第57話「鉱山探索の提案」
祭りから、一ヶ月ほどが過ぎた。
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村の経済状況は、依然として、厳しいままだった。
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「田中さん、村長から、緊急の招集が」
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トビアスが、慌てた様子で、伝えてきた。
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村長の家には、既に、村の主だった者たちが、集まっていた。アルフレートの姿も、そこには、あった。
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「皆、集まってくれて、感謝する」
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村長が、重い表情で、切り出した。
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「知っての通り、我が国には、もう、正式な国王が、いらっしゃらない」
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戦後の混乱の中、国王は、既に、退位を、余儀なくされていた。実質的な統治は、帝国の総督が、握っている状態だったが、それでも、この地の民を、まとめる、象徴的な存在が、必要とされていた。
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「アルフレート様に、暫定的に、その役目を、担っていただくことになった」
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「私で、良いのかは、分からんが」
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アルフレートが、静かに、そう、付け加えた。
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「勇者としての立場上、帝国からも、一定の、敬意を、払われている。それを、利用しない、手はないだろう」
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「それで、本題だが」
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村長が、続けた。
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「この、経済的な、困窮を、どうにか、打開する方法を、考えなければならない」
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誠は、少し、考えてから、口を開いた。
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「あの、一つ、提案が、あります」
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「なんだ、田中」
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「この国には、まだ、開発されていない、鉱山や、資源が、眠っているかもしれません」
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誠の脳裏には、これまでの、様々な知識——祖父から学んだこと、そして、この世界で得た経験——が、巡っていた。
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「僕たちの知識……いえ、"僕たちの世界"の知識を、うまく活用すれば、これまで見過ごされていた、資源を、見つけられるかもしれません」
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アルフレートが、興味深げに、身を乗り出した。
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「田中の言う、"僕たちの世界"の知識、というと」
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「地質の見分け方や、鉱物の性質など……向こうの世界では、当たり前だった知識が、こちらでは、まだ、あまり、広まっていない気がします」
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「面白い」
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アルフレートが、力強く、頷いた。
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「私も、冒険には、慣れている。案内が必要なら、いくらでも、協力しよう」
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「ただ、僕一人の知識では、限界があります」
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誠は、正直に、そう、続けた。
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「もし、可能であれば、他の、同級生たちにも、力を、貸してもらいたいと思っています」
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「具体的には?」
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「地質や、鉱物の知識に、詳しい人がいれば……。あるいは、これまで、僕が知らなかった、専門知識を持つ人が」
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こうして、誠は、これまでの、繋がりを頼りに、再び、手紙を、書き送ることにした。
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「黒崎、竜崎、鈴森、皆瀬、グランデルさんへ。もし、地質や、鉱物、あるいは、資源開発に、詳しい、同級生に、心当たりがあれば、教えてほしい」
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数日後、返事が、次々と、届いた。
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「田中、そういえば、理科部に、鉱物マニアの、男子生徒が、いたような……」
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黒崎からの、返事だった。
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「田中くん、地学部に、いた子、確か、石集めが、趣味だったような気がする」
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皆瀬からも、心当たりが、寄せられた。
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「よし、その線を、辿ってみよう」
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誠は、こうした、断片的な情報を、頼りに、旧友を、探す旅の、新たな段階に、入ることになった。
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そんな中、誠には、一つ、気がかりなことが、あった。
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「アルフレート様」
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「なんだ、田中」
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「一色さんから、あれ以来、何も、連絡が、ないんです」
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誠は、少し、心配そうに、そう、告げた。
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「グランデルさんとは、まだ、交流が、続いているようなんですが……僕には、何も」
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アルフレートは、少し、考え込むような、表情を、見せた。
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「田中、一つ、思い当たることが、ある」
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「なんでしょうか」
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「帝国側からも、実は、正式な、通達が、何も、来ていないのだ」
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「通達……というと」
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「通常であれば、属領となった、この地に対して、より、細かな、統治方針や、追加の要求が、届いてもおかしくない。しかし、あの、重税の一件以来、帝国からの、動きが、妙に、静かなのだ」
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誠は、その言葉に、少し、違和感を、覚えた。
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「それって……」
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「もしかすると」
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アルフレートが、静かに、続けた。
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「帝国の内部で、何か、我々には、知り得ない、動きが、あるのかもしれん」
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「密約……とか、でしょうか」
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「その可能性も、否定はできん」
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誠は、一色の、あの、フードの下の、複雑な表情を、思い出した。
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(一色さんは、今、どんな状況に、あるんだろう)
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「田中、あまり、思い詰めるな」
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アルフレートが、そう、声をかけた。
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「今は、我々に、できることを、進めるしかない」
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「はい……そうですね」
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誠は、気持ちを、切り替えるように、頷いた。
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「まずは、鉱山探索の、準備を、進めましょう」
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「うむ。私も、全力で、協力する」
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「経済復興のため、鉱山探索を、提案した。アルフレート様も、乗り気で、協力してくれることになった。ただ、一色さんからの連絡が、ずっと、途絶えている。帝国側からの動きも、妙に、静かだという。何か、僕たちの知らないところで、動きがあるのかもしれない。じいちゃん、少し、不安だけど、今は、できることを、進めるしかないな」
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窓の外、二つの月が、静かに、そして、どこか、意味深に、輝いていた。
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まだこの時の誠は知らない。帝国内部で、静かに、しかし、確実に、進行している、ある、大きな動きの存在を。
そして、この鉱山探索の旅が、この後、思いがけない、新たな同級生との再会と、そして、この世界の運命を、大きく、動かす発見に、繋がっていくことになることも——今はまだ、知る由もなかった。




