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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「アルフレート、怠けすぎの回(again)」

最近、アルフレートは、暇だった。



魔王軍とも、和解した。





盆踊りも、終わった。





戦う理由が、めっきり、減っていた。



光景


アルフレートは、その日も、縁側で、寝転がっていた。





「……よし」



アルフレート


久しぶりに、自分の、ステータスを、確認しようと、思い立った。



アルフレート


「ステータス、オープン」





そう、唱えた。



結果


けれど。





何も、出てこなかった。



アルフレート


「……あれ」




アルフレートは、しばらく、首を、傾げた。





そして、もう一度、力を、込めた。



アルフレート


「ステータス、オープン!」



事故


ブチッ、ブチッ。





シャツの、腹の、ボタンが、二つ、吹き飛んだ。



アルフレート


アルフレートは、しばらく、動かなかった。





そして、自分の、腹を、見た。



アルフレート


「……なんだ、今の」




近くにいた、誠が、それを、見て、少し、驚いた。





「アルフレートさん、大丈夫ですか」




アルフレート。



「気合いを、入れたら、ボタンが」




誠は、しばらく、考えた。





「最近、運動、してます?」




アルフレート。



「……していない」



アルフレート


「戦う相手が、いなくてな」



アルフレートは、続けた。




「毎日、寝て、食べて」



「はい」




アルフレート。



「気づけば、こうなっていた」




誠は、少し、笑った。




「ステータス、開いてみます?」




アルフレート。



「それが、開かんのだ」



再挑戦


アルフレートは、もう一度、気合いを、入れた。



アルフレート


「ステータス、オープン!」



結果


シュルル。





今度は、ズボンの、社会の窓が、開いた。




誠は、しばらく、動きを、止めた。





「……アルフレートさん」




アルフレート。



「なんだ」




誠。



「窓、開いてます」



アルフレート


アルフレートは、しばらく、下を、見た。





そして、慌てて、閉じた。





「……いつからだ」




誠は、少し、考えた。





「たぶん、今の、呪文からです」



アルフレート


アルフレートは、しばらく、考えた。





「まさか、ステータスウィンドウの、魔法が」



「はい」




アルフレート。



「劣化して、社会の窓の、魔法に、なったのか」




誠は、しばらく、その、可能性を、考えた。





「怠けすぎて、力が、弱くなったんじゃ、ないですか」




アルフレート。



「……ありえる」



田中


田中が、通りかかって、その、様子を、見た。





「やおや」



「はい」




田中。



「このゆうしゃ、なにしとるんや」




誠は、少し、説明に、困った。





「怠けすぎて、魔法が、劣化してるみたいです」



田中


田中は、しばらく、その、光景を、見ていた。





そして、少し、呆れた。





「……ゆうしゃも、たいへんやな」



再々挑戦


アルフレートは、諦めなかった。





三度目の、挑戦。



アルフレート


「ステータス、オープン!!」



結果


ブチッ。ブチッ。シュルル。





ボタンが、さらに、一つ、吹き飛び。





窓も、また、開いた。




誠は、しばらく、それを、見ていた。





そして、静かに、言った。





「両方、来ましたね」




アルフレート。



「……」



アルフレート


アルフレートは、しばらく、その場に、崩れ落ちた。





「余の、ステータスは、どこに」




誠は、少し、考えた。





「今日の、ステータス、確認しなくても」



「はい」




誠。



「なんとなく、分かる、気がします」




アルフレート。



「なんだ」




誠は、静かに、言った。





「筋力:低下」





「体力:低下」





「ボタン:残り、いくつか」





「社会性:窓、全開」




誠は、少し、続けて、言った。





「あと」



「なんだ」




誠。



「その、三段腹」




「見事に、熟成されていますね」



誠は、静かに、言った。



アルフレート


アルフレートは、しばらく、動かなかった。





それから、怒りに、震えた声で、言った。





「田中!」



「はい」




アルフレート。



「この、体に、いくら、金が、かかっていると、思っているのだ!」




誠は、しばらく、動きを、止めた。





「……そうなんですか」




アルフレート。



「そうだ!」



アルフレート


「若い頃、鍛え上げた、この体は」



