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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第262話「知られなかった、事情」

ジョンの、シリーズが、終了して、一ヶ月。



# 誠


誠は、まだ、時々、あの、銅像のことを、思い出していた。



# セレス


そんな、ある日。





セレスが、少し、困った顔で、来た。



# セレス


「誠さん」



「はい」




セレス。



「虚空で、ジョンさんの、記事を、見つけました」



# 誠


誠は、身を、乗り出した。




「記事」




セレス。



「はい。……古い記事です」



# 内容


セレスは、記録を、見せた。



# 記事





**「アメリカンヒーロー、視聴者、激減。スキャンダル発覚か」**



# 誠


誠は、しばらく、その見出しを、見ていた。





「スキャンダル」




セレス。



「はい」



# 詳細


セレスは、続きを、読み上げた。




「複数の、ファンとの、交際疑惑」



「はい」




セレス。



「スポンサーが、次々、撤退」



# 誠


誠は、しばらく、それを、聞いていた。





「本当ですか」




セレス。



「分かりません。……真偽は、不明です」



# セレス


「でも」



セレスは、続けた。




「視聴者数は、実際に、激減してました」



「はい」




セレス。



「一億四千万人から」




セレスは、少し、間を、置いた。




「三百人まで」



# 誠


誠は、その数字に、動きを、止めた。





「三百人」




セレス。



「はい」



# 誠


誠は、しばらく、考えていた。





そして、静かに、聞いた。





「時期は」



# セレス


セレスは、記録を、確認した。





「銅像に、なる、少し前です」



# 誠


誠は、その言葉に、しばらく、動かなかった。





「……つまり」



# 田中


田中が、隣で、聞いていた。




「やおや」



「はい」




田中。



「そのじょうほう、なにを、いうとる」



# 誠


誠は、しばらく、考えた。





「ジョンさん、銅像になった時」



「はい」




誠。



「もう、スポンサーが、ほとんど、いなかった」



# 誠


「戻ってこられなかったのは」



誠は、続けた。




「たぶん」



# 一色


一色が、来て、その話を、聞いた。



# 一色


「仮説を、立てます」




誠。



「はい」



# 一色


「MISSION COMPLETEは」



一色は、続けた。




「観測される限り、続く仕組みでした」



「はい」




一色。



「けれど、視聴者が、いなくなれば」



# 一色


「観測されなくなります」



一色は、続けた。




「戻る、力そのものが、なくなったのかもしれません」



# 誠


誠は、しばらく、その仮説を、考えていた。





そして、静かに、言った。





「見てくれる人が、いなくなったから」



「はい」




誠。



「戻れなくなった」



# 田中


田中は、しばらく、その言葉を、聞いていた。





そして、静かに、言った。





「みまもられる、いうことは」



「はい」




田中。



「たいせつな、ことなんやな」



# 誠


誠は、頷いた。




「はい」



# 真相


けれど、誠には、まだ、引っかかることが、あった。



# 誠


「セレスさん」



「はい」




誠。



「その、スキャンダルって、本当だったんですか」



# セレス


セレスは、しばらく、考えた。





「調べてみます」



# 調査


セレスは、虚空の、古い、記録を、掘り起こした。



# 一週間後


一週間後、報告に、来た。



# セレス


「誠さん」



「はい」




セレス。



「詳しく、分かりました」



# 内容


「あの、疑惑」



セレスは、続けた。




「実は、こちらの、世界の話でした」



# 誠


誠は、驚いた。




「こちらの?」




セレス。



「はい」



# セレス


「ジョンさんは、村に、来るたびに」



セレスは、続けた。




「色んな女性に、優しく、していました」



「はい」




セレス。



「困っている人には、話を、聞いて」



# 誠


誠は、しばらく、考えた。




「それだけで」




セレス。



「はい」



# セレス


「向こうの、視聴者が、こちらの、様子を」



セレスは、続けた。




「配信で、見ていて」



「はい」




セレス。



「勝手に、想像を、膨らませたようです」



# 誠


誠は、しばらく、その話を、聞いていた。





「本当は、何もなかった」




セレス。



「はい」



# セレス


「ただ、優しかっただけです」



セレスは、続けた。




「それが、悪く、伝わってしまいました」



# 誠


誠は、しばらく、動かなかった。





そして、静かに、言った。





「じゃあ、ジョンさんは」



# 誠


「何も、悪くなかったんですね」




セレス。



「はい」



# 誠


誠は、しばらく、その言葉を、噛みしめた。





そして、少し、悔しそうな、顔を、した。





「それなのに、視聴者、いなくなったんですか」



# セレス


セレスは、頷いた。




「はい」




セレス。



