↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
昭和の怪獣ってこんなんだよね

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/606

第61話「二度目の生」

藤原——龍の姿となった、彼女の、長い語りは、続いていった。



「……せやし、うちの話ぃ、聞いたら、みんな『何を、寝ぼけたこと、言うてんねん』て、笑わはるんやけどな、ほんまやさかい、困るんや」



誠は、その、思いがけない告白に、静かに、耳を、傾けていた。



「うち、あんたらの、同級生やろ? せやけど、それだけやあらへんねん」



「実はな、一回、転移しとるんや」



「それで、終わりやったら、ようある話ぃやろ? ちゃうねん」



「転移した先で、死んだんや」




誠は、思わず、息を、呑んだ。



「ほんで、また、転移して……今度は、リュウとして、生まれ変わった」



「せやから、うちは、転移者でもあり、転生者でもある、いう、よう分からん、経歴に、なってしもたんや」



「ほんま、役所に、履歴書、出したら、担当の人、泣くで」




誠は、思わず、複雑な表情に、なった。冗談めかした、その口調とは、裏腹に、その内容は、あまりにも、重かった。



「転移した、直後なんか、まだ、小っちゃい、女の子やったんやで? 『ほな、平和に、育つんやろなぁ』思うやろ? あかんかった」



「なーんでか、知らんけど、いきなり、戦争の、真ん中や」



「爆発は、するわ、空飛ぶ兵器は、飛び回るわ、誰も、説明してくれへんわ」




藤原は、淡々と、しかし、確かに、重い過去を、語り続けた。



「ほんでな……ドーン! 『あ、終わった』思た、瞬間、レールガンや」




誠は、その、単語に、思わず、はっとした。



「砲弾やのうて、金属の塊を、電磁力で、ぶち飛ばす、あの、頭おかしい兵器や」



「うちみたいな、チビが、避けられるわけ、あるかいな。見事に、命中や」



「痛いとか、熱いとか、そんなん、感じる、暇もあらへん。『あ、死んだ』それだけやった」




誠は、静かに、拳を、握りしめた。



(レールガンという、あの、恐ろしい兵器は……もしかしたら、この世界だけの、ものじゃないのかもしれない)



誠は、そう、思わずには、いられなかった。藤原が、命を落とした、その世界と、この世界。全く、別の場所であるはずなのに、同じ「レールガン」という、兵器の名前が、共通して、存在している——その事実に、誠は、静かな、薄気味悪さを、感じていた。



(でも、今は……この、驚くべき、偶然について、深く、考える時じゃない)



誠は、そう、自分に、言い聞かせ、藤原の話に、また、静かに、耳を、傾け始めた。




「……せやけど、そこで、終わらへんのが、うちの人生なんや」



藤原は、少し、明るい調子に、戻りながら、続けた。



「気ぃ付いたら、卵の中やった。『なんでやねん。人間やったやろ、うち』思わず、殻の中で、ツッコんだわ」



「最初は、暇やと、思うやろ? ちゃうねん。めっちゃ、忙しい」



「天から、毎日、声が、降ってくるんや」




その言葉に、誠は、思わず、身を、乗り出した。



「もしかして……関西弁の、神様、ですか」



「せや! あんたも、知っとるんか!」



藤原の、目が、輝いた。



「あの、麻雀、好きな、神様やろ? リーチ、言うて、すぐ、振り込む」



「そう、それです! 僕のところにも、来るんです、その神様!」



誠は、思わず、興奮気味に、答えた。



「なんや、あんたのとこにも、来とんのか。あの神さん、ほんまに、暇なんやな」



「本当に……」




「ほやから、卵ん中は、意外と、退屈、せえへんかった」



藤原は、少し、懐かしそうに、続けた。



「外へ、出られへんだけで、毎日、しゃべって、笑うて、麻雀して、世界の仕組み、教えてもろて……」



「案外、ええ暮らし、やった」




その言葉には、不思議な、温かみが、あった。



「……せやのに、ある日や」



藤原の、声の調子が、少し、変わった。



「急に、周りが、ガタガタ、揺れ始めた。『地震かいな?』思たら、違う。誰かが、卵ごと、持ち上げたんや」




誠は、その瞬間、思い当たった。



(アルフレート様が、山中で、見つけて、持ち帰った……あの時か)



「ゴトン。ゴロゴロゴロ……運ばれとる。『ちょっ、誰や!』『これ、うち、入ってるんやけど!』叫んでも、殻の外には、聞こえてへん」



「神さんらも、急に、静かになってもうてな。さっきまで、麻雀牌、鳴らしてた連中が、誰一人、しゃべらへん」



「その、沈黙が、いっちゃん、怖かった」




誠は、静かに、その言葉の、重みを、受け止めていた。



「しばらくして、一人だけ、声が、したんや。『……ああ、迎えが来たか』『迎え? 何の?』聞いても、返事は、ない」



「ただ、最後に、ぽつりと、一言だけ」



「『ここから先は、お前さんの、物語や』」




その言葉に、部屋の中が、静まり返った。



「……その瞬間、うちは、思た」



藤原は、少し、悪戯っぽく、笑った。



「『あかん』『また、碌でもない世界へ、連れて行かれる』この勘だけは、何回死んでも、外れへんのや」




長い、沈黙が、部屋を、包んだ。



「藤原さん……」



誠は、ようやく、口を、開いた。



「辛い経験を、話してくれて、ありがとう」



「なんや、湿っぽい、空気にすんなや」



藤原は、少し、照れくさそうに、そう、言った。



「まあ、こういう、経歴も、あるっちゅうことや。せやけど、今は、こうして、田中くんにも、会えたし……悪くない、思てるで」




アルフレートも、深く、その言葉を、噛み締めるように、頷いていた。



「藤原殿、その、壮絶な過去を、経て、なお、その、明るさを、失わないとは……見事なものだ」



「せやろ? うちの、取り柄は、これくらいや」



藤原は、そう言って、小さな翼を、誇らしげに、広げた。




その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「藤原さんの、壮絶な過去を、聞いた。一度、別の世界で死んで、そして、この世界で、龍として、生まれ変わったらしい。しかも、その死の原因が、レールガンだったという。この世界にも、同じ名前の兵器があることに、少し、薄気味悪さを、感じた。じいちゃん、世界と世界の、繋がりには、僕の知らない、何かが、あるのかもしれない」



窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。



まだこの時の誠は知らない。藤原の過去に登場した「レールガン」と、この世界で一色が開発した「レールガン」が、果たして、何か関係のあるものなのか、それとも、単なる偶然の一致に過ぎないのかを。


そして、あの、関西弁の神様との、不思議な縁もまた、この世界の、思いがけない真実に、繋がっていることも——今はまだ、知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。