第56話「まさかの交流」
祭りの熱狂が、ようやく落ち着いてから、十日ほどが過ぎた。
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「田中さん、聞きました?」
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エリナが、少し、驚いた様子で、店に、駆け込んできた。
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「何かあったんですか」
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「グランデルさんから、手紙が、届いてます」
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誠は、少し、身構えながら、その手紙を、受け取った。
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「田中! 聞いてくれや! ワシ、あれから、あの、フードの嬢ちゃんと、ちょくちょく、連絡取り合っとんねん!」
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「え……」
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誠は、思わず、二度見した。
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「祭りの後、なんや、あの子、色々、思うところ、あったみたいでな。ワシに、手紙、寄越してきたんや。『あの歌う会、楽しかったです』って」
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「それから、ちょくちょく、文通、するようになってな。この前なんか、向こうの、宮殿に、招待されて、行ってきたわ!」
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「宮殿に……行った……!?」
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誠は、思わず、声を、上げてしまった。
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「田中さん、どうしたんですか」
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「グランデルさんが、一色さんの、宮殿に、招かれたらしくて……」
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エリナも、驚いた様子で、目を、丸くした。
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「それは……大丈夫、なんでしょうか」
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誠は、続きを、慌てて、読み進めた。
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「いやぁ、皇帝の、宮殿いうんは、さすがに、豪華やったで! あの嬢ちゃん、普段は、随分と、気を張って、生きとるみたいでな。ワシの前では、ちょっとだけ、素の顔、見せてくれたわ」
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「なんや、色々、重い立場、背負っとるみたいでな。話、聞いてやったら、随分と、気ぃ、楽になったて、言うてくれたわ」
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「あと、な。あの、天界サポートセンターの、神さんの話、あの子にもしたら、『実は、私にも来ます』言うて、盛り上がったで! 田中も、知っとる話やろ?」
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誠は、その一文に、思わず、笑ってしまった。
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(あの神様、本当に、いろんな人のところに、行ってるんだな……)
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「あの、田中さん、これって……」
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エリナが、少し、戸惑った様子で、尋ねてきた。
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「グランデルさんが、一色さんの、良き相談相手に、なってくれてるみたいだ」
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誠は、その事実に、少し、驚きながらも、同時に、どこか、安堵する気持ちも、あった。
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(一色さん、あの重い立場を、一人で、抱え込んでいたはずだから)
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(グランデルさんみたいな、豪快で、裏表のない人が、そばにいてくれるなら……)
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誠は、そう、思わずには、いられなかった。
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数日後、誠は、この件について、竜崎にも、話してみた。
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「グランデルさんと、一色が……?」
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竜崎も、驚いた様子で、聞き返した。
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「ああ。手紙のやり取りから、宮殿への招待まで、するようになったらしい」
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「それは……意外な、組み合わせだな」
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「でも、なんだか、いい話だと思うんだ」
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誠は、静かに、そう、続けた。
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「一色さんは、あの若さで、大きな責任を、背負っている。グランデルさんは、身分の差なんて、気にしない人だから……」
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「田中の、繋いだ縁が、また、新しい繋がりを、生んだんだな」
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竜崎が、しみじみと、そう、言った。
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「田中よ」
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その日の夕方、黒崎からも、噂を、聞きつけたのか、連絡が、あった。
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「妖精王と、皇帝の、交流……。フッ、実に、面白い、運命の、絡み合いだな」
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「黒崎、お前まで、その話、知ってるのか」
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「我が、闇の、情報網を、舐めるでない」
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「単に、噂が、広まってるだけだろ、それ」
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「田中殿」
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その頃、王都に、戻っていたアルフレートからも、手紙が、届いた。
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「妖精王と、帝国の実質的な最高権力者が、個人的な交流を、深めているという話、耳にした。これは、田中の、これまでの繋がりが、生んだ、思いがけない、副産物なのだろう」
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「もしかすると、この交流が、この先の、両国の関係にも、何らかの、良い影響を、もたらすかもしれん」
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誠は、その手紙を、読みながら、静かに、頷いた。
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(そんなことまで、考えていなかったけど……)
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(もし、そうなったら、それは、素晴らしいことだ)
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その夜、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。
「グランデルさんと、一色さんが、あの祭りをきっかけに、交流を始めたらしい。まさか、妖精王と、皇帝が、こんな形で、繋がるとは、思ってもみなかった。でも、一色さんの重い立場を思うと、グランデルさんのような、裏表のない人が、そばにいてくれるのは、きっと、いいことなんだと思う。じいちゃん、人と人との、縁って、本当に、どこで、繋がるか、分からないものなんだな」
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窓の外、二つの月が、静かに、輝いていた。
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まだこの時の誠は知らない。この、思いがけない、二人の交流が、この後の、国と国との関係に、どれほど大きな影響を、与えることになるのかを。
そして、この、小さな、しかし、確かな繋がりが、いつか、誠自身も、想像しなかったような、大きな変化を、この世界に、もたらすことになることも——今はまだ、知る由もなかった。




