第59話「思いがけない収穫」
鉱物探索は、その後も、続けられた。
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「田中くん、これ、見てくれ」
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宮田が、坑道の奥から、粘性のある、黒い液体が、染み出しているのを、見つけた。
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「これは……」
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誠は、その、独特の匂いに、覚えがあった。
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「もしかして、原油、じゃないか?」
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「多分、そうだと思う」
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宮田が、慎重に、その液体を、採取しながら、頷いた。
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「これがあれば……」
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誠の脳裏に、これまでの知識が、次々と、浮かんできた。
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「精製すれば、ガソリンの材料に、なるかもしれない」
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「そうだな。もっとも、精製の設備を、作るのは、簡単じゃないと思うけど」
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宮田が、少し、冷静に、そう、付け加えた。
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「ひとまず、サンプルだけ、持ち帰ろう」
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誠は、小さな瓶に、慎重に、その原油を、詰めていった。
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一方、その頃——
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アルフレートは、単独で、少し離れた岩場を、探索していた。
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「ほう……これは」
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彼は、岩の間に、埋もれていた、大きな、卵のような形をした、化石を、見つけていた。
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(何やら、面白い形をしているな)
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アルフレートは、それを、慎重に、掘り出すと、誰にも、告げることなく、そっと、自分のマジックバッグに、しまい込んだ。
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数日後、探索の終盤——
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「田中殿、こちらへ」
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竜崎が、興奮した様子で、誠を、呼びに来た。
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「どうしたんだ」
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「山の奥に、温泉が、湧いているのを、見つけたんだ!」
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「温泉!?」
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誠は、思わず、目を、輝かせた。
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案内された先には、確かに、湯気を、立ち上らせる、湯だまりが、あった。
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「これは……」
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しかし、近づいてみると——
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「うわっ、熱い……!」
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誠は、思わず、手を、引っ込めた。
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その湯は、想像していた以上に、高温だった。
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「これは……このままでは、入れないな」
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誠は、少し、考えを、巡らせた。
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「近くの、冷たい水を、引き込めば……」
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誠は、これまでの、農作業や、水路の知識を、活かし、簡易的な、水路を、作ることにした。
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「よし、これで……」
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冷たい沢の水を、少しずつ、湯だまりに、引き込んでいくと、次第に、湯温が、和らいでいった。
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「田中さん、これなら……」
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竜崎が、恐る恐る、足を、湯に、浸けてみた。
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「おお……! ちょうど、良い温度だ!」
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誠も、足だけ、湯に、浸けてみた。
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「これは……気持ちいいですね」
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疲れた足に、じんわりと、染み渡るような、温かさが、広がった。
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「これは、大きな、収穫かもしれない」
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誠は、しみじみと、そう、呟いた。
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「金や、銀のような、分かりやすい、資源じゃないけど……」
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「温泉地として、開発すれば、村の、新しい収入源に、なるかもしれない」
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竜崎も、深く、頷いた。
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「田中の、前の、温泉改良の話、聞いたことあるぞ。あれの、応用が、できそうだな」
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「ああ。もし、うまく、開発できれば……」
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誠の頭の中には、既に、いくつもの、可能性が、広がり始めていた。
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こうして、探索チームは、様々な、思いがけない発見——ウラン、隕石の破片(誠は知っていた)、原油のサンプル、そして、温泉——を、抱えて、村への、帰路に、着くことになった。
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「アルフレート様、その、大きな荷物、何ですか」
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道中、誠は、ふと、アルフレートの、マジックバッグから、はみ出している、大きな、卵形の物体に、気づいた。
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「ああ、これか」
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アルフレートは、少し、得意げに、答えた。
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「山中で、見つけた、化石だ。持ち帰って、飾ろうと思ってな」
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「化石、ですか……」
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誠は、その、卵形の物体を、じっと、見つめた。
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(化石、にしては……なんだか、妙な、質感な気がするけど)
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「アルフレート様、それ、本当に、化石なんですか?」
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「そうに、決まっているだろう。あれだけ、古そうな、岩の中に、埋まっていたのだからな」
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誠は、少し、腑に落ちない気持ちを、抱きながらも、それ以上、深く、追及することは、しなかった。
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(まあ、アルフレート様が、そう言うなら……)
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数日かけて、一行は、ようやく、村へと、たどり着いた。
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「田中さん、お帰りなさい!」
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エリナが、村の入り口で、皆を、出迎えた。
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「ただいま、エリナさん」
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「探索は、どうでしたか」
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「色々な、発見があったよ」
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誠は、疲れた様子ながらも、少し、達成感を、滲ませながら、そう、答えた。
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「金や、銀は、見つからなかったけど……温泉が、見つかったんだ」
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「温泉、ですか!」
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エリナの目が、輝いた。
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「田中さんの、温泉改良の腕、また、活かせそうですね」
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「うん。これから、じっくり、開発の方法を、考えていこうと思う」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「鉱山探索から、村に戻ってきた。金や、銀は、見つからなかったけど、原油や、そして、温泉という、思いがけない収穫があった。アルフレート様は、なぜか、大きな卵形の化石を、持ち帰ってきた。あれ、本当に、化石なんだろうか。じいちゃん、この旅は、想像とは、随分違う結果になったけど、これはこれで、悪くないと思う」
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窓の外、二つの月が、静かに、村を、照らしていた。
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まだこの時の誠は知らない。この温泉の発見が、この後、村の経済を、大きく、支えることになる、重要な資源になっていくことを。
そして、アルフレートが持ち帰った、あの「化石」が——本当は、一体、何であったのかを——今はまだ、知る由もなかった。




