第58話「鉱山にて」
数日後、鉱山探索の一行は、村を出発した。
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「田中、これで、メンバーは、揃ったな」
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アルフレートが、集まった顔ぶれを、見渡しながら、そう言った。
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誠自身も、正直、驚くほどの大所帯になっていた。竜崎率いる守り竜団の一部、黒崎、そして、鈴森が寄越してくれた、虫人族の屈強な鉱夫たち。さらに、噂を聞きつけた、あの理科部だったという同級生——名は、確か、宮田だったか——も、駆けつけてくれていた。
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「田中くん、久しぶり。鉱物の話なら、任せてくれ」
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眼鏡をかけた、実直そうな青年——宮田は、そう言って、誠に、握手を求めてきた。
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「本当に、来てくれて、ありがとう」
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こうして、資源探索チームは、目的地である、王国の北方、これまで、あまり手がつけられていなかった、山岳地帯へと、向かうことになった。
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道中の野営でも、相変わらずの光景が、繰り広げられていた。
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「ふぅ……このリクライニングシート、実に、快適だな」
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アルフレートは、今日も、巨大なテントの中、ダブルベッドに、優雅に、腰を、下ろしていた。
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「アルフレート様、その、マジックバッグの中身……」
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「うむ、実に、便利な道具ばかりでな」
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誠は、硬い地面に、薄い布を敷いただけの、自分の寝床を見て、深く、ため息をついた。
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「羨ましい……」
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数日かけて、一行は、目的の山岳地帯に、たどり着いた。
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「ここが……」
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見上げるほどの、険しい山々。宮田が、持参した、簡易的な計測器具——彼が、独自に、この世界の素材で、作り上げたものだという——を、取り出した。
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「まず、地質を、確認しよう」
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宮田は、慣れた手つきで、岩肌を、調べ始めた。
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「田中くん、この辺りの、地層の構成、見てくれ。かなり、古い年代の、岩石が、露出している」
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「これは……何か、見つかりそうか?」
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「掘ってみないと、なんとも言えないが……可能性は、あると思う」
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こうして、探索チームは、数日かけて、山中を、掘り進めていった。
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「金は、ないか」
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「銀も、見当たらないな」
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竜崎や、虫人族の鉱夫たちが、次々と、掘り出した岩石を、確認していったが、期待していたような、貴金属は、なかなか、見つからなかった。
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そんな、ある日のことだった。
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「田中くん、これ……ちょっと、見てくれ」
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宮田が、深く掘られた坑道の奥から、妙に、重く、黒みがかった、鉱石を、持ち出してきた。
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「これは……?」
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宮田は、その鉱石を、慎重に、計測器で、調べ始めた。
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「田中くん、これ……多分、ウランだと思う」
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「ウラン……!?」
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誠は、思わず、声を、上げた。
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「これ、すごい発見なんじゃないか!」
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「いや、待て、田中くん」
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宮田が、少し、深刻な顔で、続けた。
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「ウランは、確かに、貴重な資源だけど……この世界で、精製したり、活用したりする技術が、あるかどうか、分からない」
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「それに」
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宮田は、慎重に、鉱石を、布で包みながら、続けた。
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「これ、扱いを、間違えると、危険な、放射線を、出す物質なんだ。専門的な、防護設備がないと、迂闊に、持ち運ぶことも、できない」
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誠は、その言葉に、思わず、肩を、落とした。
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「せっかく、見つけたのに……」
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「田中くん、他にも、色々、出てきてるぞ」
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竜崎が、次々と、掘り出された、様々な鉱石を、並べて見せた。
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「これは……?」
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「よく分からない、変わった石が、たくさん、出てきてる」
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宮田は、一つ一つ、丁寧に、確認していった。
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「これは……多分、隕石の破片、じゃないかな」
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「隕石……!?」
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「星の物質、っていうやつだな。学術的には、すごく、価値があると、思うけど……」
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宮田は、少し、困った顔で、続けた。
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「これも、正直、今すぐ、経済的な、価値に、繋げるのは、難しいと思う」
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こうして、探索チームは、次々と、珍しい鉱物を、発見しては、しかし、その、どれもが、すぐには、村の経済的な、助けには、ならないという、なんとも、歯痒い結果に、直面していた。
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「田中殿、これは、想定していたのと、少し、違う結果に、なったな」
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アルフレートが、優雅に、お茶を、飲みながら、そう、労うように、言った。
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「はい……。金や、銀のような、分かりやすい、資源は、見つかりませんでした」
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誠は、少し、落胆しながらも、こう、続けた。
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「でも、これらの、珍しい鉱物、うまく、活用する方法が、あるかもしれません。今は、まだ、思いつきませんが」
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「持って、帰るのか」
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「ウランに関しては、宮田が、危険だと、言っているので……。ひとまず、しっかりと、封をして、専門家に、相談できるまで、保管しておこうと思います」
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「隕石の破片の方は、どうする」
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「これは、持ち帰れると思います。すぐには、使い道が、思いつきませんが……」
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誠は、その、黒く、重い、隕石の欠片を、じっと、見つめた。
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「後で、じっくり、考えることにします」
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「田中くん」
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宮田が、少し、申し訳なさそうに、声をかけてきた。
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「役に立てなくて、悪いな」
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「いや、そんなことない」
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誠は、首を、振った。
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「宮田がいなかったら、これが、何なのかすら、分からなかった。それだけでも、大きな進歩だ」
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宮田は、少し、照れくさそうに、笑った。
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その夜、誠は、野営の焚き火の傍らで、祖父のノートに、こう書き加えた。
「鉱山探索、金や銀は、見つからなかった。代わりに、ウランや、隕石の破片が、出てきた。すごい発見のはずなのに、すぐには、村の役には立たない。持って帰ることも、簡単じゃない。じいちゃん、世の中、都合よくは、いかないものなんだな。でも、宮田のおかげで、これが何かは、分かった。それだけでも、収穫だと思う」
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窓の外——ではなく、野営の空に、二つの月が、静かに、輝いていた。
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まだこの時の誠は知らない。この、一見、役に立たなそうな、ウランと、隕石の破片が、この後、思いがけない形で——この世界の未来を、大きく、左右する、重要な鍵になっていくことを。
そして、この山岳地帯での発見が、まだ、始まりに、過ぎなかったことも——今はまだ、知る由もなかった。




