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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
戦争

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第55話「終わらないカラオケ大会」

翌朝、村の広場には、既に、多くの人々が、集まっていた。



「それでは、"歌う会"の、優勝者を、発表いたします!」



村長の、声に、皆が、固唾を、飲んで、見守った。




「優勝は……フードの、少女の方!」




割れんばかりの、拍手が、湧き起こった。




「あの、歌声、本当に、綺麗だったものな」



「異論なしだ!」




一色——フードを、深く被ったまま——は、少し、戸惑ったように、その場に、立ち尽くしていた。




「あの……こんな、賞まで、いただいて……」




「一色さんの、歌、本当に、素晴らしかったです」




誠が、そう、声をかけると、一色は、フードの下で、小さく、微笑んだのが、分かった。





しかし——




祭りは、それで、終わらなかった。




「まだ、俺を、歌わせろ!」




グランデルの、大声が、響き渡った。




「え……」




誠が、振り返ると、グランデルが、既に、また、舞台に、上がろうとしていた。




「グランデルさん、優勝発表は、もう、終わりましたが……」




「そんなん、関係あるかい! ワシ、まだまだ、歌い足りへんのや!」




「私も、まだ、歌いたいです」




皆瀬——ではなく、いつの間にか、鈴森も、姿を、現していた。




「え、鈴森さんも、来てたのか」




「昨日は、遅れて、着いてな。今日から、参加させてもらうぞ」





こうして、なぜか、「歌う会・第二部」とでも、呼ぶべき事態が、始まってしまった。




「まずは、俺からや!」




グランデルが、再び、地響きのような、熱唱を、始めた。




「オオオオオ〜! マダマダ、ウタウデ〜!」




「あの、これ、いつまで、続くんでしょうか……」




エリナが、困惑した様子で、誠に、尋ねた。



「わからない……」





グランデルの後には、鈴森が、続いた。




虫人族特有の、羽音を、震わせるような、独特の"歌"が、広場に、響いた。




「これも、また、不思議な感じだな……」




村人たちは、次第に、この、終わらない歌の応酬に、半ば、呆れながらも、どこか、楽しみ始めていた。





「妖精族の、皆も、負けてられへんで!」




グランデルの、声を、合図に——




なんと、妖精族の民たちが、次々と、村に、現れ始めた。




「え、まさか、みんなで、来たんですか」




誠が、驚いて、尋ねると、グランデルは、豪快に、笑った。




「当たり前や! 田中の、祭りやからな! 三万は、大袈裟やけど、腕自慢の、何人かは、連れてきたで!」




こうして、次々と、妖精族たちが、舞台に、上がり、それぞれの、"歌"を、披露していった。




「一人、三十分は、長すぎませんか……」




トビアスが、げっそりとした様子で、そう、漏らした。





しかも——




「ほれ、酒や! みんな、飲みぃ!」




グランデルが、自前で持参してきたらしい、大量の酒を、次々と、振る舞い始めた。




「これ、いつの間に、こんなに、持ってきたんですか」




「妖精族秘伝の、酒やで! 祭りには、酒が、つきものやろ!」





酒が入ると、さらに、宴は、盛り上がりを、見せた。




「よっしゃ、俺も、もう一回、歌うぞ!」




竜崎も、酔った勢いで、再び、舞台に、上がった。




「フッ……我も、もう一つ、闇の詩を、披露しよう」




黒崎も、負けじと、続いた。





こうして、「一日限り」だったはずの、祭りの、"歌う会"は——




なんと、三日三晩、続くことになってしまった。





「田中殿」




その様子を、少し離れた場所から、ぽかんと、眺めていたのは——アルフレートだった。




祭りの二日目に、村を、訪れていた彼は、この、収拾のつかない事態に、すっかり、呆気にとられていた。




「アルフレート様、いつの間に……」




「田中の祭りと聞いて、少し、覗きに来たのだが……これは、一体……」




「僕にも、よく、分かりません」




誠は、力なく、そう答えるしかなかった。




「妖精族の王が、あれほど、豪快に、歌い続けるとは、な」




アルフレートは、しみじみと、その光景を、見つめていた。




「これ、いつ、終わるんでしょうか」



エリナが、疲れた様子で、尋ねた。




「わかりません……皆さん、まだまだ、元気そうですし」





三日目の夜、ようやく——




「はぁ……さすがに、ワシも、喉が、限界や……」




グランデルが、ようやく、疲れた様子を、見せ始めた。




「私も……もう、歌う"波動"が、出なくなってきた」




皆瀬も、へとへとの様子だった。




「よし……ほな、今日で、お開きに、しよか」




グランデルの、その一言で、ようやく、三日間に及んだ、"歌う会・延長戦"は、幕を、閉じることになった。





「皆さん、お疲れ様でした……」




誠は、声を、枯らしながらも、なんとか、そう、労いの言葉を、かけた。




「田中、また、次の祭りも、招待してくれよな!」




グランデルが、豪快に、笑いながら、そう言った。




「次は、もう少し……短めに、お願いします」




誠は、疲れ果てた様子で、そう、答えた。





その夜、誠は、疲労困憊しながらも、祖父のノートに、こう書き加えた。


「祭りの、"歌う会"、一日限りのはずが、なぜか、三日三晩、続いてしまった。グランデルさんの、地響きのような歌、酒、そして、皆の、終わらない情熱。正直、疲れたけど……こんなにも、賑やかな祭りは、初めてだった。じいちゃん、みんなが、こんなにも、楽しんでくれて、良かったと思う」




窓の外、二つの月が、疲れ果てた村を、優しく、照らしていた。




まだこの時の誠は知らない。この、思いがけず盛大になった祭りが、この後、村の、そして、周辺の地域にも、長く、語り継がれる、伝説になっていくことを。


そして、一色との、あの、密かな時間が、これから、彼女の運命に、どのような、影響を、与えていくことになるのかも——今はまだ、知る由もなかった。

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