アルフレートは、続けた。




「幾多の、戦いを、乗り越え」



「はい」




アルフレート。



「治療にも、鍛錬にも」



アルフレート


「莫大な、金と、時間が、かかっているのだ!」



アルフレートは、続けた。




「それを、その、腹一つで」



「はい」




アルフレート。



「片付けられては、困る!」




誠は、しばらく、その、抗議を、聞いていた。





そして、静かに、言った。





「でも、今は、ただの、腹です」



アルフレート


アルフレートは、しばらく、動かなかった。





それから、その場に、崩れ落ちた。





「……ぐぬぬ」



ミラベル


そこへ、聖女ルナ(通りすがり)が、来た。





「アルフレート様、また、何か」




アルフレート。



「見ないでくれ」




ルナ。



「見ちゃいました」



アルフレート


アルフレートは、しばらく、その場に、崩れ落ちた。





「余は、もう、駄目だ」




誠は、少し、笑った。




「運動、しましょう」




アルフレート。



「何をすれば」




「まず、畑を、手伝ってください」



誠は、続けた。




「体を、動かせば、ステータスも、戻ります」



アルフレート


アルフレートは、しばらく、考えた。





そして、静かに、立ち上がった。





「分かった」



修行


その日から、アルフレートは、畑仕事を、始めた。



一週間後。



アルフレート


アルフレートは、再び、挑戦した。



アルフレート


「ステータス、オープン」



結果


シュルル。





窓が、開いた。



アルフレート


アルフレートは、しばらく、それを、見下ろしていた。


こんな汚い・おぞましい自分(自身)のステータスが何だってんだと思う、アルフレート。





そして、静かに、閉じようとした。



アルフレート


「ステータス、クローズ」



結果


何も、起きなかった。



アルフレート


アルフレートは、しばらく、動かなかった。



そもそも、自分(自身)のステータスを人に見せびらかすものではない。


汚い、おぞましい。




「……閉じない」




誠が、それを、見て、駆け寄った。


「せめて下着を履いてください」





「アルフレートさん、大丈夫ですか」




アルフレート。



「閉じないのだ」



アルフレート


「畑仕事、一週間、続けたのに」



アルフレートは、続けた。




「筋力も、戻った」



「はい」




アルフレート。



「なのに、この、魔法だけは」



アルフレート


「戻らん」



アルフレートは、静かに、言った。





そして、手で、直接、ファスナーを、閉じた。




誠は、しばらく、その様子を、見ていた。





「じゃあ、ステータス確認、できないままなんですか」




アルフレート。



「そうだ」



アルフレート


「筋力も、体力も、もう、数値では、分からん」



アルフレートは、続けた。




「感覚で、判断するしか、ない」



田中


田中が、通りかかって、それを、聞いていた。





「やおや」



「はい」




田中。



「けっきょく、なおらんかったんか」




誠。



「みたいです」





日課


その日から、アルフレートには、一つ、習慣が、残った。



毎朝


毎朝、アルフレートは。





「ステータス、オープン」





そう、唱える。



結果


すると、決まって。





社会の窓だけが、静かに、開く。



アルフレート


アルフレートは、それを、しばらく、見下ろして。





自分「自身」の、様子を、確認する。



アルフレート


「……今日は、まあまあ、だな」





そして、手で、直接、閉じ、日課を、終える。




それを、初めて、見た日、誠は、しばらく、困惑していた。





「アルフレートさん、それ、毎朝、やってるんですか」




アルフレート。



「うむ」



アルフレート


「もう、これしか」



アルフレートは、静かに、言った。





「余に、残された、魔法は、ないのでな」




誠は、しばらく、その言葉を、聞いていた。





そして、少し、遠い目を、した。





「そうですか」





その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


「じいちゃん、アルフレートさんの、続きです。三段腹、見事に熟成されてますね、って言ったら、この体にいくら金がかかってると思ってるんだ、って怒られました。畑仕事で、一週間、頑張って、筋力は戻ったんですけど、魔法だけは、戻りませんでした。ステータスオープンは、社会の窓を開けるだけの魔法になってしまって、しかも、閉じることもできません。毎朝、手で直接、閉じてるそうです。それが、勇者様に、残された、唯一の魔法です。じいちゃん、これで、いいんでしょうか」

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