまった。


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「藤原さん!!」


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⸻


誠は、悲鳴のような声を、上げた。


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「これや……! これ、うまいわ……!」


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⸻


藤原は、恍惚とした表情で、そう、呟いた。


⸻


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「もっと、欲しいわ……!」


⸻


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⸻


誠は、慌てて、宮田に、使いを、走らせた。


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「田中くん、それ、本当か!?」


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⸻


駆けつけた宮田は、その、様子を見て、目を、丸くした。


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「あの子、本当に、ウランを、食べたのか」


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「はい……体調に、変化は、ないか、様子を、見てるんですけど」


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宮田は、慎重に、藤原の様子を、確認した。


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「不思議なことに……放射線の反応が、全く、検出されない」


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「それは……どういうことですか」


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⸻


「多分……藤原さんが、あの鉱物を、体内で、完全に、"分解"してしまったんだと思う」


⸻


⸻


宮田は、驚きを、隠せない様子で、続けた。


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⸻


「龍という、この世界の、生態が……人間の理屈とは、全く、違う、代謝の仕組みを、持っているのかもしれない」


⸻


⸻


⸻


「もっと、欲しいわ! もっと、あの、黒い石!」


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⸻


藤原が、催促するように、翼を、パタパタと、動かした。


⸻


⸻


「あの……そんなに、たくさん、ないんですけど」


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⸻


誠は、困りながらも、少しずつ、追加のウランを、藤原に、与えていった。


⸻


⸻


⸻


すると——


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食べる、たびに——


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「ん……?」


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藤原の、小さな体が、わずかに、大きくなっていくのが、分かった。


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「なんか……体、大きくなってる、気がするわ」


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「本当だ……!」


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⸻


誠と、宮田は、揃って、驚いた。


⸻


⸻


「もしかして……ウランを、食べることで、成長する、龍……なのか」


⸻


⸻


宮田が、そう、呟いた。


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「もっと、食いたいわ! もっと!」


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藤原は、興奮した様子で、さらに、催促した。


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「田中、これは……」


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アルフレートが、少し、考え込むように、言った。


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「昔、聞いたことがある。伝説の中で、"放射する石を、糧とする、龍"の、話を」


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「伝説、ですか」


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「ああ。まさか、本当に、実在するとは、思わなかったが……」


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⸻


誠は、あの、山中で見つけた、ウランの鉱脈のことを、思い出した。


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(あの鉱山に、まだ、ウランが、たくさん、埋まっているとしたら……)


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⸻


「藤原さん、あの鉱山に、もっと、たくさん、ありそうな場所を、見つけたんだ。今度、案内するよ」


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⸻


「ほんまか! 田中くん、最高やん!」


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⸻


藤原は、嬉しそうに、翼を、広げた。


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「田中殿」


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宮田が、真剣な顔で、誠に、声をかけた。


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「これ、もしかしたら……村の、経済問題を、解決する、糸口に、なるかもしれない」


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⸻


「どういうことですか」


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⸻


「危険物として、扱いに、困っていた、ウラン。でも、藤原さんが、それを、安全に、"処理"できるとしたら……」


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⸻


宮田の目が、輝いた。


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⸻


「あの鉱山の、資源を、藤原さんが、消費することで、安全に、活用できる。それに、藤原さん自身も、それによって、成長していく」


⸻


⸻


「一石二鳥、ということですか」


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⸻


「そうだ。しかも、藤原さんが、大きく、成長すれば……もしかしたら、村の、新しい、守り手にも、なってくれるかもしれない」


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⸻


⸻


「藤原さん、どう思いますか」


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⸻


誠が、尋ねると、藤原は、力強く、頷いた。


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「うち、田中くんの、力になれるんやったら、なんぼでも、食うたるで!」


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⸻


「ありがとう、藤原さん」


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⸻


こうして、藤原は、定期的に、あの鉱山を、訪れては、ウランを、食べて、少しずつ、大きく、成長していくことになった。


⸻


⸻


⸻


その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「藤原さんが、ウランを、食べることが、分かった。しかも、それによって、成長していくらしい。危険な鉱物が、思いがけない形で、村の、役に立つかもしれない。じいちゃん、この世界には、本当に、想像もつかない、不思議なことが、たくさんあるんだな」


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⸻


窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。


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⸻


まだこの時の誠は知らない。この、龍とウランの、思いがけない関係が、この後、村の未来を、そして、この世界の運命を、大きく、動かしていくことになることを。


そして、藤原の成長が、いつか、想像を、遥かに超える、大きな力に、繋がっていくことになることも——今はまだ、知る由もなかった。

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