「誤解が、広まるのは、早いので」



# 田中


田中が、しばらく、黙っていた。





それから、言った。





「やおや」



「はい」




田中。



「それ、しっとる」



# 田中


「みちがえられて」



田中は、続けた。




「わるものに、されること」



「はい」




田中。



「じいさんの、みせも」



# 田中


「にせもんの、うわさで」



田中は、続けた。




「きゃくが、へったこと、あった」



# 誠


誠は、静かに、聞いていた。





「どうしたんですか、その時」




田中。



「なにも、せんかった」




誠。



「何も」



# 田中


「じいさんは、いうとった」



田中は、続けた。




「『みせを、あけつづけてたら』」



「はい」




田中。



「『わかるやつには、わかる』」



# 誠


誠は、しばらく、その言葉を、考えていた。





そして、静かに、言った。





「ジョンさんは、開け続けられなかったんですね」




田中。



「うん」



# 誠


「銅像に、なってる間に」



誠は、続けた。




「誤解が、広まった」



「はい」




誠。



「弁解する、暇も、なかった」



# 名誉


誠は、しばらく、考えていた。





そして、決めた。





「セレスさん」



「はい」




誠。



「本当のこと、虚空に、伝えられますか」



# セレス


セレスは、少し、驚いた。




「今更、ですか」




誠。



「はい」



# 誠


「本人が、弁解できないなら」



誠は、続けた。




「俺たちが、代わりに、言います」



# 発信


その日、セレスが、虚空に、繋いだ。



# 誠


誠は、皆の前に、立った。





「聞いてください」



# 誠


「アメリカンヒーローさんについて」



誠は、続けた。




「昔、こちらの世界の、噂で」



「はい」




誠。



「悪いことを、してた、と思われてたそうです」



# 誠


「でも」



誠は、続けた。




「それは、間違いでした」



# 内容


誠は、その日、あった、出来事を、一つずつ、語った。



# 誠


「盾が、ガチャに、間違って入った時」





「取り戻すのに、六十四万ゴールド、使いました」





「でも、その分、配信で、稼いで」





「そして、カゲさんの、紐ライダーの時」



# 誠


「黙って、コインを、渡してました」



誠は、続けた。




「撮るな、って言って」



「はい」




誠。



「見返りを、求めない人でした」



# コメント


虚空の、コメントが、流れた。





「"知らなかった"、って——!!」



「"あの時のこと、覚えてる人、いる"、って——!!」



「"確かに、そういう人だった"、って——!!」



# 誠


誠は、続けた。




「あの人は」




誠は、少し、間を、置いた。




「優しかっただけです」



# コメント


コメントが、増えていった。





「"謝りたい"、って——!!」



「"当時、批判してた、消したい"、って——!!」



「"戻ってきてほしい"、って——!!」



# 誠


誠は、その、コメントを、しばらく、見ていた。





そして、静かに、言った。





「戻ってくるかは、分かりません」



# 誠


「でも」



誠は、続けた。




「名前は、俺たちが、覚えてます」



# その夜


その夜、誠は、銅像の、様子を、確かめに、行った。



# 確認


ジョンの、銅像は、変わらず、そこに、立っていた。



# 誠


誠は、しばらく、それを、見上げていた。





「ジョンさん」



# 誠


「今日、名誉、回復しました」



誠は、静かに、言った。





「一億四千万人には、届かないけど」



「はい」




誠。



「本当のこと、伝わりました」



# 沈黙


銅像は、答えなかった。



# 誠


誠は、しばらく、待った。





そして、静かに、頭を、下げた。





「また、来ます」





その日、誠は、祖父のノートに、こう書き加えた。


*「じいちゃん、ジョンさんのことで、分かったことがあります。あの、スキャンダルは、誤解だったそうです。優しくしてただけなのに、変な噂になって、視聴者が三百人まで減ってました。銅像になったのも、その頃です。一色さんが言うには、見てくれる人がいなくなったから、戻る力もなくなったんじゃないか、って。田中さんが、じいさんの店も、昔、似たような噂で客が減ったことがあった、って教えてくれました。じいさんは、何もしなかった、店を開け続けてたら、分かるやつには分かる、って。でも、ジョンさんは、銅像になってる間に、開け続けられなかったんです。それで、今日、虚空に、本当のことを伝えました。ジョンさんは、優しかっただけです、って。コメントがたくさん来ました。謝りたい、戻ってきてほしい、って。じいちゃん、戻ってくるかは分かりません。でも、名前は、俺たちが覚えてます。今日、銅像に、また来ます、って言いました」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。



まだこの時の誠は知らない。名誉が回復されたことが、あの銅像に、何かを届けているのかどうかを。



——そしてもう一つ、まだこの時の誠は知らない。


「見てくれる人がいれば戻れる」という一色の仮説が、正しいのかどうかを。



——今は......まだ、誰も——知らない。

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